フィジオ140の効果と副作用:医療従事者が知るべき輸液療法の基礎知識

フィジオ140の効果と副作用

フィジオ140輸液の基本情報
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主な効果

循環血液量減少時の細胞外液補給と代謝性アシドーシスの補正

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主な副作用

ST低下、不整脈、大量投与時の浮腫リスク

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特徴的な組成

1%ブドウ糖配合とマグネシウム含有による生理的組成

フィジオ140の基本的な効果と作用機序

フィジオ140輸液は、細胞外液の補給・補正を目的とした輸液製剤です。主な効果として、循環血液量減少時及び組織間液減少時における細胞外液の補給・細胞外液の補正、そして代謝性アシドーシスの補正が挙げられます。

本製剤の特徴的な組成は以下の通りです。

  • 電解質組成:ナトリウム140mEq/L、カリウム4mEq/L、マグネシウム2mEq/L、カルシウム3mEq/L
  • 糖質:ブドウ糖1%(2.5g/250mL)配合
  • アルカリ化剤:酢酸ナトリウム25mEq/L配合

従来のハルトマン液と比較して、フィジオ140はより細胞外液組成に近似した電解質組成を持ち、特にマグネシウムを含有している点が特徴的です。これにより、急速注入時にみられるナトリウムやマグネシウムの血中濃度低下を防ぐことができます。

1%のブドウ糖配合により、生体内脂肪の異化亢進を抑制しつつ、5%糖質製剤で問題となる血糖の異常上昇や尿糖排泄を回避できる設計となっています。

フィジオ140の副作用と安全性プロファイル

フィジオ140輸液の副作用発現頻度は1.4%(2/142例)と比較的低く、主な副作用は以下の通りです。

循環器系副作用

  • ST低下:0.7%(1/142例)
  • 不整脈:0.7%(1/142例)
  • 一過性血圧低下
  • 心電図R波電位減高

大量・急速投与時の副作用

  • 脳浮腫(頻度不明)
  • 肺水腫(頻度不明)
  • 末梢浮腫(頻度不明)

その他の副作用

  • 呼吸数増加(頻度不明)

これらの副作用は、主に大量・急速投与時に発現するリスクが高まります。特に脳浮腫、肺水腫、末梢浮腫は維持液でみられる典型的な副作用として知られており、投与速度や投与量の適切な管理が重要です。

フィジオ140の禁忌と使用上の注意事項

フィジオ140輸液には以下の禁忌があります。

絶対禁忌

これらの患者では、高マグネシウム血症が悪化する又は誘発されるおそれがあるため使用は禁止されています。

慎重投与が必要な患者

  • 糖尿病患者:血糖値上昇により症状悪化のおそれ
  • 心不全患者:循環血液量増加により症状悪化のおそれ
  • 高張性脱水症患者:電解質含有により症状悪化のおそれ
  • 閉塞性尿路疾患患者:水分・電解質排泄障害により症状悪化のおそれ
  • 腎機能障害患者:水分・電解質の過剰投与に陥りやすい

特別な配慮が必要な患者群

  • 妊婦・授乳婦:治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与
  • 小児:有効性・安全性を指標とした臨床試験未実施
  • 高齢者:投与速度を緩徐にし、減量など注意が必要

フィジオ140の適切な投与方法と臨床効果

フィジオ140輸液の標準的な投与方法は以下の通りです。

投与量・投与速度

  • 通常成人:1回500~1000mLを点滴静注
  • 投与速度:通常成人1時間当たり15mL/kg体重以下
  • 年齢、症状、体重により適宜増減

臨床試験での効果

国内第III相試験(中等度手術侵襲患者311例対象)において、有効性評価で「有効」以上が81.9%(113/138例)という良好な結果が得られています。

投与時の注意点

  • 本剤はエネルギー補給を目的とした薬剤ではない
  • 循環動態等が安定した場合は漫然と投与せず、維持輸液や高カロリー輸液等への切り替えを検討
  • 投与中は循環動態、尿量、血糖値、血清電解質の定期的な監視が必要

他製剤との比較における優位性

急性大量出血モデルでの検討では、5%ブドウ糖加乳酸リンゲル液と比較して、多量の尿中グルコース排泄がほとんどみられず、より生理的な代謝状態を維持できることが示されています。

フィジオ140の臨床現場での実践的活用法

フィジオ140輸液の臨床現場での効果的な活用には、以下の実践的なポイントが重要です。

手術周術期での活用

中等度手術侵襲(胃亜全摘術、胆嚢摘出術等)において、静脈路確保後1時間目までは15mL/kg/hr、以後手術終了までは10mL/kg/hrで投与することで、良好な循環動態維持効果が確認されています。

代謝への影響

術前絶食により低下した血漿グルコースを正常レベルに回復させ、肝臓グリコーゲン低下を抑制する効果があります。また、血漿中の遊離脂肪酸及び総ケトン体を対照群と比較して有意に低値で推移させることができます。

モニタリングのポイント

  • 循環動態の維持状況
  • 尿量の維持
  • 血糖値のコントロール状況
  • 糖質の利用状況
  • 血清電解質の維持状況

これらの指標を総合的に評価することで、適切な輸液療法の実施が可能となります。

投与中止のタイミング

患者の循環動態等が安定した場合には、漫然と投与を継続せず、患者の状態を考慮して投与中止を検討し、必要に応じて維持輸液や高カロリー輸液等への切り替えを行うことが重要です。

フィジオ140輸液に関する詳細な添付文書情報については、以下のリンクで確認できます。

大塚製薬工場の公式添付文書情報

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057544

医薬品の安全性情報については、以下のリンクで最新情報を確認できます。

ケアネットの薬剤情報データベース

https://www.carenet.com/drugs/category/blood-substitutes/3319561A1036