腹腔鏡用トロカーと合併症
腹腔鏡用トロカーのブレードレスとオプティカルの選定
腹腔鏡用トロカーの選定は「視認しながら入れるか(オプティカル)」「刃で切り開くか/拡張して分けるか(ブレードレス等)」で、刺入のコンセプトが変わります。
たとえば製品情報ベースでも、透明カニューラで視認性を高める設計や、リブ付きカニューラで固定・刺入感を整える設計が前面に出ており、術者の“見える・ズレない”不安を減らす方向性が読み取れます。
一方で、ブレードレスは「組織繊維に沿って分離する」思想が紹介されており、切開よりも拡張でアクセスすることで腹壁侵襲を抑えたい場面と相性がよい、と整理できます。
現場での意思決定を、あえて単純化すると次のようになります。
・「癒着が強そう/既往が多い/初回ポートが怖い」→ オプティカルやオープン法の検討(施設プロトコルに従う)
参考)Aesculap Single use trocar sol…
・「腹壁が厚い/筋層が硬い」→ 刺入抵抗の一貫性(拡張タイプ、リブ形状、長さ選択)を重視
・「ポートの抜けやすさが問題になりがち」→ バルーン等の固定機構を候補に入れる
“意外に盲点”になりやすいのは、トロカーの良し悪しを「刺さりやすいか」だけで評価すると、刺入がスムーズ=安全と錯覚しやすい点です。
刺入が滑らかでも、テンティング(腹膜の持ち上がり)や角度のクセがあると、臓器損傷リスクは別軸で残るため、視認・角度・固定の3点で評価軸を分けるとチーム内の会話が整います。
参考)https://www.medicalexpo.com/ja/seizomoto-iryo/kiwado-6591.html
腹腔鏡用トロカー刺入時の血管損傷と腸管損傷の合併症
腹腔鏡下手術の合併症として血管損傷は頻度が高いとされ、報告の中には「血管損傷が合併症の約50%を占める」とする記載もあり、さらにその発生タイミングが気腹針刺入や第1トロカー刺入に偏る点が示されています。
また、施設の説明資料でも「トロッカー挿入時の血管損傷や腸管損傷」などが腹腔鏡特有の合併症として挙げられており、患者説明のレベルでも重要リスクとして扱われています。
実務での予防は、“高尚な工夫”よりも「同じ手順を同じ順番でやる」ほうが効きます。
・刺入方向の基準を、体表ランドマークだけでなく、体型(腹壁厚)と既往(癒着)で変える
参考)https://www.fukushima-med-jrc.jp/use/sinryo/sanka/pdf/naisikyou.pdf
・「抵抗が変わった瞬間」をイベントとして言語化し、助手も含めて止まれる文化にする(刺入はチーム作業)
参考)https://redcross.repo.nii.ac.jp/record/3359/files/trchmj1101_28-32.pdf
・透明カニューラ等の“見える化”は、上級者のためというより、チームの共通認識を作る道具として扱う
あまり知られていない観点として、合併症は「起きたか/起きないか」だけでなく「起きても軽微に留める」設計・運用で差が出ます。
たとえば視認性の高い構造を使って早期に異常を察知できれば、同じ損傷でも拡大を防ぎやすく、結果的に開腹移行や追加処置の負担を減らせる可能性があります。
腹腔鏡用トロカーとポートサイトヘルニアと筋膜閉鎖
ポートサイトヘルニアは、10mm以上のポート孔で起こりやすく、筋膜の不十分な閉鎖が原因になり得るため「10mm以上のポート孔は筋膜の閉鎖を極力行うことが必要」とする報告があります。
また、ヘルニア関連の議論では、患者因子(肥満、糖尿病、高齢など)と術中要因(トロッカー操作など)の双方がリスク要因になり得ることが述べられています。
医療従事者向けに実装しやすいチェックポイントを、術者の“感覚”から“手順”へ落とすと次の通りです。
・10mm以上:原則、筋膜閉鎖を前提にポート位置と角度を決める(閉鎖しにくい位置を避ける)
