学校近視と対策
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学校近視の原因と屋外活動の関係
学校近視は、遺伝要因だけでなく「生活環境(近業の増加、屋外活動の減少)」が強く影響するタイプの近視として捉えると、説明と介入が組み立てやすくなります。とくに近年は、学習・塾・デジタル端末などで手元を見る時間が伸びやすく、発症年齢が早まるほど将来の強度近視リスクが積み上がるため、早期介入の意義が大きい領域です。
屋外活動は、近視の「発症予防」に有効であることが科学的に証明されており、目標として1日2時間の屋外時間確保が望ましいと整理されています。屋外時間は年齢が低いほど重要とされ、休み時間に外へ出る、短時間を組み合わせる、といった現実的な工夫も許容されています。
ここで医療従事者が押さえたいのは、「屋外=直射日光の下で運動し続ける」ではない点です。暗く見える木陰や曇天でも、近視予防に有効と考えられる照度(1千~3千ルクス以上)で足りる、帽子やサングラスを使っても目の周りには十分な光が確保できる、といった説明は保護者の不安を減らし、実行率を上げます。熱中症・紫外線対策を前提に、屋外活動を「安全に継続」できるプランへ落とし込むことが重要です。
また、意外に効果が大きいのが「測れる化」です。小型の照度計を付けて実測すると目標が具体化してモチベーションにつながる、という提案は家庭支援として実装性があります。医療側が「行動目標を数値で提示する」ことは、学校近視の保健指導で再現性が高いアプローチです。
厚生労働省(保護者向け):屋外活動1日2時間、近業は30cm以上・30分以上連続しない等の具体策
学校近視と近業管理とスクリーンタイム
近業管理は、家庭で最も介入しやすい一方、「勉強を減らすのか」という誤解が生まれやすい領域です。そこで、医療従事者向けの説明は“量をゼロにする”ではなく、“やり方を変える”へ軸足を置くと、保護者・学校双方の受容性が上がります。
具体策として、近業は「30cm以上離す」「30分以上連続しない」が重要な目安として整理されています。紙の教材でも電子機器でも同様に当てはまるため、「紙なら安心、タブレットは危険」という単純化を避け、距離と連続時間に焦点を当てるのが実務的です。
スクリーンタイムの説明では、携帯小型機器(スマートフォン等)で視距離が20cm未満になりやすい点がポイントになります。視距離が短くなるほど、調節・輻輳負荷だけでなく「姿勢の崩れ→距離のさらなる短縮」という悪循環が起こりやすいため、机・椅子・端末スタンドなど環境調整もセットで指導します。
学校現場に対しては、「授業は黒板を見る時間が多い」「ICT授業でも手元ばかり見続けない配慮がされている」といった整理を伝えたうえで、問題が起こりやすいのは自宅や塾での長時間学習・動画視聴である、という“リスク場面の切り分け”を明確にします。これにより、学校側の防衛的反応を減らし、家庭側の行動変容に資源を集中しやすくなります。
さらに、短い休憩の質も重要です。休憩=スマホチェックになると近業が途切れないため、「休憩は遠くを見る」「窓の外を見る」「廊下の先を見る」など“遠方視を伴う休憩”として提案すると実効性が上がります。保護者には「勉強を止めるのでなく、視機能の回復時間を挟む」と説明すると、取り組みが継続しやすくなります。
学校近視と眼科の評価と治療
学校近視の臨床対応では、まず「視力低下=近視」と決め打ちしないことが基本になります。厚生労働省も、裸眼視力1.0未満のこどもの全てが近視ではない一方、そのうち約8~9割は近視と指摘される、と整理しており、現場では屈折検査・眼位・調節・ドライアイなど鑑別を意識した導線が必要です。
治療については、「完全に進行が止まるわけではない」という前提を最初に共有し、期待値を適正化することが医療コミュニケーション上とても重要です。そのうえで、国際的に有効性が認められている選択肢として、低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズ、累進/多焦点眼鏡などが挙げられます。
