嚥下困難加算がなくなると自家製剤加算

嚥下困難加算がなくなると自家製剤加算

この記事でわかること
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「嚥下困難加算 なくなる」の正体

廃止対象は薬局の「嚥下困難者用製剤加算」で、粉砕等の評価が自家製剤加算へ一本化された流れを整理します。

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算定が変わるポイント

どのケースで点数差が出やすいか、摘要欄・医師の了解・供給不足時の記載など、監査で見られやすい論点を具体化します。

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独自視点:嚥下と製剤設計の落とし穴

「飲みやすくする」だけでなく、徐放性・腸溶性・OD錠など薬物動態の変化リスクも踏まえ、チームでの安全設計につなげます。

嚥下困難加算がなくなる:廃止の対象と一本化

医療現場で検索される「嚥下困難加算 なくなる」は、多くの場合、薬局の調剤報酬にあった「嚥下困難者用製剤加算(80点)」が廃止されたことを指しています。

厚生労働省の資料では、薬剤調製行為の評価を整理する観点から「嚥下困難者用製剤加算を廃止」し、飲みやすくするための製剤上の調製の評価は「自家製剤加算での評価に一本化」すると明記されています。

同趣旨は改定解説資料(個別事項の整理資料)にも示されており、「嚥下困難者用製剤加算に係る評価を廃止」して「自家製剤加算における算定のみ」とする方針が確認できます。

ここで注意したいのは、同じ“嚥下”でも「摂食嚥下支援」や「摂食機能療法」など(病院・施設側の評価)と、薬局側の「嚥下困難者用製剤加算」は制度の軸が違う点です。

参考)摂食機能療法の注3に規定する施設基準 – 令和6…

本記事は、薬局実務で「粉砕・開封・簡易懸濁・剤形変更」を伴う調剤が、今後どのように評価・記録されるかにフォーカスします。

参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238903.pdf

嚥下困難加算がなくなる:自家製剤加算の算定ロジック

改定後は「嚥下困難だから80点を足す」という発想から、「何をどの範囲で調製したか」を自家製剤加算として構造的に捉える運用へ変わります。

自家製剤加算は、錠剤の粉砕などにより、薬価基準に収載されていない形に自家製剤として調剤した場合に算定する、という整理で紹介されています。

さらに改定のポイントとして、供給不足(出荷調整など)で同一剤形・同一規格の医薬品が必要量確保できないときも、条件付きで自家製剤加算の評価対象になりうる、という方向性が示されています。

実務で混乱しやすいのは「1調剤」の数え方です。たとえば同一の服用時点・服用日数のまとまりを1調剤として扱う前提で、日数が延びると自家製剤加算の積み上がり方が変わります。

参考)加算料(嚥下困難者用製剤加算)

そのため、患者側から見ると同じ「全部粉砕」でも、処方日数、Rpの分かれ方、頓服の有無で点数が大きく変わり得ます。

現場での説明責任(患者説明・医師照会・監査対応)を考えると、点数だけでなく「なぜその剤形変更が必要か」をカルテ・薬歴・疑義照会記録で言語化しておくことが重要になります。

嚥下困難加算がなくなる:外来服薬支援料2との使い分け

「飲みやすくする」という目的が同じでも、一包化中心の支援は外来服薬支援料2の枠組みで評価される場面があります。

外来服薬支援料2は、一定条件下での一包化(例:2剤以上、または1剤で3種類以上など)を、受付1回につき1回評価する形で整理されています。

一方で自家製剤加算は、粉砕や剤形加工など“製剤として形を変える”行為の評価であり、処方日数や調製の単位によって有利不利が変動しやすい点が特徴です。

実務上のコツは、「嚥下機能の課題=一包化」ではないと線引きすることです。

例えば、手指機能低下や認知機能低下で“服薬管理が難しい”ケースは一包化・服薬カレンダー等の文脈が中心になりやすい一方、嚥下障害が強いケースでは粉砕・簡易懸濁・剤形選択(OD錠・液剤等)そのものが主戦場になります。