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcs/33/6/33_6_920/_pdf
・筋膜が挫滅・開大した:径が小さくても「閉鎖する理由」が発生したと扱う(サイズではなく損傷で判断)
・急激な脱気:ポート孔への牽引・陰圧変化の“きっかけ”になる可能性があるため、ルーチンの脱気手順を統一する
意外と現場で効くのは、「筋膜閉鎖の技術」そのものよりも、「閉鎖の必要性が高いポートを最初から減らす」発想です。
参考)https://jhs.gr.jp/Journal_PDF/HerniaJournal_vol10-3.pdf
ヘルニア学会誌の文脈でも、ポート孔を減らすことがリスク低減に有用である旨が述べられており、器械選定や手技設計の段階で“孔を作らない”方向に寄せるのは合理的です。
腹腔鏡用トロカーのバルーンと固定と気密性
腹腔鏡用トロカーは「刺入」だけでなく「固定」と「気密性(気腹維持)」が術中ストレスを左右します。
製品紹介レベルでも、バルーントロカーについて「固定力/気密性が高い」といった特徴が明示されており、操作中の抜け・ガス漏れを抑える方向性が読み取れます。
固定が安定すると、結果的に合併症の別ルートも抑えられます。
・ポートが動く→器具の支点がズレる→腹壁損傷や疼痛の原因が増える、という連鎖を止めやすい
・ガス漏れが減る→術野の安定→焦りによる粗い操作を減らしやすい(人的要因への介入)
“あまり語られにくい”実務論点は、固定力が高いほど良いわけではない点です。
固定が強すぎると、抜去時の抵抗や、ポート周囲の局所負担が増えうるため、術式(器具の出し入れ頻度)と体型(腹壁厚)で最適点を探す発想が安全運用につながります。
腹腔鏡用トロカーの独自視点:透明カニューラの教育とインシデント予防
透明カニューラや視認性向上の設計は「術者のための機能」と捉えられがちですが、教育・安全文化の観点では“チームで同じものを見る”ための装置として価値があります。
製品情報でも透明カニューラや良好な視認性が強調されており、視野共有のしやすさは、手技の標準化や新人教育の質に直結しやすい要素です。
独自視点として提案したいのは、トロカー関連インシデントを「器械の問題」か「技術の問題」かに分けず、観察可能な行動指標で管理する方法です。
たとえば次のように、誰でも監査できる“見えるプロセス”に落とすと、属人化が減ります。
・刺入前:予定刺入角度と停止条件(抵抗変化・患者体動など)を声出しで共有
・刺入中:助手が「腹壁のテンティング」「ポートの回旋」「出血の兆候」を観察し、異常時に即止める役割を明確化
・刺入後:ガス漏れ・固定状態・皮下気腫の兆候をチェック項目化し、術式ごとの“いつ確認するか”を決める
この枠組みだと、ブレードレス・バルーン・オプティカルといった機種差を、単なる好みではなく「どの観察点が増える/減るか」で議論できます。
結果として、ヒヤリハットの共有が「刺入が怖い」などの感想戦で終わらず、「次回は停止条件の声出しを統一する」など再現性のある改善に変わります。
参考:腹腔鏡下手術合併症の頻度・血管損傷が多い点、発生タイミング(気腹針・第1トロカー)に関する記載
https://redcross.repo.nii.ac.jp/record/3359/files/trchmj1101_28-32.pdf
参考:透明カニューラ、視認性、リブ付きカニューラなどの設計思想(製品情報として確認できる)
参考:ブレードレスが「組織繊維に沿って分離する」思想、光学式トロカーの説明など、種類整理の手掛かり
https://www.medicalexpo.com/ja/seizomoto-iryo/kiwado-6591.html

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