排尿障害の種類と分類について

排尿障害の種類と分類

排尿障害の主な種類
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蓄尿障害

膀胱に尿を貯めることが困難になる障害で、頻尿や尿失禁が主症状

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排出障害

膀胱から尿を排出することが困難になる障害で、排尿困難や尿閉が主症状

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混合型

蓄尿障害と排出障害の両方が同時に存在する複合的な病態

排尿障害における蓄尿障害の種類

蓄尿障害は膀胱に尿を正常に貯留できない状態で、主に4つの症状に分類されます。昼間頻尿は日中起きている間に8回以上排尿する状態で、夜間頻尿は夜間睡眠中に1回以上排尿のために起床する状態です 。

参考)排尿障害|種類と原因、看護、看護計画など(まとめ)

尿意切迫感は突然起きる抑えきれない尿意で、トイレに慌てて駆け込む状態を指し、この症状は過活動膀胱の特徴的な症状でもあります 。蓄尿障害の原因として、膀胱排尿筋の過活動、膀胱出口の抵抗減弱、尿道閉鎖圧低下が挙げられます 。

参考)高齢者の排尿障害と対策

これらの蓄尿障害では、頻尿や尿失禁が主要な症状として現れ、患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる要因となります。特に高齢者では、女性の尿失禁患者が男性の倍以上となっており、深刻な問題となっています 。

排尿障害における尿失禁の種類と特徴

尿失禁は大きく5つの種類に分類されます。腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、重いものを持ち上げた時など腹圧がかかった際に尿が漏れる状態で、骨盤底筋群の緩みが主な原因です 。

参考)排尿障害(前立腺肥大症、過活動膀胱、神経因性膀胱、尿失禁、骨…

切迫性尿失禁は急な尿意とともに我慢できずに尿が漏れる状態で、過活動膀胱や神経因性膀胱が原因となります 。混合性尿失禁は腹圧性と切迫性の両方の特徴を併せ持つ状態です 。

参考)尿失禁(切迫性・腹圧性) – 辻野クリニック

溢流性尿失禁は排尿困難により膀胱が満杯状態になり、あふれた尿がポタポタと漏れ出る状態で、男性の前立腺肥大症に多く見られます 。機能性尿失禁は膀胱機能は正常だが、身体機能や認知機能の低下によりトイレまで間に合わない状態です 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11280674/

排尿障害における神経因性膀胱の種類

神経因性膀胱は神経系の異常を原因とした排尿障害で、障害部位により分類されます。上位型(痙性神経因性膀胱)は仙髄より中枢の神経障害で、膀胱が過敏状態となり過活動膀胱の症状を示します 。

参考)泌尿器科|神経因性膀胱|順天堂大学医学部附属順天堂医院

下位型(弛緩性神経因性膀胱)は仙髄より末梢の神経障害で、膀胱が伸びきって収縮できなくなり、尿閉や溢流性尿失禁が主症状となります 。神経因性膀胱の原因には脳血管障害パーキンソン病脊髄損傷糖尿病性神経障害などがあります 。

参考)神経因性膀胱 – 03. 泌尿器疾患 – MSDマニュアル …

神経因性膀胱では、神経障害の部位や程度により症状が大きく異なるため、詳細な神経学的評価が重要です。治療においても、上位型と下位型では全く異なるアプローチが必要となります 。

参考)https://www.kashiwazaki-ghmc.jp/wp/wp-content/uploads/2023/08/shortlecture_20230601h.pdf

排尿障害における排出障害の種類と病態

排出障害は尿の排泄が困難になる状態で、主に排尿症状と排尿後症状に分けられます。排尿症状には尿勢低下、尿線分割、尿線途絶、排尿遷延、腹圧排尿、終末滴下があります 。
排尿後症状には残尿感と排尿後尿滴下があり、十分に膀胱を空にできない状態を示します 。排出障害の原因として、膀胱排尿筋の収縮力低下、尿道括約筋の弛緩不全、下部尿路通過障害が挙げられます 。

参考)排尿障害

男性では前立腺肥大症が代表的な排出障害の原因で、65歳以上の60%にみられます 。女性では骨盤臓器脱や手術後の神経損傷が原因となることが多く、排出障害は重篤な場合尿閉に至ることもあります 。

参考)https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/15.pdf

排尿障害における低活動膀胱と過活動膀胱の違い

低活動膀胱(UAB)は膀胱収縮力が低下し、完全な排尿が困難になる病態で、排出障害の代表的な病態です。症状として尿勢低下、排尿遷延、残尿感、溢流性尿失禁などが現れます 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11986530/

一方、過活動膀胱(OAB)は膀胱が異常に収縮する病態で、蓄尿障害の代表的疾患です。尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁が主症状で、40歳以上の男女の8人に1人が症状を有しているとされます 。

参考)前立腺肥大症・前立腺肥大症・過活動膀胱などの下部尿路症状

過活動膀胱には神経因性(脳血管障害などが原因)と非神経因性(原因不明)があり、男性では前立腺肥大症が過活動膀胱の原因となることもあります 。両疾患は症状が対照的で、治療アプローチも全く異なるため、適切な鑑別診断が重要です。

参考)https://www.office-urology.jp/library/59a541842efd4b57685af777/60dbec204bfc9ed06f4db8d2.pdf