そのため、薬剤師の記録としては「嚥下困難(誤嚥リスク、むせ、喉頭挙上低下など)に対する剤形工夫」なのか、「服薬アドヒアランス(飲み忘れ、管理困難)に対する一包化」なのかを、最初に分けて書くと監査耐性が上がります。

嚥下困難加算がなくなる:摘要欄・医師の了解・監査で見られる点

嚥下困難者用製剤加算の時代から一貫して重要なのは、剤形変更が“患者の服用困難”に対する合理的な対応であり、かつ医師の了解を得ていることです。

嚥下困難者用製剤加算は「嚥下障害等で市販剤形では服用困難な患者に対し、医師の了解を得た上で錠剤を砕く等の加工をした場合」に評価される、と説明されています。

評価が自家製剤加算に一本化された後も、行為の合理性と同意(了解)の証跡が薄いと、返戻・査定・指導のリスクが上がる点は変わりません。

また供給不足を理由に自家製剤加算を算定する場合、摘要欄への記載(不足した薬剤名、やむを得ない事情など)を求める整理が資料に含まれています。

この“摘要欄で説明できる状態”は、単にレセコン入力の話ではなく、薬局内で「不足の根拠(卸の回答、入荷見込み、代替不可理由)」を共有し、監査で再現できるようにする運用設計の話です。

とくに在宅や施設の一括処方では、「嚥下困難」と「供給不足」が同時に起きることがあり、理由が混ざると記録が曖昧になりやすいので、理由を並列で書くより“主理由+副理由”で整理すると伝わりやすくなります。

嚥下困難加算がなくなる:独自視点の安全設計(OD錠・腸溶性・簡易懸濁)

検索上位の多くは「廃止→一本化→点数計算」に寄りがちですが、嚥下困難の支援は本質的に“安全な経口投与設計”でもあります。

例えば腸溶性製剤や徐放性製剤は、粉砕・開封で薬物動態が変わり、効果減弱や副作用増加につながる可能性があるため、「飲める形にする」だけでなく「その形にしても同等性を担保できるか」を検討する必要があります。

実際に、腸溶性が失われないよう“軽く粉砕する”といった取り扱いの話や、粉砕不可で算定できないケースが具体例として解説されており、剤形変更は一律ではないことがわかります。

またOD錠(口腔内崩壊錠)は“飲み込みやすい”イメージがありますが、患者の口腔乾燥、唾液量低下、義歯の適合不良などがあると、口腔内で崩壊せず貼り付いて逆に苦痛になることもあります(現場感としては意外に多い落とし穴です)。

この場合、代替として液剤化、簡易懸濁、服用ゼリー使用、服薬姿勢の調整、口腔ケアの介入など、薬局単独ではなく多職種連携(看護・ST・歯科・栄養)に接続する視点が重要になります。

参考)【令和6年度報酬改定-新設】口腔連携強化加算の算定要件と留意…

制度上の加算がどう変わっても、「嚥下評価→リスク→剤形提案→モニタリング」という臨床プロセスを外さないことが、結果的に患者アウトカムと業務の質を両立させます。

参考)H004 摂食機能療法(1日につき)

また、嚥下支援は誤嚥性肺炎の予防に直結するため、薬剤の選択・剤形だけでなく、服薬手技(とろみ、嚥下タイミング、食直前後の調整)や口腔衛生(口腔内細菌叢のコントロール)まで含めて提案できる薬局は、紹介・連携の質が上がりやすい領域です。

点数改定を“収益の話だけ”で終わらせず、「嚥下困難の患者に安全に薬を届ける再設計」として運用を整えると、監査対応だけでなく、患者・施設からの信頼にもつながります。

有用:嚥下困難者用製剤加算の廃止と自家製剤加算への一本化(改定の根拠)

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238903.pdf

有用:嚥下困難者用製剤加算の廃止を含む、具体的な改定案の文章(「廃止して…自家製剤加算のみ」)

https://www.pt-ot-st.net/pdf/2024/kobetu/3-7-3.pdf