フィブラート系脂質異常症治療薬の作用機序と副作用、使い分け

フィブラート系脂質異常症治療薬の作用機序と副作用

フィブラート系は腎機能低下患者に禁忌ですが実は血清クレアチニン値2.5mg/dL未満なら慎重投与可能です。

この記事の3つのポイント
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PPARα活性化による脂質代謝改善

フィブラート系薬剤は核内受容体PPARαを活性化し、トリグリセリドを20〜46%低下させHDLコレステロールを10〜20%上昇させる効果を持ちます

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腎機能障害と横紋筋融解症のリスク

血清クレアチニン値2.5mg/dL以上または腎機能クリアランス40mL/min未満では禁忌となり、スタチンとの併用時は横紋筋融解症リスクが3.8倍上昇します

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ペマフィブラートの登場と治療の進化

2018年発売の選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)ペマフィブラートは胆汁排泄型で腎機能への影響が少なく、従来薬の副作用を大幅に軽減しています

フィブラート系脂質異常症治療薬の作用機序とPPARα活性化

フィブラート系薬剤は、核内受容体であるPPARα(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α)に結合し、脂質代謝に関わる遺伝子の発現を調節することで効果を発揮します。この作用により、肝臓における中性脂肪(トリグリセリド)とコレステロールの合成が抑制され、同時にリポ蛋白の代謝が促進されます。

具体的には、PPARαが活性化されることで、リポ蛋白リパーゼ(LPL)という酵素の産生が増加します。このLPLは血液中のVLDL(超低比重リポ蛋白)やカイロミクロンに含まれる中性脂肪を分解する働きがあり、結果として血中の中性脂肪値が低下するのです。

臨床試験データによると、ベザフィブラートは中性脂肪を約46%低下させ、HDLコレステロールを約22%上昇させる効果が確認されています。フェノフィブラートでは中性脂肪が約42%低下し、HDLコレステロールは約10〜15%上昇します。これは他の脂質異常症治療薬と比較しても、中性脂肪低下作用において特に優れた数値といえます。

つまり中性脂肪に特化した薬です。

さらに、フィブラート系薬剤にはレムナント様リポ蛋白(RLP)を減少させる効果もあります。レムナントは中性脂肪を多く含むリポ蛋白の代謝過程で生じる中間産物で、動脈硬化を促進する物質として知られています。フィブラート系はこのレムナントの代謝を促進することで、食後高脂血症の改善にも寄与します。

三重メディカルバレー構想ネットワーク|新規の高脂血症治療薬「ペマフィブラート」について詳しい作用機序と臨床データが解説されています

フィブラート系脂質異常症治療薬の副作用と横紋筋融解症リスク

フィブラート系薬剤で最も注意すべき重大な副作用は、横紋筋融解症です。これは筋肉細胞が破壊され、筋肉成分であるミオグロビンが血中に流出する病態で、急性腎障害を引き起こす可能性があります。横紋筋融解症の発生頻度は一般的に10万人に2〜3人程度とされていますが、腎機能障害がある患者ではそのリスクが大幅に上昇します。

実際に、フィブラート系薬剤で報告されている横紋筋融解症の症例の多くは、腎機能障害を有する患者でした。特にスタチン系薬剤と併用した場合、横紋筋融解症のリスクは単剤使用時の3.8倍に上昇するというデータがあります。このリスクは患者の生命に関わる重大な問題であるため、医療従事者は投与前に必ず腎機能をチェックする必要があります。

自覚症状が重要な指標です。

横紋筋融解症の初期症状としては、筋肉痛、脱力感、CK(クレアチンキナーゼ)値の上昇、血中・尿中ミオグロビンの上昇、血清クレアチニンの上昇などが挙げられます。患者にこれらの症状が出現した場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診するよう指導することが不可欠です。

肝機能障害もフィブラート系薬剤の重要な副作用の一つです。特にフェノフィブラートでは肝機能検査値異常の発現頻度が約25%に達するという報告があります。ただし、これらの多くは一過性であり、投与継続中に自然軽快することが多いとされています。それでも定期的なAST、ALTなどの肝機能検査は必須です。

その他の副作用としては、胆石形成のリスクがあります。フィブラート系薬剤は胆汁中のコレステロール飽和度を上昇させるため、胆のう疾患のある患者には投与禁忌となっています。また、消化器症状(悪心、嘔吐、下痢など)、発疹、頭痛なども報告されていますが、これらは比較的軽度の副作用として位置づけられています。

フィブラート系脂質異常症治療薬の腎機能障害患者への投与基準

フィブラート系薬剤において、腎機能障害は最も重要な投与禁忌の一つです。従来のフィブラート系薬剤(ベザフィブラート、フェノフィブラート)は主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している患者では血中濃度が上昇し、副作用のリスクが増大します。

具体的な投与禁忌基準は薬剤によって若干異なります。ベザフィブラートでは血清クレアチニン値が2.0mg/dL以上の患者、フェノフィブラートでは血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上またはクレアチニンクリアランスが40mL/min未満の患者に対して投与禁忌となっています。この数値は、健常成人の血清クレアチニン値(男性0.6〜1.2mg/dL、女性0.4〜0.9mg/dL)の約2〜3倍に相当します。

