外来服薬支援料2の算定要件と一包化と医師の了解と疑義解釈

外来服薬支援料2の算定要件

外来服薬支援料2の重要ポイント
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算定の基本

2剤以上の服用時点が異なる場合や、1剤3種類以上の処方で治療上の必要性がある場合に算定可能。

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医師の了解

処方箋の指示だけでなく、薬剤師が提案し了解を得た場合も対象。必ず記録を残すこと。

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注意点

単なるPTPシートのカットや、患者希望のみの一包化は算定対象外になるケースが多い。

外来服薬支援料2の算定要件における一包化の定義と理由

外来服薬支援料2(旧一包化加算)は、単に薬をまとめる作業に対する対価ではなく、「治療上の必要性」および「服薬管理支援」に対して支払われる点数です。算定にあたっては、以下の基本的な定義を厳密に満たす必要があります。

  • 多種類の薬剤が処方されている場合:服用時点が異なる2剤以上の内服薬、または1剤で3種類以上の内服薬が処方されていること。
  • 服用困難な事情がある場合:手指の震えやリウマチ等で、自らPTPシート等の被包を開いて服用することが困難であると医師が認めた場合。

ここで重要となるのが、「なぜ一包化するのか」という理由の明確化です。単に「患者が楽だから」「まとまっていると便利だから」という利便性の理由だけでは、厳密には算定要件を満たしません。必ず「飲み忘れの防止(コンプライアンスの向上)」や「誤飲の防止」といった治療上のメリットが存在し、その支援を薬剤師が行う必要があります。

厚生労働省の資料では、以下のようなケースが想定されています。

  • 📅 飲み忘れが多い患者:認知機能の低下や多忙により、服薬管理が不十分な場合。
  • 身体的ハンディキャップ:半身麻痺やリウマチ等でシートから出すのが困難な場合。
  • 👀 視力障害:薬の識別が困難で、飲み間違いのリスクが高い場合。

算定点数は処方日数によって大きく異なります。

処方日数 点数 備考
42日分以下 投与日数が7日(または端数)増すごとに34点 毎週加算されていくイメージ
43日分以上 240点(一律) どんなに長くても上限は240点

この「43日」という分岐点は経営上も非常に重要です。例えば、42日処方であれば204点ですが、1日増えて43日処方になると240点に跳ね上がります。医師の処方意図を確認しつつ、長期処方の場合はこの切り替わりを意識しておく必要があります。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/5995

厚生労働省による調剤報酬点数表の解説PDFです。算定要件の原文や基本的な考え方が詳細に記載されています。

別添3 調剤報酬点数表に関する事項(厚生労働省)

外来服薬支援料2の算定要件と医師の了解の取得方法

外来服薬支援料2を算定する上で最大のハードルとなりがちなのが、「医師の了解」の取得プロセスとその記録です。算定には以下の2つのパターンのいずれかが必要です。

  1. 処方箋による指示:処方箋の備考欄や指示枠に「一包化」等の記載がある場合。
  2. 薬剤師からの提案と了解:処方箋には記載がないが、薬剤師が患者の状況(飲み残しや身体機能)を確認し、医師に提案して了解を得た場合。

特に2番目の「薬剤師からの提案」による算定が増えていますが、ここでは疑義照会または情報提供を通じた明確な合意形成が必須です。事後報告や、「まあいいだろう」という自己判断は認められません。

医師への提案時に伝えるべきポイント:

  • 💊 残薬の状況:「自宅に〇日分の飲み残しがあり、PTPシートの管理がうまくいっていません」
  • 👵 身体状況:「リウマチにより指先に力が入らず、薬の取り出しに5分以上かかっています」
  • 📉 改善策:「一包化することで、朝・夕の飲み間違いを防ぎ、服薬コンプライアンスを改善できます」

このように、具体的な「服薬管理上の課題」「一包化による解決策」をセットで伝えることで、医師の了解スムーズに得られ、かつレセプト請求時の摘要欄記載(コメント)の根拠となります。

レセプト記載の注意点:

医師の指示があった場合でも、あるいは提案して了解を得た場合でも、その経緯を調剤録(薬歴)に記載する必要があります。

「医師の指示あり、一包化実施」だけの記載では不十分とされるケースが増えています。「〇〇のため一包化の必要性を認め、医師に照会し了解を得た」といった、必要性の理由を含めた記述を心がけてください。

参考)301 Moved Permanently

日本薬剤師会による疑義解釈資料のまとめページです。医師の了解に関する具体的なQ&Aが含まれています。

調剤報酬改定に関するQ&A(日本薬剤師会)

外来服薬支援料2の算定要件と家族への指導のポイント

外来服薬支援料2は、患者本人が来局できない場合でも、家族等に対する指導を行うことで算定が可能です。これは在宅医療に移行する前の段階や、認知症患者を家族が支えているケースで非常に重要な役割を果たします。

算定要件において、「患者またはその家族等」に対して服薬指導を行うことが明記されています。家族への指導で算定する場合、以下のポイントを押さえる必要があります。

  • 🗣️ 代理人への指導内容:単に薬を渡すだけでなく、一包化された薬の管理方法、保管場所、服用させるタイミングの工夫などを家族に具体的に指導する必要があります。
  • 📝 患者の服薬状況の聞き取り:来局していない患者本人の家での様子(ちゃんと飲めているか、副作用の兆候はないか)を家族から詳細に聴取し、薬歴に記録します。
  • 🤝 情報共有:必要に応じて、聞き取った内容を処方医やケアマネジャーにフィードバックします。

家族への指導における会話例:

