肺腺がんの症状と初期症状、転移と検査

肺腺がんの症状

肺腺がんで注意すべき主な症状
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初期段階

ほとんど自覚症状がないことが多く、健康診断で偶然発見されるケースも多い

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進行段階

咳、痰、血痰、胸痛、息切れ、発熱などの呼吸器症状が現れる

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転移時

脳転移による頭痛、骨転移による痛み、肝臓転移による黄疸など転移先に応じた症状が出現


肺腺がんは肺がんの中で最も発生頻度が高く、肺がん全体のおよそ半数を占めています。女性やタバコを吸わない人にも多く発症することが特徴で、肺の奥のほうで発生するため、初期には症状がないことが多いんです。早期には症状が現れないことが多く、進行して初めて症状が出ることもあります。

参考)肺がんについて:[国立がん研究センター がん情報サービス 一…


肺腺がんの主な症状としては、咳や痰、血痰(痰に血が混じる)、胸の痛み、動いたときの息苦しさや動悸、発熱などがあげられます。しかし、これらは肺炎や気管支炎などの呼吸器の病気にも共通する症状で、「この症状があれば必ず肺がん」という特有の症状はありません。原因が分からない咳や痰が2週間以上続く場合や、血痰が出る場合、発熱が5日以上続く場合には、早めに医療機関を受診することが推奨されます。​

肺腺がんの初期症状と自覚症状

肺腺がんの初期症状として、特有の症状があるわけではなく、咳や痰、発熱など、風邪によく似た症状がよくみられます。肺腺がんを含む肺がん全般では、早めには症状が現れないことも多く、あっても軽微な場合が多いとされています。

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初期段階では症状がほとんどなく、中期段階になると咳、喀痰や血痰、胸痛や呼吸困難が現れ、進行後期になると体重減少、倦怠感、声のかすれ、関節痛や骨痛、胸膜や心臓への影響、顔や首のむくみなどが出現します。肺腺がんの初期症状は非常に控えめであり、自覚症状がほとんどないことが多いんですよ。

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国立がん研究センター中央病院の肺腺がんに関する情報では、肺腺がんは非喫煙者や若年者にも発症し、早期発見が増えていることが報告されています。

肺腺がんの進行による症状の変化

肺腺がんが進行すると、胸痛、咳、痰などの一般的な呼吸器疾患でもみられる症状があらわれますが、肺腺がんに特有の症状はありません。がん細胞が増殖すると、肺や気管支を圧迫して咳や痰が出るようになります。風邪であれば、2週間以内にある程度改善することが多いですが、肺がんの場合は咳や痰が続きます。

参考)肺腺がんとは


肺がんが気管支に及ぶと、気管支の内側から出血しやすくなり、痰に血が混じった血痰が出ることがあります。血痰は、肺がんの症状として多く報告されており、とくに肺の入り口付近にがんが発症した場合、気道が刺激されて咳とともに血痰があらわれます。

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肺がんが大きくなると、肺の機能に影響を及ぼし、息苦しさや動悸が起こることがあります。大きくなった肺がんが肋骨や肋間神経を刺激することで胸の痛みが出ることもあります。肺がんが気管支を塞ぐと、炎症が起こり閉塞性肺炎となることがあり、発熱が5日以上続くことがあります。​

肺腺がんの転移による症状

肺腺がんが転移しやすい臓器は脳、骨、肝臓、肺、副腎、リンパ節です。肺とは関係がないと思われる頭痛やふらつきといった症状がみられることがありますが、これは脳への転移による症状で、転移した臓器にさまざまな症状がみられることがあります。​
脳に転移すると、頭痛や吐き気のほか、脳卒中のような症状や、けいれん発作を起こすことがあります。脳転移したことで脳がむくみ、頭蓋骨の内側で圧力がかかるため頭痛や吐き気が起こり、転移した場所に応じ手足の麻痺や平衡感覚が乱れて歩行がふらついたりすることもあります。

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骨に転移した場合、転移した場所に痛みが起こることがあります。背骨などに転移した場合、脊髄を圧迫し、手足の麻痺をきたすこともあります。肝臓に転移した場合には黄疸が出ることもあり、全身のだるさや、体が黄色くなる黄疸が現れることがあります。

参考)肺がんの骨転移、副腎転移、皮膚転移、脳転移は


リンパ行性転移では、がん細胞がリンパ液の流れに乗って周囲のリンパ節へ広がります。肺内のリンパ節に転移がある場合はステージ2に、同じ側の縦隔リンパ節や肺門リンパ節に転移がある場合はステージ3Aに、反対側の縦隔リンパ節や鎖骨上リンパ節に転移がある場合はステージ3Bに分類されます。

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肺腺がんの検査方法と早期発見

肺がんの主な検査方法は、胸部レントゲン検査、喀痰細胞診、CT検査の3種類です。胸部レントゲン(X線)検査は、肺や心臓、両肺の間にある縦隔など、胸部全体の異常を調べる検査で、国から科学的根拠に基づく検査として推奨されており、健康診断や肺がん検診で用いられています。胸部レントゲン検査による肺がん検出感度は、60~80%程度です。

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喀痰細胞診は、痰のなかに剝がれ落ちたがん細胞の有無を調べる検査です。検出感度は約40%で、一般的に胸部レントゲン検査と併用しておこなわれます。特に肺門部にできるがん(主に扁平上皮がん)は喀痰細胞診で見つけやすく、早期発見にも有用であるといわれています。

