不正咬合の種類と原因・症状

不正咬合の種類と特徴

不正咬合の主な種類
🦷

叢生・上顎前突・下顎前突

歯がデコボコに並ぶ叢生、前歯が前に出る上顎前突(出っ歯)、下顎が前に出る下顎前突(受け口)が代表的

😮

開咬・過蓋咬合

奥歯を噛んでも前歯が閉じない開咬と、噛み合わせが深すぎる過蓋咬合は機能障害を引き起こす

⚠️

交叉咬合・空隙歯列

上下の歯が交差する交叉咬合や歯と歯の間に隙間がある空隙歯列も不正咬合の一種


不正咬合は歯並びや噛み合わせの異常を指し、見た目の問題だけでなく口腔機能全体に影響を及ぼす状態です。日本人の約半数以上が何らかの不正咬合を持つとされ、その種類は大きく7つに分類されます。適切な診断と治療により、多くの不正咬合は改善可能です。

参考)不正咬合の種類|医療法人社団幸恵会 船橋もりやま歯科・矯正歯…

不正咬合の叢生(そうせい)とは

叢生は歯がデコボコに生えている状態で、乱杭歯(らんぐいば)や八重歯とも呼ばれます。顎の発育が不十分で小さいため、永久歯が収まるスペースが足りず、歯列から歯が飛び出したり重なり合ったりして生えるのが主な原因です。歯と歯が重なり合っていることから歯磨きが困難になり、虫歯歯周病のリスクが高まります。数歯にわたって各々が前や後ろに位置していたり、傾いていたりねじれている状態を叢生といい、歯の大きさに対して顎が小さいことで起こります。

参考)不正咬合の種類とその治療法について |横浜市 町田市の歯列矯…

不正咬合の上顎前突(出っ歯)の特徴

上顎前突は出っ歯とも呼ばれ、上顎や上の前歯が前に飛び出している状態を指します。下顎の未発達や上顎の過剰発達、指をしゃぶる癖などが原因に挙げられます。口を閉じると上唇が上がった状態になるため、見た目のコンプレックスになりやすい不正咬合です。鼻炎や蓄膿症により口呼吸をしている子供も、口内で舌が低位置になるため上顎前突になりやすい傾向があります。前歯の咬み合わせを下から見た時に上下の前歯の間のスペースが大きく、上の前歯が前方に傾斜している場合、上の顎が前方に位置している場合、下の顎の成長が未熟な場合などがあります。

参考)不正咬合とは

不正咬合の下顎前突(受け口)と反対咬合

下顎前突は受け口や反対咬合とも呼ばれ、下の歯が上の歯より前に出ており、噛み合わせが上下で逆になっている不正咬合です。口を閉じたときに上の歯が下の歯に被さり上の歯が外側になるのが正常な状態ですが、下顎前突の場合は反対で、下の歯が上の歯に被さるため下の歯が外側になります。下顎前突は大きく2つのタイプに分けられ、上下の顎のサイズのバランスが悪い「骨格性」のものと、上の前歯が後ろに傾いていたり下の前歯が前に突き出していたりする「歯性」のものです。遺伝的な要因と後天的な要因がありますが、多くは遺伝的要因によって起こると言われています。遺伝の場合は下顎の過成長や上顎の成長不足などによって症状が現れ、後天的な場合は乳幼児期の指しゃぶり、舌で下の歯を押す癖、下顎を前に出す癖、頬杖をつく癖などが原因となります。

参考)https://www.sakae-swan.com/column/progenia/

不正咬合の開咬(オープンバイト)の原因

開咬またはオープンバイトは、歯を噛み合わせたときに上と下の前歯が当たらない状態です。いつも無意識に舌を前歯に押し付けている場合があり、特に上下の前歯の間に舌を入れてしまう「舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)」はオープンバイトの大きな原因です。他にも舌で前歯の裏を頻繁に触ったり、飲み込むときに舌を前歯に挟んだりといった「舌癖(ぜつへき)」が原因で開咬になるケースが多く見られます。過去の癖が影響しているケースもあり、幼少期に「指しゃぶり」や「爪を噛む癖」があった人は要注意です。開咬の原因は多様で、不良習癖としては吸指癖(指を吸う癖)、舌突出癖(舌を前に出す癖)、咬唇癖(唇を噛む癖)などが挙げられ、骨格の異常では垂直方向の顎骨の異常、具体的には下顎骨の後下方への回転や下顎骨の前下方への過成長などが原因です。

参考)開咬(オープンバイト)の原因・矯正法を解説|吉祥寺壱番館歯科

不正咬合の過蓋咬合(ディープバイト)とは

過蓋咬合(かがいこうごう)とは、咬み合わせが深く下の歯がほとんど見えない歯並びのことを言います。歯科用語では「ディープバイト」と言い、直訳するとそのまま「深く噛む」という意味になります。過蓋咬合は咬み合わせが深い位置にあるため、下顎の前歯が上顎の粘膜にあたって傷つけてしまったり、食いしばりが強いため顎関節症になりやすい咬み合わせと言われています。過蓋咬合は不正咬合の中では比較的見た目の問題は大きくありませんが、下の前歯が見えないだけでなく、ガミースマイルという笑うと歯茎が見える状態を併発しやすいとも言われています。食いしばりが強いことから、歯が食いしばりのダメージで歯のすり減りや割れる・欠けるリスクがあり、奥歯への負担が強いため、歳を重ねると歯を失うリスクが高くなります。過蓋咬合の原因は上顎の過成長や前歯が過剰に伸びていること、奥歯の喪失によっておこる高さの不足などが挙げられます。

