拍動と脈拍の違いとは

拍動と脈拍の違い

この記事のポイント
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拍動とは心臓の動き

心臓が血液を送り出すために周期的に収縮・拡張する動きのこと

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脈拍とは動脈の拍動

心臓の拍動により動脈に伝わる血管の収縮運動で、手首などで触れることができる

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通常は拍動と脈拍の数は一致

健康な状態では心拍数と脈拍数は同じになるが、不整脈では差が出ることがある

拍動の定義と心臓の働き

拍動とは、心臓や動脈が周期的に収縮と拡張を繰り返す動きのことを指します。心臓の拍動は、心臓の筋肉が定期的に収縮することによって起こり、これによって血液が全身に送り出されます。心臓は胸のほぼ中央にあり、収縮と拡張を繰り返して全身に血液を送り出すというポンプのような働きをしています。

参考)多種多様な不整脈 正しく知って適切に対処 心臓の拍動に異常が…


この拍動を起こしているのが電気による刺激です。心臓の筋肉は電気の刺激を感じると収縮し、刺激がなくなると拡張します。心臓を拍動させるおおもとの命令は心房から電気信号として発せられますが、信号を出す司令塔が洞結節(洞房結節)です。洞結節は上大静脈と接する右心房側にあり、心臓の正常な自動的拍動のリズムはここから始まるため、心臓の歩調取りを行うペースメーカー細胞とも呼ばれます。

参考)刺激伝導系と心拍動の自動性|循環


通常、成人の心拍数は1分間に60~100回の範囲で拍動しています。心拍数はふつう1分間に70回程度、規則正しく血液を送り出しており、運動をしたときや緊張したときには心拍数が増加します。

参考)脈を測って心房細動を早期発見|公益法人 日本心臓財団

脈拍の定義と測定部位

脈拍とは、血液が心臓から大動脈に送り出される際に生じる拍動で、その拍動が大動脈の弾性によって全身の動脈に伝わり触知されるものです。動脈の拍動は脈拍とも呼ばれ、心臓の拍動によって動脈内の血液の圧力が変動することから生じます。脈拍は手首の橈骨動脈など、末梢で測定する脈のことです。

参考)はくどう【拍動】


脈拍測定に用いられる動脈は、頸動脈、橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈、足背動脈などがあります。一般的に、脈拍は橈骨動脈で測定されることが多く、その理由は①橈骨動脈は皮膚に近い部分にあり脈拍を触知しやすい、②患者に衣服を脱いでもらったり姿勢を変えてもらう必要がない、③緊急時にも速やかに測定できるという3つの利点があるためです。

参考)脈拍測定で何が分かるの?


脈拍測定では、示指・中指・薬指の3本の指を揃え、寝かせた状態で患者の橈骨動脈に軽く当てます。3本指で測定することで、リズム不整・脈の大小・血管の弾力性もわかりやすくなります。脈拍を測定することで、①脈拍の回数、②脈拍のリズム(整脈、不整脈)、③脈拍の性状(末梢血管抵抗の大きさ、立ち上がりの速さ)、④脈拍の左右差などが確認でき、心臓を中心とした循環器系の異常を早期に発見できます。

参考)脈拍測定から何がわかるの?

拍動と脈拍の関係性

心臓が拍動すると、ポンプのように血液が送られ、動脈に収縮運動が伝わり脈をうつので、通常であれば心拍数と脈拍数は一致します。脈拍数と心拍数は原則として同数値になるため、一般的には同義語として使われています。一方、心拍数は1分間に心臓が拍動する回数のことであり、脈拍数は末梢動脈を触知して拍動を数えた結果を通常1分あたりの回数で表現するものです。

参考)脈拍と心拍数に違いはある?相違点、測り方、年齢別平均を解説


心拍と脈拍は同じリズムを刻んでいるため通常は同じ意味で用いられますが、不整脈があると心臓が拍動していても脈拍として伝わらないこともあります。不整脈が生じている場合、心臓の拍動が1対1で伝わらず、脈拍としては休んだり、大きく感じたり小さく感じたりするでしょう。たとえずれがあったとしても、心拍数と脈拍数は連動して動いており、心臓が拍動しないのに動脈に脈拍が生じることはありません。

