風疹ウイルス症状と潜伏期間、合併症

風疹ウイルス症状と特徴

風疹ウイルスの主な症状
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発熱と発疹

2〜3週間の潜伏期間後、微熱と淡紅色の発疹が全身に出現し、数日で消失します

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リンパ節腫脹

耳の後ろ、後頭部、頸部のリンパ節が腫れることが特徴的な症状です

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不顕性感染

感染しても症状が出ないこともあり、小児の30〜50%、成人の15%程度で見られます

風疹ウイルス感染後の潜伏期間

風疹ウイルスに感染すると、約2〜3週間(平均16〜18日)の潜伏期間を経て症状が現れます。この潜伏期間中は症状が現れないため、感染したことに気付かないまま他人に感染を広げる可能性があります。特に注意すべき点として、症状が出現する約1週間前から他者への感染力があるため、発疹などの明らかな症状が出る前から周囲への配慮が必要です。

参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E9%A2%A8%E7%96%B9


潜伏期間を過ぎると、発熱や発疹、リンパ節の腫れといった典型的な症状が出現しますが、これらの症状は個人によって現れ方が異なります。特に感染力が強い期間は、症状が現れる1週間前から発疹が消えた後の1週間程度とされており、この期間に集団の中で過ごすと周囲への感染拡大リスクが高まります。

参考)風しんについて|厚生労働省

風疹ウイルス発疹の特徴

風疹の発疹は、顔から現れて全身に広がっていく淡紅色の小さな丘疹が特徴です。麻疹(はしか)の発疹と比べて赤みが淡く、癒合して大きな赤い領域を形成することがないという違いがあります。発疹は通常3日間程度続き、色素沈着を残さずに消失します。

参考)風疹 – 23. 小児の健康上の問題 – MSDマニュアル家…


口腔内には「フォルヒハイマー斑」と呼ばれる特徴的な点状紅斑・紫斑が軟口蓋に現れることがあり、多くの症例で認められます。この所見は風疹の診断において重要な手がかりとなります。発疹の出現と同時に、顔面に圧迫により消退する斑状紅斑が特に認められることがあります。また、発疹にはかゆみを伴うこともあり、溶連菌感染症の発疹に似ている場合があります。

参考)風疹 – 19. 小児科 – MSDマニュアル プロフェッシ…

風疹ウイルス感染によるリンパ節腫脹

風疹の最も特徴的な症状の一つが、リンパ節の腫脹です。特に耳の後ろ(耳介後部)、後頭部、頸部のリンパ節が腫れることが典型的で、圧痛を伴うことがあります。リンパ節腫脹は発疹出現前から認められることが多く、風疹の早期診断における重要な所見となります。

参考)麻疹(はしか)・風疹(三日はしか)の症状・原因は?流行周期や…


リンパ節の腫れは発熱や発疹が数日で消失した後も持続し、3〜6週間程度続くことがあります。この持続期間の長さも風疹の特徴的な所見の一つです。リンパ節腫脹は風疹の三主徴(発熱・発疹・リンパ節腫脹)の一つとして重要視されており、診断の際には必ず確認される症状です。​

風疹ウイルス症状の大人と子どもの違い

風疹の症状は年齢によって現れ方が異なります。小児では通常、症状が軽度であるか、ほとんど症状が現れないことが多く、発疹が最初の徴候となる場合が多いです。小児の場合、前駆期(発疹出現前の症状)はごく軽微であるか認められないことがほとんどです。​
一方、成人では発疹出現の1〜5日前に前駆期があり、微熱、倦怠感結膜炎、リンパ節腫脹などが現れます。特に思春期以降の女性が感染すると、約70%に関節痛が認められ、痛みは1ヶ月ほど続く場合もあります。しかし、小児や男児には関節痛はあまり見られません。また、成人では症状が重症化する傾向があり、入院加療を要することもあります。発熱についても、麻疹のように高熱にならず微熱の場合が多いのが特徴です。

参考)風疹(三日はしか) – 大森町駅前内科小児科クリニック 大田…

風疹ウイルス合併症と血小板減少

風疹は通常軽症で経過しますが、まれに重篤な合併症を引き起こすことがあります。合併症としては脳炎や血小板減少性紫斑病が知られており、その発生頻度は2,000人〜5,000人に1人程度とされています。脳炎は非常にまれですが、ときに死に至ることのある重大な合併症であり、注意が必要です。

