服薬情報等提供料2の算定例と実践ポイント

服薬情報等提供料2の算定例と実践
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残薬調整・多剤併用

服薬アドヒアランス不良の背景を分析し、一包化や用法整理を提案する王道の算定パターン。

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腎機能・検査値活用

eGFR等の検査値に基づき、減量や薬剤変更を提案する高度な薬学的管理事例。

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他職種連携の盲点

医師だけでなく、ケアマネジャーへの情報提供も算定対象となるケースとその要件。

服薬情報等提供料2の算定例と実践

服薬情報等提供料2は、薬剤師が自発的に薬学的管理を行い、その結果を医師等の医療関係者に文書で提供した際に算定できる点数です。2024年の調剤報酬改定を経て、その重要性はますます高まっています。単に「情報を送れば算定できる」というものではなく、質の高いトレーシングレポート(服薬情報提供書)が求められます。ここでは、具体的な算定例と、現場で見落とされがちなポイントを解説します。

[残薬・ポリファーマシー]の残薬調整と多剤併用の解消

最も頻度が高く、かつ医師からのニーズも高いのが残薬調整とポリファーマシー(多剤併用)対策です。単に「薬が余っている」と報告するのではなく、「なぜ飲めていないのか」というアドヒアランス不良の原因分析と、具体的な解決策の提示が算定の肝となります。

  • 具体的なトレーシングレポート記載例
    • 現状: 患者宅に残薬が〇日分確認された。認知機能の低下は見られないが、PTPシートからの取り出しが困難であることが聴取できた。
    • 評価: 手指の巧緻性低下により、服薬への抵抗感が生じていると推察される。
    • 提案: 現在の処方内容を維持したまま、朝食後の一包化への変更を提案する。これにより服薬管理が容易になり、アドヒアランス向上が期待できる。

    このように、薬剤師の視点で「原因」と「対策」をセットにすることで、医師は処方変更の判断がしやすくなります。特に高齢者においては、嚥下機能や認知機能の変化を鋭敏に察知し、剤形変更(錠剤から粉砕、OD錠へ等)を提案することも有効です。

    参考)トレーシングレポートの書き方やひな形、記入例を紹介

    また、減薬提案の際は、「すべての薬を一度に減らす」のではなく、「まずは症状安定している〇〇薬の減量を検討してはどうか」といった、段階的な提案が受け入れられやすい傾向にあります。

    [検査値・腎機能]の腎機能検査値に基づく投与量提案

    近年、特に注目されているのが検査値(特に腎機能)に基づいた処方提案です。お薬手帳や患者への聞き取り、あるいは地域医療連携システムを通じて得た検査値(eGFRや血清クレアチニン値)を活用し、腎排泄型薬剤の投与量過多を未然に防ぐ介入は、極めて高い専門性が発揮される場面です。

    • 具体的なトレーシングレポート記載例
      • 情報: 患者持参の直近の検査結果より、eGFR 35 mL/min/1.73m²を確認。
      • 評価: 現在処方されている〇〇錠(〇〇mg)は、CCr 50以下では減量が推奨される薬剤であり、現在の用量では血中濃度上昇による副作用リスクが懸念される。
      • 提案: 腎機能を考慮し、〇〇錠を1回〇〇mgへの減量、または腎排泄の影響を受けにくい△△薬への変更を検討されたい。

      このような介入は、副作用の未然防止に直結するため、医療安全の観点からも非常に価値が高いものです。実際に、薬局薬剤師によるCKD(慢性腎臓病)患者への介入が、不適切な薬剤使用を減少させたという研究報告もあります。腎機能低下は自覚症状がないことが多いため、薬剤師による「数値のチェック」が患者を守る最後の砦となります。

      Standards of clinical practice for renal pharmacists. (PMC)

      [OTC・健康食品]のサプリメントとの相互作用

      意外と見落とされがちなのが、OTC医薬品や健康食品(サプリメント)との相互作用に関する情報提供です。患者は「サプリメントは薬ではないから医師に言わなくてもいい」と考えていることが多く、診察時には報告されていないケースが多々あります。

      • 具体的なトレーシングレポート記載例
        • 情報: 患者への聞き取りにより、健康維持目的で「セントジョーンズワート」含有のサプリメントを摂取していることが判明。
        • 評価: 現在服用中のシクロスポリン等の代謝酵素誘導により、血中濃度が低下し、治療効果が減弱する恐れがある。
        • 提案: サプリメントの中止を指導した。次回の診察時に血中濃度の推移にご留意いただきたい。

        また、抗凝固薬服用中の納豆や青汁の摂取、カリウム保持性利尿薬服用中の高カリウム食品の摂取など、食事指導に関わる内容もここに含まれます。これらの情報は、即座に処方変更が必要ない場合でも、治療効果のモニタリングにおいて重要な情報となるため、服薬情報等提供料2の算定対象として適切です。

        参考)1112 調剤報酬全点数解説(2022年度改定版)「服薬情報…

        [地域連携]のケアマネジャーへの情報提供と算定の盲点

        「服薬情報等提供料2=医師への報告」と思い込んでいるケースが多いですが、実はケアマネジャー(介護支援専門員)への情報提供も算定要件に含まれています(月1回の算定上限は医師とは別枠でカウント可能です)。これは在宅医療だけでなく、外来患者においても適用されます。

        • 具体的な活用シーン
          • 独居高齢者で、薬の飲み忘れが増えているが、医師への受診同行者がいない場合。
          • 記載内容: 服薬カレンダーの導入を支援したが、セットごとの管理が難しくなっている。訪問介護導入時に服薬確認を依頼したい旨や、デイサービス利用時の昼食後服薬の依頼など。

          ケアマネジャーは薬の専門家ではないため、「〇〇薬が出たので注意」だけでは不十分です。「ふらつきが出やすくなるので転倒に注意してください」「尿量が増えるのでトイレ誘導の回数を検討してください」など、介護の現場で具体的にどう動くべきかに変換して伝えることが、質の高い情報提供として評価されます。

          参考)服薬情報等提供料1・2・3の算定要件まとめ【令和6年(202…

          [疑義照会との違い]の重複投薬防止加算との境界線

          服薬情報等提供料2を算定する上で最も注意すべきなのが、「重複投薬・相互作用等防止加算」との区別です。この2つは併算定ができず、優先順位が存在します。

          • 重複投薬・相互作用等防止加算: 処方箋受付後、調剤前に疑義照会を行い、その結果処方変更が行われた場合。
          • 服薬情報等提供料2: 調剤後(または調剤前でも処方変更に至らなかった場合)に、事後的に情報を文書で提供した場合。

          例えば、残薬調整のために疑義照会を行い、その場で「日数を減らしておいて」と指示された場合は「重複投薬・相互作用等防止加算」になります。一方、疑義照会まではしないが、「次回から日数を調整したほうがよい」とトレーシングレポートで報告した場合は「服薬情報等提供料2」になります。

          また、医師に電話で疑義照会をし、処方変更にはならなかったが、その内容を改めて文書で報告した場合はどうでしょうか?この場合、情報提供としての要件を満たせば服薬情報等提供料2の算定が可能になるケースがありますが、単なる「疑義照会の記録」では認められません。あくまで「次回の診療に資する有益な情報」であることが必須です。

          参考)重複投薬・相互作用等防止加算とは?算定例やレセプト摘要欄のコ…