低濃度アトロピン点眼は、ATOM2の結果として0.01%で屈折値において約60%の近視進行抑制効果を維持しつつ副作用の問題がほぼ解消された、という歴史的経緯が臨床説明の骨格になります。ただし同時に、0.01%では眼軸長伸展抑制が屈折値ほど十分でない可能性、至適濃度が未確定である点など、患者説明では「強みと限界」をセットで提示する必要があります。
オルソケラトロジーは、就寝時装用で日中の裸眼視力を得られる利点があり、眼軸長伸展で3~6割の抑制効果が見積もられるという整理がされています。一方で感染性角膜炎リスクを含むため、専門医の厳格な管理と保護者教育が重要であり、適応の見極めとフォロー体制が前提になります。
東京科学大学(旧TMDU)小児近視外来:低濃度アトロピンやオルソK等の位置づけ、限界、モニタリングの考え方
学校近視の予防と家庭・学校連携
学校近視の対策は、医療だけで完結しません。むしろ「家庭・学校・医療」が同じ言葉で語れるかどうかが、継続率と成果を左右します。ここでは、現場で使える連携の型を、医療従事者向けに整理します。
まず家庭には、行動目標を“チェックリスト化”して渡すと実装しやすくなります。例えば、屋外活動は「合計2時間を目標に、難しい日は休み時間+放課後+週末で補う」、近業は「30cm以上」「30分で一度遠方視」、スマホは「寝転がって顔に近づけない」など、観察できる項目に変換します。文章だけでなく、冷蔵庫に貼れる短い箇条書きが有効です。
次に学校には、責任追及ではなく「協力依頼」の形にするのがコツです。例えば、座席配慮(黒板が見えにくい児の前方配置)、定期健診後の受診勧奨の徹底、休み時間の屋外活動を阻害しない運用(校庭開放、外遊びの推奨)などは、教育活動の目的とも矛盾しにくい支援です。ICT機器の活用が進むほど、端末と目の距離、机の高さ、照明など“環境設計”が近視対策の一部になるため、保健だより等での啓発も含めて提案します。
医療側は、説明内容を「一枚の指導文書」にまとめ、学校提出用に渡すと連携が回りやすくなります。そこには診断名だけでなく、近業・屋外活動の推奨、座席配慮の必要性、治療中なら注意点(コンタクトレンズ管理、点眼の継続、定期受診)を簡潔に記載します。保護者が学校で説明する負担が減り、結果的に医療の指示が生活へ落ちやすくなります。
学校近視と意外な実装:照度と行動データ
検索上位では「屋外2時間」「30cm・30分」といった定番Tipsが多い一方で、医療従事者が一歩踏み込むなら「行動データで支援する」視点が差別化になります。つまり、学校近視の問題を“気合い”ではなく“測定とフィードバック”で回す発想です。
厚生労働省は、屋外照度は1千~3千ルクス以上でも十分であること、子どもに小型の照度計を付けて実際の数値を確認すると目標が具体化しモチベーションにつながることを示しています。これは、家庭で「外に出たつもり」を「外に出た事実」へ変えられる介入で、夏の暑さや感染症流行などで行動が揺れやすい時期ほど、継続の支えになります。
さらに、臨床側でもライフスタイルを客観的に計測する考え方が出てきています。東京科学大学(旧TMDU)の小児近視外来では、眼鏡に装着する小型デバイスで近見焦点距離、近業時間、照度、頭部の傾き等を収集し、定量データに基づくライフスタイル指導を行う、という発想が紹介されています。これは「守れていないのは努力不足」と断じるのではなく、「どの場面で距離が近いか」「照度が足りない日がいつか」を一緒に特定して改善する、医療者としての支援の質を高めるアプローチです。
現場への落とし込みとしては、まず“家庭でできる範囲のデータ化”から始めるのが現実的です。例えば、週の屋外時間をカレンダーに色分けする、学習ごとの休憩回数を数える、端末学習時はスタンド使用の有無を記録するなど、簡易なログでも行動変容には十分効きます。医療従事者が「ログがあると次回の外来で具体的に相談できる」と伝えるだけで、家庭の取り組みが続きやすくなります。
この“測って戻す”視点は、学校近視が「習慣の病態」であることを踏まえると、治療(点眼・レンズ)と同じくらい重要です。薬やレンズで得られる抑制効果を最大化するためにも、屋外活動と近業管理をデータで支える設計は、今後ますます価値が高まるはずです。

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