薬剤師:「お母様、最近お薬の飲み忘れはありませんか?」

家族:「朝の薬をよく忘れてしまうんです」

薬剤師:「では、朝の分だけ日付を入れて一包化しました。カレンダーのこの位置にセットして、朝食後に声をかけてあげてください。もし袋が開けにくいようでしたら、次回からハサミを入れる切り込み(ノッチ)を工夫しますね」

このように、「一包化したものを使ってどう管理するか」まで踏み込んで指導することが、算定要件を満たすための鍵となります。単なる受け渡しでは「服薬管理の支援」とはみなされません。

また、お薬手帳(薬剤服用歴手帳)への記載も、家族が読んでも分かるように配慮することが望まれます。家族が介護者である場合、介護負担を減らすための一包化という側面も、治療上の必要性として認められる重要な要素です。

参考)外来服薬支援料2(一包化加算)の算定要件・点数と調剤報酬の基…

外来服薬支援料2の算定要件に関する疑義解釈と注意点

実務上、判断に迷うケースについて、過去の疑義解釈や算定上の注意点を整理します。これらは返戻(レセプトの差し戻し)の対象になりやすいため、十分な確認が必要です。

主な疑義解釈・注意点リスト:

  1. 外来服薬支援料1との併算定不可
    • 外来服薬支援料1(患者が持参した残薬等の整理・調整)と、外来服薬支援料2(処方箋に基づく一包化)は、同一の処方受付回において併算定できません。どちらか主となる支援に合わせて算定します。
  2. 「直近」の定義
    • 算定の根拠となる「多種類の薬剤」や「一包化の指示」は、原則として今回の処方に基づきます。ただし、継続して来局している患者で、前回と同様の理由で一包化が必要と判断できる場合は、都度の詳細な確認を省略できることもありますが、薬歴への記載は必須です。
  3. 頓服薬(トンぷく)の一包化
    • 頓服薬のみの一包化は、原則として算定対象外となることが多いです。しかし、定期薬と合わせて一包化する場合や、手の震え等でPTPからの取り出しが困難な場合の頓服薬の別包化は、全体の服薬支援の一環として認められることがあります。ただし、算定の基礎となる剤数カウントには注意が必要です。
  4. 別包化(用法違い)の扱い
    • 「吸湿性が高い薬」や「遮光が必要な薬」など、配合変化や安定性の問題でPTPシートのまま別渡しにする場合でも、他の薬剤が一包化の要件を満たしていれば、外来服薬支援料2を算定可能です。この場合、別渡しにする理由を薬歴に明記してください。

間違いやすいポイント:

「患者の希望」のみで一包化した場合、それは自費(実費徴収)の対象となり、保険請求である外来服薬支援料2は算定できません。あくまで「治療上の必要性」が前提です。「面倒だからまとめて」という理由だけでは保険請求できないことを、患者にも丁寧に説明する必要があります。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/dispensation_point/5424

薬剤師向けの診療報酬関連情報サイトです。併算定の可否や具体的な事例が解説されています。

外来服薬支援料2の算定要件をわかりやすく解説(m3.com)

外来服薬支援料2の算定要件を満たさないPTPシートの扱い

ここでは、あまり語られない独自視点として、PTPシートの加工と算定要件の境界線について深掘りします。

現場では、「一包化は希望しないが、PTPシートの角が刺さると痛いので切ってほしい」や「偶数錠になるようにヒートをカットしてほしい」という要望を受けることがあります。また、1錠ずつ切り離してしまうと誤飲のリスクがあるため、2錠単位でテープ留めするなどの工夫をすることもあります。

これらの行為は「外来服薬支援料2」の算定対象になるのでしょうか?

結論:基本的には算定対象外ですが、例外があります。

原則として、外来服薬支援料2における「一包化」とは、分包機等を用いてワックス紙やセロファン等の別の容器(袋)に入れ替える行為を指します。したがって、PTPシートをハサミで切ったり、ホッチキスやテープで留めたりするだけの行為は、通常「一包化」とはみなされません。

しかし、以下の論理構成が成立する場合は、算定の可能性検討の余地、あるいは「一包化」に準じた高度な服薬支援として解釈されるグレーゾーンが存在します(※都道府県の審査基準により異なります)。

  • 「被包を開いて薬剤を服用することが困難」な場合への対応

    もし医師が「PTPシートから出すことすら困難」と判断し、かつ「散剤(粉薬)のように分包すると逆にこぼしてしまう」等の理由で、「あえてPTPシートの裏紙を剥がしやすく加工して提供する」等の特殊な支援を行い、それが実質的な「服用支援」として機能している場合。

ただし、これは極めて稀なケースであり、通常の「ヒートカット」はサービスの一環とみなされます。

重要なリスク管理:

PTPシートを1錠ずつに切り離して渡すことは、誤飲(シートごと飲み込む事故)の原因となるため、基本的に避けるべきです。もし患者の要望で1錠カットを行う場合は、誤飲のリスクを十分に説明し、外来服薬支援料2の算定とは無関係な「患者要望による調整」として処理するのが安全です。

逆に、「PTPシートのままでは管理できない」という理由で一包化へ誘導することは、正当な算定理由になります。中途半端なシート加工で対応するよりも、「管理困難」を理由として正規の一包化(分包)に切り替え、外来服薬支援料2を算定する方が、医療安全上も薬局経営上も健全なアプローチと言えるでしょう。

一包化加算に関する詳細な事例や、算定できないケースについての解説が含まれています。

外来服薬支援料2(一包化加算)の算定要件・点数と調剤報酬改定のポイント