服用薬剤調整支援料 具体例
服用薬剤調整支援料 具体例の算定要件と算定タイミング
服用薬剤調整支援料1は、4週間以上継続して服用している内服薬が6種類以上の患者に対し、薬局薬剤師が患者本人の希望を確認した上で医師へ減薬を提案し、結果として減薬された場合に算定できる位置づけです。根拠として、解説記事では「4週間以上継続して服用している内服薬が6種類以上」「本人の希望を確認」「医師へ提案」「減薬された場合に算定」と整理されています(詳細条件は告示・通知で最終確認が必要)。
算定タイミングの要点は「提案した日」ではなく、「減薬した状態が4週間以上継続したことを確認できた時点」です。
また、2種類以上の減薬は“同時”である必要はなく、段階的に減って最終的に条件を満たした時点で算定できる、と解説されています。
ここで現場がつまずきやすいのが、「6種類」と「2種類減」の数え方です。種類数にカウントされる剤形(錠剤、カプセル、散剤、顆粒、液剤など)や、カウントされないもの(例:屯服、服用開始後4週間未満など)があり、判断を誤ると算定の前提が崩れます。
参考)服用薬剤調整支援料とは
さらに、前回算定から1年以内に再算定する場合は、前回減ったところから“さらに2種類以上”の減薬が必要になる、という注意点も明記されています。
服用薬剤調整支援料 具体例の薬歴と薬学的見地の記録
薬歴(薬剤服用歴)については、調剤報酬の通則で「取得した患者情報等を踏まえた薬学的管理及び指導の要点」を記載し、必要に応じて直ちに参照できるよう患者ごとに保存・管理することが示されています。
また、単に聞いたことを羅列するのではなく「要点を記載」「定型文で画一的にしない」ことが求められています。
この“画一的にしない”要件は、AIっぽい文章やテンプレの貼り付けが増えた昨今、監査・指導の観点でも地味に重要です(薬歴の同一文言が連続すると、実施内容の実在性が疑われやすい)。
服用薬剤調整支援料1の薬歴で最低限押さえたいのは、次の4ブロックです(箇条書きは入れ子にしません)。
- 患者の意向:減薬に前向きか、症状悪化の不安、優先したい生活目標(例:ふらつき減らしたい、眠気を減らしたい等)。
- 薬学的見地:副作用の可能性、重複、処方カスケードの疑い、アドヒアランス、残薬、生活像(食事・睡眠・活動性など)。
- 医師への提案内容:提案した薬剤名(少なくとも1種類は自局薬剤師が提案した薬剤である必要がある点に注意)、提案理由、代替案(減量・中止・頓用化・期間限定など)。
- フォロー:減薬後の経過(4週間維持の確認)、体調変化、副作用の改善有無、再増量の兆候の有無。
薬歴の文章例(監査で見られやすい「要点」中心の粒度)を示します。
- 「服薬状況:内服9種、開始4週以上。眠気・ふらつき訴えあり。生活像:夜間頻尿で睡眠分断。意向:転倒が怖く減薬相談希望。薬学評価:抗コリン作用/鎮静負荷の可能性、処方カスケード疑い。提案:睡眠薬・胃薬の漫然投与の見直しを文書で依頼。2剤減、4週継続を確認後、算定検討。」
服用薬剤調整支援料 具体例の算定例(重複投薬・処方カスケード)
算定例として分かりやすいのが、消化器系薬(便秘薬・胃薬等)の重複や漫然投与を、患者の症状改善・生活状況と結びつけて見直すケースです。
解説では「症状が改善しているにもかかわらず漫然と服用を継続している患者がいるため、声かけが算定につながる可能性がある」とされています。
ここでのコツは、“薬が不要”という断定ではなく、「今の症状と薬が合っているか、続ける価値があるか」を一緒に点検する姿勢を作ることです(患者の心理的抵抗を下げる)。
もう一つ、現場で強いのが処方カスケード(薬の副作用を別の薬で抑える構造)を疑って医師へ提案するパターンです。
例えば、A薬(鎮静・抗コリン等)→便秘・ふらつき→便秘薬追加・めまい薬追加、のように“追加の連鎖”が起きていると、2種類以上の減薬に結びつきやすい一方、患者の納得がないと戻りやすいのが特徴です。
そのため、患者への説明は「原因の可能性がある薬を見直せば、対症薬を減らせるかもしれない」という“減薬の利益”を先に示す順番が有効です。