参考)肺がんを早期発見するには?必要な検査や初期症状を解説


CT検査は、胸部の断層写真を撮影して、肺の状態を詳しく調べることが可能です。通常、肺がんが疑われたときにおこない、CT検査の肺がん検出感度は93.3~94.4%と非常に高く、肺がんの早期発見にも有効です。​
国立がん研究センターがん情報サービスの肺がん情報では、肺がんの症状や検査、治療法について詳しい情報が提供されています。

肺腺がんの遺伝子変異と個別化医療

肺腺がんでは、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子などの遺伝子変異が治療方針の決定に重要な役割を果たします。EGFR遺伝子変異は、欧米人よりも日本人の非小細胞肺がんの患者さんに多く、肺腺がんの約半数に認められます。EGFR遺伝子変異が見つかればEGFR阻害薬を使用し、約70~80%で奏効するため、EGFR-TKIが1次治療として推奨されます。

参考)https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/006050327j.pdf


ALK融合遺伝子とは、何らかの原因によりALK遺伝子と他の遺伝子が融合してできる特殊な遺伝子のことです。ALK融合遺伝子が発見される頻度は非小細胞肺がんの約2~3%で、非小細胞肺がん全体の約3〜5%に認められます。ALK融合遺伝子は、非小細胞肺がんのなかでも腺がんに多くみられ、たばこを吸わない人、比較的年齢の若い人に多くみられることもわかっています。

参考)主な肺がんの遺伝子変異と遺伝子変異検査について


EGFR遺伝子変異のある患者さんではALK融合遺伝子はほとんど認められませんし、逆にALK融合遺伝子のある患者さんでは、EGFR遺伝子変異はほとんど認められません。ALK融合遺伝子を有する症例は、ALK-TKIが約60~90%で奏効するため、ALK-TKIが1次治療の選択肢として推奨されます。

参考)ALK融合遺伝子とは?


500例の肺がん患者の研究では、女性(53.3%)、腺癌(74.4%)、吸烟者(58%)が多く、生物標志物検測58.2%(n=291)の中で、EGFR突变61.2%(178/291)、ALK融合基因阳性4.1%(12/291)でした。この研究から、吸煙状況、症状の有無、病理分型、疾病分期、突然変異の有無が後続治療に影響を与える主要因子であることが示されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5999928/

肺腺がんのステージと予後

肺がんのステージは、I期(ステージ1)からIV期(ステージ4)までに分かれ、ステージが進むにつれて、より進行したがんであることを示します。肺がんのステージ(病期)は、国際的なTNM分類によって決定され、T(腫瘍)、N(節)、M(転移)の3つの要素で構成されます。

参考)肺がんのステージ


ステージ1の肺腺がんは、腫瘍が比較的小さく、リンパ節への転移がない段階です。ステージ2では、肺内のリンパ節に転移があるが、遠隔転移はなく、手術が可能なことが多いです。ステージ3の肺腺がんは、がんが肺内の広い範囲や周囲のリンパ節にまで広がっている進行期で、この段階になると、自覚症状がはっきりと現れることが多くなります。

参考)肺腺癌のステージ4とは? ステージごとの症状や肺がんの種類に…


ステージ4の肺腺がんは、がんが肺以外の臓器へ遠隔転移している状態で、最も進行した段階です。血行性転移では、がん細胞が血液の流れに乗って全身のさまざまな臓器へ転移し、遠隔転移が確認された場合、病期(ステージ)はステージ4に分類されます。​
<表>肺腺がんのステージ別特徴

ステージ 特徴 症状 治療方針
ステージ1 腫瘍が小さく、リンパ節転移なし ほとんど症状がない 手術が第一選択
ステージ2 肺内リンパ節に転移あり 持続する咳、息切れ、胸の違和感 手術+術後補助療法を検討
ステージ3 縦隔リンパ節に転移あり 長引く咳、血痰、胸痛、呼吸困難 手術+化学・放射線療法
ステージ4 遠隔転移あり 全身倦怠感、体重減少、転移先の症状 化学療法、分子標的治療免疫療法

中国の研究によると、2016年から2019年にかけて、腺癌の占める割合は55.5%から74.1%に増加し、ⅠA期肺癌の占める割合は38.9%から62.3%に上昇しました。これは早期発見の向上を示しており、肺がんの発病率と病死率は高いものの、癌症予防政策と人口構成に関連する因素が癌症の発病率と診療方式に影響を与えることが示されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11103065/


肺がん患者の術後症状についての研究では、肺癌患者の術後症状発生率は79.5%で、軽度(54.3%)、中度(32.9%)の症状が主でした。肺癌患者の術後主要症状は疼痛(55.7%)と咳嗽(37.2%)で、疼痛発生率は出院時(55.7%)が出院30天(23.7%)と出院90天(12.0%)より顕著に高く、咳嗽発生率は出院30天(66.1%)と90天(66.0%)が出院時(37.2%)より顕著に高かったんです。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9244500/


肺がんの病期(ステージ)についての詳しい情報では、ステージ分類の詳細と各ステージでの治療選択について解説されています。

肺腺がんは初期症状が少ないため、定期的な健康診断や検査による早期発見が非常に重要ですよ。2週間以上続く咳や血痰、息切れなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが推奨されます。