腎機能の数値確認が必須です。

人工透析患者(腹膜透析を含む)や腎不全などの重篤な腎疾患のある患者には、すべてのフィブラート系薬剤が絶対禁忌です。これらの患者では薬剤の排泄が著しく低下し、血中濃度が危険なレベルまで上昇する可能性があるためです。

一方、軽度から中等度の腎機能障害患者(血清クレアチニン値1.5〜2.0mg/dL程度)に対しては、慎重投与の対象となります。この場合、定期的な腎機能検査(血清クレアチニン、eGFR測定)を実施しながら、患者の自覚症状を注意深くモニタリングすることが求められます。投与開始後は、少なくとも月1回程度の頻度で腎機能を確認し、悪化傾向が見られた場合は直ちに投与を中止する判断が必要です。

新規薬剤のペマフィブラートは、従来のフィブラート系とは異なり胆汁排泄型であるため、腎機能低下例でも血中濃度の増加が少ないという特徴があります。しかし、それでも血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の患者には禁忌とされており、腎機能の確認は依然として重要です。

厚生労働省|ペマフィブラートの使用上の注意改訂について、腎機能障害患者への投与基準が詳しく記載されています

フィブラート系とスタチン系薬剤の併用禁忌解除の経緯

2018年10月16日、日本の医薬品行政において重要な変更がありました。厚生労働省は、腎機能に異常が認められる患者に対するスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用について、添付文書上の「原則禁忌」から削除するよう通知したのです。これは脂質異常症治療において画期的な転換点となりました。

それ以前は、スタチンとフィブラートの併用は横紋筋融解症のリスクが高まるとして、腎機能に異常がある患者では原則禁忌とされていました。しかし、欧米諸国では原則禁忌の制限なく両剤が長年併用されており、適切な管理下では安全に使用できることが実臨床で示されていました。

併用可能になった背景があります。

日本でも国内承認薬、国内承認用量内において、腎機能に関する臨床検査値異常が認められる患者でのスタチンとフィブラートの併用による横紋筋融解症の発現頻度を調査した結果、適切な患者選択と管理を行えば併用は可能であると判断されました。ただし、併用禁忌が完全に解除されたわけではなく、「重要な基本的注意」の項目に移行され、引き続き注意喚起は継続されています。

併用時には、定期的な腎機能検査の実施と、自覚症状(筋肉痛、脱力感)の確認、CK(CPK)上昇、血中・尿中ミオグロビン上昇、血清クレアチニン上昇などのモニタリングが必須となります。医療従事者は、併用開始前に患者の腎機能を十分に評価し、併用のリスクとベネフィットを慎重に判断する必要があります。

この変更により、高LDLコレステロール血症と高トリグリセリド血症を合併する患者、いわゆる混合型脂質異常症の患者に対して、より効果的な治療戦略が取れるようになりました。特に、糖尿病を合併する脂質異常症患者では、スタチンとフィブラートの併用が心血管イベント抑制に有効である可能性が示唆されており、今後の臨床応用が期待されています。

糖尿病リソースガイド|スタチンとフィブラートの併用禁忌解除に関する詳細な経緯と背景が解説されています

ペマフィブラートと従来フィブラート系薬剤の使い分けと選択基準

2018年6月に日本で発売されたペマフィブラート(パルモディア)は、世界初の選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)として、従来のフィブラート系薬剤とは異なる特性を持っています。この新規薬剤の登場により、フィブラート系薬剤の使い分けはより複雑かつ精緻になりました。

最も大きな違いは排泄経路です。従来のベザフィブラートやフェノフィブラートは腎排泄型(70〜90%が腎臓から排泄)であるのに対し、ペマフィブラートは胆汁排泄型(90%以上が胆汁から排泄)です。この違いにより、ペマフィブラートは腎機能低下例でも血中濃度の上昇が少なく、より安全に使用できます。

腎機能で薬剤を選びます。

副作用の発現頻度も大きく異なります。従来のフェノフィブラートでは肝機能検査値異常が約25%、CK上昇が約8%で報告されていますが、ペマフィブラートでは重篤な副作用が0.3%程度と大幅に低下しています。このため、肝機能や筋肉への影響を懸念する症例では、ペマフィブラートが一選択となることが多くなっています。

効果の面では、いずれの薬剤も中性脂肪を20〜46%低下させ、HDLコレステロールを10〜22%上昇させる効果があります。ただし、ペマフィブラートはより選択的にPPARαを活性化するため、食後高脂血症の改善、HDL機能の活性化、高感度CRPの低下、フィブリノーゲン低下などの多面的な効果が確認されています。

使い分けの実践的な基準としては、以下のような指針が考えられます。腎機能正常で使用経験が豊富な薬剤を希望する場合はベザフィブラートまたはフェノフィブラート、腎機能低下例(eGFR 40〜60mL/min/1.73m²程度)や高齢者にはペマフィブラート、スタチンとの併用を予定している場合もペマフィブラートが推奨されます。

ただし、ペマフィブラートは比較的新しい薬剤であるため、長期的な心血管イベント抑制効果については現在PROMINENT試験という大規模臨床試験で検証中です。従来のフィブラート系薬剤には長年の使用実績があり、特にベザフィブラートでは心血管イベント抑制効果が示されたBIP試験などのエビデンスが存在します。このような点も薬剤選択の際に考慮すべき要素となります。