現場向けに、医師への文書提案で使いやすい観点(例)をまとめます。
- 「漫然投与(症状安定)+副作用疑い」:継続意義の再評価、期間限定中止の提案。
- 「同種同効の重複」:重複解消(どちらを残すかは医師判断)、症状日誌を付けて減量の根拠化。
- 「処方カスケード疑い」:原因薬の調整→対症薬の整理、順序立てた減薬(段階的でも最終的に2剤減・4週維持を狙う)。
服用薬剤調整支援料 具体例の文書提案と情報提供の型
服用薬剤調整支援料1は「文書を用いて提案する」ことが実務上の要点として解説されており、提案の根拠(薬学的見地)と患者の意向がセットであるほど医師側の意思決定が早くなります。
また、薬歴等の記録として、医療機関から得た薬剤調整に関する情報がある場合は記録に残すべき、という実務上の注意も示されています。
医療機関側では「薬剤総合評価調整管理料」算定の流れの中で薬局へ情報提供するケースがある、と解説されています(薬局側の算定要件そのものではないが、連携の実態として重要)。
文書提案は“長文の正論”より、医師が一瞬で判断できる構造が勝ちます。おすすめは次の順番です。
- 患者概要:年齢層、主訴(眠気、転倒不安、便秘など)、内服薬種類数(開始4週以上で6種類以上)を事実で提示。
- 問題点:副作用疑い、アドヒアランス低下、残薬、生活への支障を1~2点に絞る。
- 提案:具体的な薬剤名を挙げ、選択肢(中止/減量/頓用化/切替)を提示(決定は医師)。
- 観察計画:減薬後4週間の観察項目(睡眠、転倒、排便回数、めまい等)を簡潔に。
実務の“落とし穴”として、服用薬剤調整支援料1を算定する局面では、他の算定との関係(算定できないケースがある)も解説されています。
たとえば、特定の管理料・加算を算定している場合に算定できないことがあるため、レセプト設計の段階で「どれを優先するか」を薬局内で合意しておくと事故が減ります。
服用薬剤調整支援料 具体例の独自視点:患者心理と減薬の合意形成
検索上位の解説は「要件」「点数」「算定例」が中心になりがちですが、実際に減薬が成立するかどうかは“合意形成の質”でほぼ決まります。
服用薬剤調整支援料1は患者の意向確認が前提として強調されており、患者が納得していない減薬は、自己中断や受診中断、他院受診(結果的に多剤化)につながるリスクがあります。
そのため、薬剤師側の独自の工夫として、説明を「リスク→やめる」ではなく「生活の困りごと→薬が関係しているかも→医師に相談→一緒に様子を見る」の順に並べると、患者の抵抗が下がります。
合意形成で使える説明フレーズ例を、現場の会話に寄せて提示します(絵文字は意味のある用途だけに限定)。
- 🧠「薬が増えると、飲み間違いだけでなく、眠気やふらつきが出やすくなることがあります。最近の“困っている症状”と関係があるか、一緒に見直してもよいですか?」
- 🧾「急に全部は変えません。まず候補を医師に共有して、減らした後に体調を確認して、戻す必要があれば戻す“安全な試し方”で進めましょう。」
- 📌「目的は“減らすこと”ではなく、“必要な薬に絞ること”です。」
この設計にすると、患者の意向が薬歴に自然に残り、医師への文書提案にも“患者が希望している”という強い根拠が入ります。
結果として、減薬後の4週間フォロー(体調変化の聞き取り、残薬確認)も患者が協力的になり、要件確認が現場で回りやすくなります。
意外に見落とされがちですが、通則では薬剤服用歴等の記載は「要点」でよい一方、「定型文を用いて画一的に記載しない」ことが明示されています。
つまり、合意形成の会話を“患者の言葉”で一行でも残すことが、形式要件と現場実態の両方を守る近道になります。
権威性のある制度背景(令和6年度改定の位置づけ・注意書きが読める)。
厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」:改定資料は「正式な告示・通知で詳細確認が必要」と明記され、全体方針や調剤領域の改定背景を俯瞰できます。

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