グリチルリチンの効果と医療応用における有効性

グリチルリチンの効果と医療応用

グリチルリチンの主要効果
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抗炎症作用

プロスタグランジンE2の産生を強く抑制し、炎症反応を制御

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肝機能改善

肝細胞の保護と増殖促進による肝疾患治療効果

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副作用対策

偽アルドステロン症の発症機序と予防・管理

グリチルリチンの抗炎症作用と薬理機序

グリチルリチンは甘草(カンゾウ)から抽出される天然の薬用成分で、強力な抗炎症作用を有しています 。この抗炎症効果の主要な機序は、炎症の中心的メディエーターであるプロスタグランジンE2の産生を強く抑制することです 。

参考)https://www.rakuten.ne.jp/gold/pycno/special/dipotassium_glycyrrhizinate.html

アラキドン酸代謝系において、グリチルリチンは初発酵素であるホスホリパーゼA2とリポキシゲナーゼに直接結合し、これらの酵素のリン酸化を介する活性化を選択的に阻害します 。この阻害により、炎症性サイトカインの産生が抑制され、組織の炎症反応が効果的にコントロールされます。

参考)https://www.minophagen.co.jp/Japanese/medical/product/pdf/glt_if_08.pdf

さらに、グリチルリチンはヒアルロニダーゼの活性を阻害することで、ヒスタミンの放出を抑制し、アレルギー反応によるかゆみや痛みを緩和する抗アレルギー作用も発揮します 。これらの多面的な作用により、グリチルリチンは皮膚炎症から内臓疾患まで幅広い炎症性疾患の治療に応用されています。

参考)【成分解説】グリチルリチン酸ジカリウムの抗炎症作用とは

グリチルリチンの肝疾患治療における効果

肝疾患治療において、グリチルリチン製剤は重要な治療選択肢の一つとして位置づけられています 。グリチルリチンの肝保護作用は、肝細胞膜を強化することにより肝細胞の破壊を防ぐ働きに基づいています 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo1960/40/9/40_9_491/_pdf/-char/en

実験的研究では、グリチルリチンがラットの初代培養肝細胞を用いた系で、四塩化炭素による肝細胞障害を抑制することが示されています 。また、グリチルリチンとその代謝産物であるグリチルレチン酸は、肝細胞の増殖促進作用を有することも確認されており、これは肝組織の再生に寄与する重要な機能です 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00057434.pdf

慢性B型肝炎の治療において、グリチルリチン製剤は核酸アナログ製剤のような直接的な抗ウイルス作用は持ちませんが、ALTやASTの値を下げるなど肝機能の改善効果があります 。このため、副作用が原因で他の治療薬が使用できない患者にとって貴重な治療選択肢となっています。

参考)B型慢性肝炎の治療方針

グリチルリチンの免疫調節作用と臨床応用

グリチルリチンの治療効果は、その多様な免疫調節作用にも起因しています 。in vitroの実験系において、グリチルリチンはT細胞活性化調節作用、インターフェロン-γ誘起作用、NK細胞活性化作用、胸腺外Tリンパ球分化増強作用などの免疫機能増強効果が示されています。
これらの免疫調節作用により、グリチルリチンは円形脱毛症の治療にも応用されています 。抗アレルギー作用、血流促進作用、免疫機能増強作用が組み合わさることで、自己免疫的な脱毛症状の改善に寄与すると考えられています。

参考)グリチルリチン製剤とは – 巣鴨千石皮ふ科

抗ウイルス効果についても注目すべき知見があります。動物実験では、マウス肝炎ウイルス(MHV)感染実験でグリチルリチン投与により生存日数の延長が認められ、ワクシニアウイルス発痘の阻止実験でも発痘抑制効果が確認されています 。さらに、in vitroの実験系では、ヘルペスウイルス等の増殖抑制・不活化作用が示されており、2003年にはドイツでSARSコロナウイルスに対する増殖抑制効果も報告されています 。

グリチルリチンの偽アルドステロン症と副作用管理

グリチルリチンの重要な副作用として偽アルドステロン症があり、これは医療従事者が特に注意すべき合併症です 。偽アルドステロン症は、グリチルリチン酸の作用により腎局所でのコルチゾール不活性化が阻害され、過剰となったコルチゾールが腎局所の鉱質コルチコイド受容体を刺激することで発症します 。

参考)エラー

最新の研究により、偽アルドステロン症の真の原因物質が同定されています 。腸内細菌によってグリチルリチン酸から代謝されるグリチルレチン酸(GA)の代謝産物である22α-hydroxy-18β-glycyrrhetyl-3-O-sulfate-30-glucuronideなどの化合物が、実際の病因物質である可能性が高いことが判明しました。

参考)https://www.nagoya-cu.ac.jp/media/190207-1.pdf

偽アルドステロン症の症状には、低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加などがあります 。さらに、低カリウム血症の結果としてミオパチーが現れることもあり、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の症状に注意が必要です。
医療従事者は血清カリウム値の測定などによる十分な観察を行い、異常が認められた場合には投与を中止する必要があります 。特に高血圧患者、高齢者、心臓・腎臓障害のある患者、むくみのある患者では、より慎重な監視が求められます。

グリチルリチンの化粧品・医薬部外品としての効果

グリチルリチンは医薬品としての用途だけでなく、化粧品や医薬部外品分野でも広く活用されています 。医薬部外品としてグリチルリチン酸を配合した製品では、厚生労働省により以下の効果効能が認められています。

参考)【赤ら顔対策】グリチルリチン酸の効果と正しいスキンケア方法

肌荒れ・あれ性の改善、あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびの予防、ふけ・かゆみの防止、日やけ・雪やけ後のほてりの防止、かみそり負けの防止などです 。これらの効果は、グリチルリチンの抗炎症作用と抗アレルギー作用に基づいています。
化粧品への配合においては、グリチルリチン酸ジカリウムとして使用されることが多く、過剰に分泌された皮脂による炎症を鎮める作用により、開き毛穴に効果的とされています 。また、紫外線でダメージを受けた肌の炎症抑制にも寄与します。
医薬品、医薬部外品、化粧品においては、濃度の最大値が厳密に決められており、これらの基準を遵守することで安全性が確保されています 。日本では、グリチルリチン酸を医薬品として使用する際の一日の最大配合量は200mgと定められていますが、50mg以下の量でも副作用が報告されているため、適切な用量管理が重要です 。