参考)風疹の症状・治療・予防接種を小児科専門医が解説


血小板減少性紫斑病は、血液中の血小板数が減少することで出血しやすくなる病態です。風疹後に血小板減少が起こるメカニズムについては、風疹ウイルスが直接血小板数を減少させる可能性が示唆されています。また、中耳の感染症(中耳炎)もまれに起こることがあります。これらの合併症が疑われる場合には、入院加療を要することもあり、症状が軽くても注意深い観察が必要です。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/24/3/24_346/_pdf

風疹ウイルスと先天性風疹症候群

妊娠初期の女性が風疹ウイルスに感染すると、胎児にも感染が及び、先天性風疹症候群(CRS)を発症する可能性があります。この症候群は、風疹に対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの妊婦が感染した場合に特にリスクが高くなります。先天性風疹症候群を発症する可能性は、妊婦が風疹に罹患した時期により大きく異なり、妊娠2か月頃までは眼、心臓、耳のすべてに症状を持つことが多くなります。

参考)風疹の潜伏期間はどれくらいですか? |風疹


先天性風疹症候群の主な症状としては、先天性心疾患難聴白内障緑内障、小頭症、脳炎などがあり、これらが原因で哺乳障害、成長障害、発達障害、視力障害などが生じます。胎児に異常が認められる頻度は妊娠週数に相関しており、妊娠早期ほどリスクが高く、妊娠20週以降では異常なしのことが多いと報告されています。また、子宮内で胎児が亡くなることもあり、産まれてきた赤ちゃんが何か月もウイルスを排出し続けるため、周囲の赤ちゃんへの感染対策も必要となります。

参考)先天性風疹 – 19. 小児科 – MSDマニュアル プロフ…


先天性風疹症候群の予防のためには、妊娠を予定または希望する女性は妊娠前に予防接種を受けることが最も重要です。また、妊婦への感染の可能性を減らすため、妊婦の周囲の人々をはじめ、男性を含めたより多くの方が予防接種を受けておくことが望ましいとされています。なお、妊娠中の女性は風疹の予防接種を受けることができないため、妊娠前の対策が不可欠です。

参考)子供のウィルス感染症 Q11 – 皮膚科Q&A(公益社団法人…

風疹ウイルス予防接種とMRワクチン

風疹の予防には、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種が有効です。MRワクチンは、麻疹(はしか)と風疹を予防するため、麻疹ウイルスと風疹ウイルスを弱毒化したワクチン株の2種が含まれた混合ワクチンです。このワクチンを接種することによって、麻疹と風疹に対する免疫ができるため、感染が予防され重篤な合併症の予防にもつながります。

参考)はしか(麻しん)の症状と風疹との違いについて解説


定期接種としては、第1期が1歳〜2歳未満に1回、第2期が5歳以上7歳未満で小学校就学前の1年間に1回、合計2回の接種が推奨されています。2007年に国内で「5年間の麻疹排除計画」が策定され、その結果として2015年3月27日にWHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局により、日本が麻疹の排除状態にあることが認定されました。

参考)MRワクチンはいつ接種する?大人への接種や費用についても解説


近年は麻疹、風疹が成人で流行しており、成人がかかると重症化することが多いため、成人にも接種が推奨されています。特に妊娠初期の妊婦が風疹にかかると赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気を持って生まれる危険性があるため、妊娠を希望する女性は妊娠前に抗体の有無をチェックし、予防接種を受けることが重要です。なお、予防接種後2ヶ月間は避妊が必要とされています。

参考)MR(麻しん風しん混合)ワクチン|ワクチン.net(ワクチン…

参考情報:厚生労働省の風疹に関する詳細情報

厚生労働省「風しんについて」では、風疹の症状や予防接種に関する最新情報、先天性風疹症候群の予防対策などが詳しく解説されています。

参考情報:国立感染症研究所の先天性風疹症候群に関するQ&A

国立感染症研究所「先天性風疹症候群に関するQ&A」では、妊婦が風疹に感染した場合のリスクや予防方法について専門的な情報が提供されています。