不育症検査と費用の実態
不育症検査の保険適用範囲と実際の費用負担
不育症の検査は2022年4月以降、有効性や安全性が確立した検査項目について保険適用の対象となっています。保険適用される主な検査には、子宮形態検査(3D超音波検査)、抗リン脂質抗体検査、内分泌・代謝系検査、血液凝固系検査が含まれ、3割負担で約9,500円から11,000円程度の費用がかかります。
参考)初診の流れ・料金
ただし、保険適用検査であっても、検査項目の組み合わせによっては同時算定ができない場合があり、その場合は自費診療となるケースがあるんです。例えば抗リン脂質抗体や血液凝固系検査の一部では、保険適用はあっても組み合わせによって19,800円から85,000円の自費検査になることがあります。平均的な項目数を検査した場合、自費検査の合計は約46,000円から46,500円になると報告されています。
参考)https://www.takeshita-lc.com/inspection/
専門クリニックでは包括的な検査パッケージを提供しており、着床不全スクリーニングや不育症スクリーニングとして52,400円程度で実施している施設もあります。保険適用と自費診療を組み合わせることで、患者さんの状況に応じた検査計画を立てることができるようになっているんですよ。
参考)https://www.torch.clinic/contents/1672
不育症検査の主要検査項目別の費用詳細
検査項目 | 保険適用時の費用 | 自費診療時の費用 | 検査内容 |
---|---|---|---|
子宮形態検査(超音波) | 約1,590円 | 約1,650円 | 中隔子宮などの形態異常を確認 |
子宮卵管造影検査 | 約6,000〜8,000円 | 約33,000円 | 子宮や卵管の形態を詳細に評価 |
子宮鏡検査 | 約3,000円 | 約11,000円 | 子宮内腔を直接観察 |
染色体検査(Gバンド法) | 約9,500円 | 約29,700円 | 夫婦の染色体構造異常を確認 |
抗リン脂質抗体検査 | 保険適用項目あり | 18,100円(保険未収載項目) | 血栓症リスク因子の評価 |
内分泌検査(1項目) | 約2,000円 | 約1,770円〜 | 甲状腺機能や血糖値の測定 |
子宮形態検査では、中隔子宮が不育症に最も関連が深く、流早産のリスクが2.8倍以上高まると言われています。超音波検査や子宮卵管造影検査、子宮鏡検査によって子宮形態異常の有無を確認し、必要に応じて子宮鏡下中隔切除術などの治療につなげることができるんです。
参考)不育症
染色体検査は夫婦で受けることが多く、合計で約2万円以上の費用がかかります。夫婦染色体検査では均衡型転座(相互転座とロバートソン型転座)が最も多く見られ、頻度は約3.7%から4.6%と報告されています。染色体構造異常があっても、不育症外来を受診したカップルの生児獲得率は一般のカップルと変わらないことが知られており、流産を繰り返しても最終的には子供を持てる確率は一般の方と同じなんですよ。
参考)不育症のリスク因子/不育症研究-不育症治療に関する再評価と新…
不育症のリスク因子に関する詳細情報(厚生労働研究班データ)
不育症検査の助成金制度と地域差の実態
不育症検査費用の助成金制度は、都道府県や市区町村によって内容が大きく異なります。国の方針として、現在研究段階にある不育症検査のうち、保険適用を見据え先進医療として実施されるものを対象に、検査に要する費用の一部を助成する制度が設けられています。
主要都道府県の助成金制度を見ると、北海道では10万円、青森県・岩手県・宮城県では6万円を上限とした助成が実施されています。東京都では検査開始時点での妻の年齢が43歳未満であり、不育症と診断された夫婦に対して、5万円を上限として検査費用を助成しています。神奈川県や新潟県では先進医療に指定された不育症検査費用の10分の7(千円未満切捨て)で、上限6万円を助成する制度があるんです。
参考)【助成金】不育症検査費用実施自治体(2025年10月)
地域によっては不妊検査と不育症検査の両方に助成を行っているケースもあります。例えば羽生市では、不妊検査開始時の妻の年齢が43歳未満の場合、35歳未満で上限3万円、35歳以上43歳未満で上限2万円の助成があり、不育症検査にも同様の助成が受けられます。助成回数は不妊検査・不育症検査とも夫婦1組につきそれぞれ1回までとなっており、申請期限は検査終了日から当該年度内(3月31日まで)です。
不育症リスク因子別の検査頻度とエビデンス
厚生労働研究班による日本のデータでは、不育症のリスク因子別頻度が明確になっています。抗リン脂質抗体陽性が10.2%と最も高く、次いで子宮形態異常が7.8%、プロテインS欠乏症が7.4%、第XII因子欠乏症が7.2%、甲状腺機能異常が6.8%、夫婦染色体異常が4.6%の順となっています。
抗リン脂質抗体症候群では、胎盤の血栓症が血流障害を起こすため、低用量アスピリンとヘパリン併用療法が標準的な治療となります。血液凝固因子異常として、プロテインC活性、プロテインS活性、第XII因子活性などの検査が実施され、頻度は合計で約4.3%から7.6%と報告されているんです。
近年注目されているのがネオセルフ抗体検査で、不育症の方の約23%、リスク因子不明の不育症の方の約20%にネオセルフ抗体が陽性であることがわかりました。特に抗リン脂質抗体検査が陰性であった女性でネオセルフ抗体の陽性が多く認められることから、不育症の新たなリスク因子として期待されています。ネオセルフ抗体検査の費用は33,000円(税別)で保険適用外の自費診療となり、検査結果が出るまで約2週間程度かかります。
不育症検査の詳細な内容と費用(専門クリニックの解説)
不育症検査における医療従事者の留意点と患者指導
医療従事者として不育症検査を実施する際には、いくつかの重要な留意点があります。まず検査のタイミングですが、日本不育症学会による現在の定義では「流産あるいは死産が2回以上ある状態」とされており、生児の有無は問わず、流産または死産が連続していなくてもよいとされています。
染色体検査については、検査を行う前に十分な遺伝カウンセリングを実施することが必須なんです。染色体異常は遺伝することがあり治療することはできないため、検査のメリット(流産リスクや流産率が判明する)とデメリット(精神的苦痛、対処法がないという悩み)を患者さんに十分理解していただく必要があります。
検査結果が出るまでの期間も患者指導で重要なポイントです。内分泌検査や抗リン脂質抗体検査は約1週間、夫婦染色体検査では約3週間かかります。また、健康診断などで1年以内の検査結果がある場合は、初診時に持参していただくことで検査項目を検討できるため、無駄な検査を避けられます。
参考)目黒区自由が丘|峯レディースクリニック|不育症のリスク因子と…
検査費用についても、保険適用か自費診療かは各医療機関で設定が異なるため、患者さんには事前に明確な説明を行うことが大切です。特に保険適用検査でも組み合わせによって同時算定できない項目があることを説明し、患者さんの理解と納得を得た上で検査計画を立てることが求められます。
不育症専門クリニックでの初診の流れと料金詳細