グロブリンの種類と血清タンパク質分類

グロブリンの種類と血清タンパク質分類

血清グロブリンの4つの主要分類

α1グロブリン

α1-アンチトリプシンやα1-マイクログロブリンなど、主に急性相反応を担う

α2グロブリン

ハプトグロビンやセルロプラスミンなど、炎症や金属運搬に関与

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βグロブリン

トランスフェリンやC3補体など、鉄運搬と免疫系に重要

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γグロブリン

免疫グロブリン(抗体)として感染防御の中心的役割

グロブリンの電気泳動による基本分類

血清グロブリンは、血清タンパク質電気泳動法により4つの主要な種類に分類される。この分類方法は、タンパク質の電気的性質と等電点の違いを利用している。

参考)グロブリン – Wikipedia

血液中のタンパク質は、アルブミンとグロブリンの2種類に大別され、グロブリンはアルブミンよりも分子量が大きく、純水には溶けないが希薄な塩水には溶ける特性を持つ。血清の電気泳動においても、等電点がアルブミンよりも高いため移動しにくい特徴がある。

4つの主要分類は以下の通りである。

  • α1グロブリン – 最も陽極側に移動する分画
  • α2グロブリン – α1グロブリンの次に移動する分画
  • βグロブリン – 中間の移動度を示す分画
  • γグロブリン – 最も移動しにくい分画で、免疫グロブリンを含む

この分類により、各グロブリン分画の増減を評価し、疾患の診断や病態の把握に活用されている。

α1グロブリンの種類と肝機能評価における意義

α1グロブリン分画には、α1-アンチトリプシン、α1-マイクログロブリン、α1-酸性糖タンパク質などが含まれる。この中でもα1-マイクログロブリンは、分子量約30,000の糖タンパク質で、主に肝細胞で産生される重要な指標である。

参考)α1マイクログロブリン 〈血清〉(α1M)|蛋白|免疫血清学…

α1-マイクログロブリンは血液、尿など体液中に広く存在し、白血球遊走能やリンパ球機能の抑制作用を持つ。血中α1-マイクログロブリンは主に低分子型と、IgAと共有・非共有結合した高分子型により構成される。

参考)α1-マイクログロブリン

臨床的には以下の特徴を示す。

  • 高値の場合:早期の腎機能低下を反映
  • 低値の場合:肝炎の重症度を反映
  • 尿中濃度:尿細管障害で上昇

α1-マイクログロブリンは急性相反応物質として、手術や悪性腫瘍などの炎症状態で増加することが知られており、臨床現場では肝機能評価と腎機能スクリーニングの両面で活用されている。

参考)KAKEN href=”https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671929/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671929/amp;mdash; 研究課題をさがす

β2マイクログロブリンによるグロブリン機能評価

β2マイクログロブリンは、分子量11,800の低分子タンパク質で、99個のアミノ酸からなり糖鎖を持たない特殊なグロブリンである。HLA抗原系A、B、CのL鎖を構成するタンパク質として、赤血球を除くほとんどの体細胞表面に発現している。

参考)β2マイクログロブリン 〈血清〉|蛋白|免疫血清学検査|WE…

この低分子グロブリンの代謝経路は以下の通りである。

  • 体細胞から1日に150-250mg程度血中に放出される
  • 糸球体でいったん濾過される
  • 近位尿細管で99%が再吸収される
  • アミノ酸やオリゴペプタイドに異化される

β2マイクログロブリンの臨床的意義は、糸球体濾過値(GFR)が低下すると血中値が上昇し、近位尿細管再吸収機能が低下すると尿中値が上昇することである。血清β2マイクログロブリン濃度は糸球体濾過値と関係があり、血清クレアチニン値よりも早期に腎機能低下を検出できる優れた指標として活用されている。

参考)β2‐ミクログロブリン

γグロブリンに含まれる免疫グロブリン5種類の特徴

γグロブリン分画の主要成分である免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類に分類される。これらはプラズマ(形質)細胞から産生され、2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)からなるY字型構造を持つ。

参考)5種類のタイプ|協和キリン

各免疫グロブリンの特徴は以下の通りである。

IgG

IgA

  • 全免疫グロブリンの15%を占める
  • 分泌型IgAとして粘膜防御に重要
  • 唾液、気管支分泌液、腸管分泌液中に含まれる

IgM

IgD

  • 全免疫グロブリンの0.2%
  • 主にBリンパ球表面に存在
  • 機能は十分に解明されていない

IgE

  • 最も少ない(0.002%)
  • アレルギー反応に関与
  • 肥満細胞や好塩基球と結合

グロブリン種類判定における特殊な疾患との関連性

グロブリンの種類と量の異常は、多くの特殊疾患の診断において重要な指標となる。特に単クローン性γグロブリン血症では、形質細胞の異常増殖により特定の免疫グロブリンが過剰産生される。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/4/106_813/_pdf

多発性骨髄腫と原発性マクログロブリン血症

多発性骨髄腫では、IgG、IgA、IgD、IgEを産生する形質細胞が癌化し、原発性マクログロブリン血症では、IgMを産生する細胞が異常増殖する。両疾患とも血清中に異常な免疫グロブリン(Mタンパク)が検出される特徴がある。

参考)多発性骨髄腫 (multiple myeloma)/原発性マ…

Fanconi症候群との関連

近位尿細管機能障害により、体に必要な物質とともに低分子タンパクが大量に尿中に漏れ出る。特にβ2マイクログロブリンが異常高値となり、腎機能障害の進行を示す重要な指標となる。

参考)ロウ症候群(指定難病348) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/28624″ target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/28624amp;#8211; 難病情報センタ…

IgG4関連疾患

IgGサブクラスのうちIgG4が異常に増加する疾患群で、各臓器に炎症と線維化を引き起こす。IgGサブクラス分画測定により、IgG1-4の個別定量が診断に有効である。

参考)IgGサブクラス分画|免疫グロブリン|免疫血清学検査|WEB…

これらの疾患において、グロブリンの種類別測定は病態把握と治療方針決定に不可欠な情報を提供している。