参考)https://www.jhf.or.jp/publish/upload_images/No17.pdf


心臓が全身に血液を送り出す拍動数を心拍数といい、全身の動脈に生じる拍動数を脈拍数といいます。心拍数は心臓の収縮を心電図で得られる数として測定され、脈拍数は橈骨動脈で触診できる数として測定されます。

参考)Qhref=”https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-46″ target=”_blank”>https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-46amp;A Vol.46 心拍数と脈拍数の違い

不整脈における拍動と脈拍の差異

不整脈が発生したときには、心拍数と脈拍数が一致しないことがあります。厳密には脈拍数と心拍数は違う意味を持ち、特に不整脈の場合にはそれぞれの数値に差が現れます。正常では心拍数と脈拍数は同じですが、期外収縮、頻脈、心房細動などの不整脈が現れた場合、心拍数と脈拍数に差が出ます。

参考)心拍数と脈拍数は必ず同じなの?


臨床でもよくみられる不整脈の中で、心室性期外収縮を例にとると、心室性期外収縮のリズム不整の特徴は「脈が一つ抜けたように感じる」というものです。これは刺激伝導系から逸脱して心室から早期収縮を起こすことにより、心臓から十分に血液が送り出せていない状況を示しています。この場合、心臓の収縮は働いているので心拍数はカウントされていますが、脈拍数は拍動を触知することはできませんので、カウントされません。​
期外収縮は、正常な拍動の間に時々不規則な拍動が現れる「脈がとぶ」タイプの不整脈です。脈をとると「トン・ト・トン・トン・トン」というように脈がとんで不規則なリズムになります。さらにVT(心室頻拍)で考えてみると、心拍数が頻拍(心拍数上昇)となり意識レベルが低下する原因は、全身に流れる血液が十分に拍出されていないことになり、脈拍数が低下します。心拍数だけ見るのではなく、心電図の波形の形や脈拍動の強さを確認することで、全身に流れている血液を感じることができます。

参考)健康な人でも起きる不整脈「期外収縮」とは?危険性とつきあい方…

拍動の測定における医療上の重要性

脈拍数は心臓の活動状態を表しており、交感神経が優位になっている場合は速く、副交感神経が優位になっている場合は遅くなります。また、脈拍数は臥位<座位<立位の順で多くなります。心拍数が1分間に100回以上の場合を頻脈、50回以下の場合を徐脈といいます。脈拍のリズムを知ることによってわかるのは、脈拍が規則的か不規則かということです。​ 脈拍測定時には、同時に患者の全身状態(意識状態や呼吸、皮膚の温度など)を観察したり、動脈の硬さや蛇行、脈拍の左右差をみていきます。脈拍測定によって、心臓、血管、神経系、内分泌、代謝などの状態がわかります。拡張期の時間が短いと心臓が十分に拡張できず、十分な血液を送り出せないため、末梢まで血液が届かないことがあります。​ 不整脈は心臓の拍動に何らかの異常が生じる病気ですが、それは電気刺激の発生や伝達などの電気系統に何らかの不具合が生じることで起きています。不整脈は大きく3つに分類され、心臓の拍動のリズムが乱れる期外収縮、心臓の拍動が遅くなる徐脈性不整脈(1分間あたり心拍数が50回未満)、逆に拍動が速くなる頻脈性不整脈(1分間あたり100回以上)があります。

参考)健康トピックス | 一般の皆さまへ | 千葉県医師会 CHI…


心拍数と心臓病の関係について詳しく解説している日本心臓財団の資料(心拍数と不整脈に関する参考情報)
日本離床研究会による心拍数と脈拍数の違いに関する医療従事者向けの詳しい解説(Q&A形式で不整脈時の差異を説明)