フェルビナクの効果
フェルビナクは非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)に分類される外用薬で、フェンブフェンの活性代謝物として知られています。その効果は主にプロスタグランジン生合成阻害作用によるもので、モルモット肺から抽出したプロスタグランジン合成酵素のシクロオキシゲナーゼに対して阻害作用を示します(IC50=0.61μg/mL)。
参考)https://www.mikasaseiyaku.co.jp/wp/wp-content/uploads/FBT_IF.pdf
疼痛、急性炎症・慢性炎症に対して鎮痛・抗炎症作用を発揮し、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎(テニス肘等)、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛などに適応があります。皮膚から吸収され、体内でつくられるプロスタグランジンの合成を抑制することで、炎症に伴う腫れや痛みをやわらげます。
フェルビナクのプロスタグランジン阻害機序
フェルビナクの作用機序は、炎症カスケードの上流を標的とした効率的なものです。乳酸等の刺激により細胞膜からアラキドン酸が離れていくと、体内のシクロオキシゲナーゼという酵素と結合してプロスタグランジンが産生されます。プロスタグランジンは痛みを伝える神経に結合し、発痛物質(ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン等)の刺激を痛みに変換します。
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フェルビナクはシクロオキシゲナーゼの活性を阻害することで、プロスタグランジンの生成を防ぎ、結果として痛みによく効くのです。また、プロスタグランジンE1によるスナネズミ結腸の収縮に対しても抑制作用を示し、抗プロスタグランジン作用も持っています。
参考)https://www.mikasaseiyaku.co.jp/wp/wp-content/uploads/FBS_IF.pdf
フェルビナクの経皮吸収と薬物動態特性
フェルビナクは外用薬として優れた経皮吸収性を示します。健康成人男子への貼付試験では、Cmax 315±91 ng/mL、Tmax 11.8±0.9時間、半減期5.6±0.6時間、AUC 4,732±1,315 ng・hr/mLの薬物動態パラメータが報告されています。
参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2649731S2034
経皮吸収後は皮膚局所で高濃度を維持し、患部に直接作用することで効果的な鎮痛・抗炎症効果を発揮します。この局所作用により、内服薬と比較して全身への影響を最小限に抑えながら治療効果を得ることができます。テープ剤やパップ剤、スティック剤など様々な製剤形態があり、患者の状態や部位に応じて選択できます。
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フェルビナクの適応疾患と治療効果
フェルビナクは変形性関節症、筋・筋膜性腰痛症、肩関節周囲炎(五十肩)、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎(テニス肘等)、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛に使用されます。これらの疾患では、炎症性疼痛が主体となるため、フェルビナクのプロスタグランジン阻害作用が特に有効です。
参考)医療用医薬品 : フェルビナク (フェルビナクスチック軟膏3…
ラットを用いたカラゲニン足浮腫抑制試験、紫外線紅斑抑制試験及び炎症足圧刺激抑制試験において、無処置対照群及び基剤群に対し統計学的に有意な抗炎症及び鎮痛効果が認められています。臨床では対症療法として使用され、痛みの原因を取り除く効果はないものの、症状緩和には優れた効果を示します。
参考)http://www.rakool.co.jp/upload/1403596054interview.pdf
フェルビナクの副作用と使用上の注意点
フェルビナクの副作用として、皮膚に関するものが主に報告されています。0.1~1%未満の頻度でそう痒、皮膚炎、発赤が見られ、0.1%未満で接触皮膚炎、刺激感、水疱が発生する可能性があります。重大な副作用として、頻度不明でショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、血管浮腫、呼吸困難等)があらわれることがあります。
参考)https://www.mikasaseiyaku.co.jp/wp/wp-content/uploads/cec9569abb05e291d31a97bf788f088f.pdf
使用に際しては、本剤又は他のフェルビナク製剤に対して過敏症の既往歴がある患者、アスピリン喘息の患者への投与は禁忌です。また、眼及び粘膜、損傷皮膚、湿疹又は発疹の部位には使用できません。連続して2週間以上の使用は避け、症状が改善しない場合は医師に相談することが重要です。
参考)https://www.hisamitsu.co.jp/healthcare/products/pdf/055.pdf
フェルビナクの製剤特性と組織移行性
フェルビナクはテープ剤、パップ剤、スティック軟膏など多様な製剤形態で提供されています。テープ剤は薄く粘着力が強く伸縮性に優れる一方、パップ剤は厚みがあり水分を多く含む特徴があります。スティック軟膏は塗りやすく、べたつきが少ないため使い勝手が良いとされています。
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組織移行性については、皮膚から吸収されたフェルビナクが患部に深く浸透し、局所的に高濃度を維持することが知られています。この特性により、全身循環への移行を最小限に抑えながら、患部での治療効果を最大化できます。ナノ粒子化技術や透過促進剤の併用により、さらなる皮膚透過性の向上も研究されています。