参考)不正咬合の種類別原因・治療 – 志木・ファミリー歯科医院

不正咬合の交叉咬合(クロスバイト)の症状

交叉咬合(こうさこうごう)は、上下の嚙み合わせの位置関係が歯列の途中で逆転している状態を言います。通常、人間の歯は上の歯が下の歯の外側にかぶさるように噛み合いますが、交叉咬合では一部の歯でこの関係が逆になります。クロスバイトとも呼ばれており、歯はもちろんのこと顎や全身のバランスにも悪影響を及ぼすことがあります。正常な被蓋では上顎が下顎の歯の上から2~3mm程度覆いかぶさり、上顎の歯列の中に下顎の歯列が取り囲まれるように咬むことが理想的ですが、交叉咬合の場合には一部の歯列において下顎の歯が上顎の外側から咬合する、正常な被蓋と逆になっています。クロスバイトの主な原因は、頬杖をつく癖や片側だけで噛む癖などの悪習癖・悪習慣、歯の萌出位置の異常、遺伝的な要因が挙げられます。

参考)交叉咬合

不正咬合のアングル分類による診断

かみ合わせを上下の歯の前後的な位置で分類したものが、アングル分類です。Ⅰ級は上下の歯の位置が理想的で良いかみ合わせになっている状態、Ⅱ級は上の歯に対して下の歯が後ろに引っ込んでいる状態、Ⅲ級は上の歯に対して下の歯が前に出ている状態を指します。この分類は矯正歯科治療における重要な診断基準として世界中で広く使用されています。アングル分類に加えて、上下的な位置関係で分類するオープンバイト(開咬)とディープバイト(過蓋咬合)、歯列の状態で分類する叢生と空隙歯列弓などがあり、これらを組み合わせて総合的に不正咬合を診断します。

参考)咬合の状態を歯科医が診る際の重要な基準。「Angle(アング…

不正咬合と顔貌への影響

不正咬合は歯並びだけでなく、顔貌にも大きな影響を与えます。歯並びや噛み合わせが悪いと、顔の左右バランスが崩れ、非対称な顔つきになる原因となります。噛む力の偏りで筋肉の発達が不均衡になり、顔全体の歪みを招くこともあります。片側の歯だけで噛む状態が続くと、片側の筋肉だけが発達してしまい、噛み合わせがさらに悪化したり、顎関節症を発症したり、顔貌も左右非対称になってしまうこともあります。下顎前突の場合は下顎がしゃくれていて長く見えるため、コンプレックスを抱く方も多くいらっしゃいます。上顎前突の方は口を閉じると上唇が上がった状態になるため、見た目のコンプレックスになりやすい不正咬合です。

参考)不正咬合が体へ及ぼす影響について – ARTE DENTAL…

不正咬合の予防方法と生活習慣

不正咬合の予防や軽減のために、家庭でも取り組めることがあります。猫背やうつぶせ寝などは顎の発達や歯並びに影響を及ぼす可能性があるため、普段から正しい姿勢を心掛けることが重要です。鼻呼吸を促し口呼吸を避けることで、口腔内環境を整え不正咬合のリスクを減らします。夜間に口が開いてしまう場合は、専門家に相談するのも一つの方法です。硬めの食材(にんじんやりんごなど)を取り入れることで顎の発達を促し、噛むことが少ない食生活は顎の発達不全につながる可能性があるため注意が必要です。乳幼児期の指しゃぶり、舌で歯を押す癖、下顎を前に出す癖、頬杖をつく癖などは不正咬合の原因となるため、早期に改善することが望ましいです。早期発見のための定期検診も予防に効果的です。

参考)不正咬合の種類別リスクと将来への影響とは? 監修:松本デンタ…

不正咬合と虫歯・歯周病のリスク

歯並びが悪くなると歯が磨きにくい場所ができるため、虫歯や歯周病のリスクが上がります。歯垢が溜まりやすくなってしまい、虫歯や歯周病の原因になってしまいます。ただし、不正咬合があったとしても虫歯がない症例は多く見受けられ、不正咬合は虫歯になる必要条件ではありません。虫歯や歯周病はたとえ歯並びが悪くても適切な方法がとられれば予防可能な疾患といえます。一方で、歯の混み合いが3mmを超える場合は、個別の「宿主因子」として慢性炎症プロセスの累積的なリスクの可能性を示し、その結果は高齢になって初めて現れることが研究で示されています。不正咬合があっても予防をしっかりしていれば問題ありませんが、悪くなりやすい環境にあるため、しっかりとメインテナンスを行う必要があります。

参考)https://yamanouchi-dc.com/column/oral-015-2/

不正咬合が機能面に及ぼす影響

不正咬合であると噛み合わせにも影響してくるため、食べ物を上手く噛むことができなくなってしまいます。歯がしっかり噛み合わず、食べ物を噛み切りにくいのも問題です。発音においても影響が出て、「サ行」や「タ行」が発音しづらくなるなどの症状が現れます。歯と歯の間に隙間があると、そこから空気が漏れてしまうため言葉が聞き取りにくくなってしまいます。また、顎がしゃくれていると舌の位置が通常の位置とは変わってしまい、サ行、タ行の発音がしにくくなってしまいます。歯並びに異常があると、噛む度に顎の関節に強い負荷がかかり、負荷がかかり続けると首の周りの筋肉が緊張状態になり、肩こりや頭痛などの症状が出てしまいます。顎関節症を誘発するリスクもあり、特に過蓋咬合や下顎前突の方は顎関節に負担がかかりやすい傾向があります。

参考)https://www.tower-swan.com/column/progenia/