蜂窩織炎初期症状と診断
蜂窩織炎初期症状の特徴的な皮膚所見
蜂窩織炎の初期症状として最も重要な所見は、患部の皮膚に生じる発赤と腫脹です 。この発赤は境界線が不明瞭で、まだら状にぼんやりと広がっていく特徴があり、虫刺されや他の皮膚疾患との重要な鑑別点となります 。
患部は明らかに熱感を伴い、触診すると健側と比較して明確な温度差を感じることができます 。また、皮膚の緊張感も特徴的で、張ったような感覚を呈することが多く観察されます 。初期段階では軽度のムズムズ感から始まることもありますが、症状は急速に進行し、強い疼痛へと変化していきます 。
参考)https://hc.mt-pharma.co.jp/hifunokoto/solution/1982
疼痛は軽く触れただけでも強く感じられる圧痛として現れ、これは細菌による組織破壊と炎症反応によるものです 。皮膚表面の変化として、水ぶくれや膿瘍の形成を伴うこともあり、炎症の中心部では浸出液の貯留により、ブヨブヨと柔らかい変化を示すことがあります 。
参考)https://ic-clinic-ueno.com/column/cellulitis/
蜂窩織炎初期症状に伴う全身症状の評価
蜂窩織炎の初期段階では局所症状に加えて、感染に伴う全身症状が出現することが特徴的です 。発熱は38度以上の高熱を呈することが多く、悪寒戦慄を伴うことが一般的です 。
全身倦怠感や食欲不振などの非特異的な症状も早期から認められ、患者の日常生活に大きな影響を与えます 。関節痛や頭痛といった症状も併発することがあり、これらは細菌毒素による全身への影響を示しています 。
炎症がリンパ管を通じて広がった場合には、近傍のリンパ節腫脹が観察されることがあります 。また、リンパ管炎やリンパ節炎などの合併症を引き起こし、患部を中心とした広い範囲の腫脹を呈することもあります 。これらの全身症状は、局所感染が全身に波及している可能性を示唆する重要な指標となります。
蜂窩織炎初期症状の診断に必要な検査項目
蜂窩織炎の診断は主に臨床症状に基づいて行われますが、炎症の程度や重症度を評価するために血液検査が実施されます 。血液検査では白血球数の増加とCRP(C反応性蛋白)の上昇が重要な指標となります 。
白血球数は細菌感染により4,000-8,000/μLの正常値を超えて上昇し、感染の活動性を反映します 。CRPは炎症の程度を示すマーカーとして、正常値0.3mg/dL以下から著明に上昇することが一般的です 。血沈も炎症の程度を反映する指標として測定されることがあります 。
参考)https://shinjo-hifuka.com/cellulitis/
筋肉にまで炎症が波及している場合には、CK(クレアチンキナーゼ)の上昇が認められることがあります 。重症例では血液培養検査も実施され、原因菌の同定と薬剤感受性の確認が行われます 。血糖値の測定も重要で、糖尿病の有無や血糖管理状態の評価により、易感染状態の背景因子を把握することができます 。
蜂窩織炎初期症状における鑑別診断の重要性
蜂窩織炎の初期症状は他の皮膚疾患と類似することが多く、適切な鑑別診断が治療成功の鍵となります 。最も重要な鑑別疾患として丹毒があり、これは表在性の感染で境界が明瞭である点が蜂窩織炎との相違点です 。
深部静脈血栓症も下肢の腫脹と疼痛を呈するため、特に下肢蜂窩織炎では重要な鑑別疾患となります 。接触皮膚炎では痒みが主体となり発熱を伴わないことが多く、病歴の聴取により鑑別可能です 。
蜂刺症などのアレルギー反応では局所反応が主体となり、アレルギー歴の確認が診断の手がかりとなります 。帯状疱疹では神経支配に沿った特徴的な分布を示すため、皮疹の分布パターンが鑑別に有用です 。
特に重要なのは壊死性筋膜炎との鑑別で、これは蜂窩織炎よりも深部の筋膜に感染が及ぶ重篤な疾患です 。壊死性筋膜炎では水泡形成を伴うことが多く、症状の急速な進行と高熱により致死率30-40%の危険な状態となるため、迅速な診断と治療が必要です 。
参考)https://www.yy-clinic.jp/info/cellulitisnecrotizingfasciitis-20210818/
蜂窩織炎初期症状から考える予後予測因子
蜂窩織炎の初期症状の程度と分布は、その後の経過や予後を予測する重要な因子となります。症状の拡大速度が速い場合や、広範囲に及ぶ発赤が認められる場合には、より積極的な治療が必要となることが多いです 。
全身症状の出現パターンも予後に大きく影響し、高熱や悪寒戦慄を伴う症例では入院治療が必要となることが一般的です 。血液検査所見では、CRPの著明な上昇や白血球数の高度増加は重症化のリスクを示唆します 。
患者の基礎疾患も予後に大きく関わり、糖尿病、免疫不全状態、慢性リンパ浮腫などの存在は治療抵抗性や再発リスクの増大につながります 。特にリンパ浮腫合併例では、蜂窩織炎の症状が拡大しやすく、治療期間の延長が予想されます 。
参考)https://ginzarepro.jp/column/lymphedema-cellulitis/
また、発症部位も予後因子の一つであり、膝下に好発する傾向がありますが、顔面や頸部に発症した場合には、気道圧迫などの合併症のリスクが高まるため、より慎重な経過観察が必要となります 。