エンドトキシン吸着療法の適応と保険要件を正しく知る

エンドトキシン吸着療法の適応と保険算定要件

⚡ この記事の3ポイント
🔬

適応は敗血症だけじゃない

2024年11月から、既存治療が奏効しない特発性肺線維症(IPF)急性増悪が新たに保険適用に追加。従来の「敗血症=PMX」という認識はもはや古い。

📋

18歳以上と未満で要件が違う

成人はSIRS基準4項目のうち2項目以上が必須だが、18歳未満はエンドトキシン血症またはグラム陰性菌感染症の疑いのみで算定できる。

💴

実施は原則2回まで・算定は1日1回

保険上の実施回数は「2回まで」が原則。さらにJ041は「1日につき」2,000点であり、複数回施行しても1日1回のみの算定となる。

特発性肺線維症(IPF)は、エンドトキシン血症がなくてもPMXの保険適用対象になります。 blood-purification(https://www.blood-purification.toray/medical-personnel/ipf/)

エンドトキシン吸着療法の仕組みとトレミキシンの役割

エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)は、ポリミキシンBをポリスチレン繊維に固定したカラム「トレミキシン®」を使って、血液中のエンドトキシンを直接吸着除去する治療法です。 エンドトキシンはグラム陰性菌の外膜成分であり、敗血症性ショックにおいてサイトカインの過剰産生を引き起こす主要な引き金となります。 jaam(https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0131.html)

カラムのエンドトキシン除去能は11μg程度と推定されており、吸着後には血中エンドトキシン濃度が有意に低下するだけでなく、血圧・心拍出量・体温・酸素化の改善も報告されています。 施行時の血液流量は80〜120mL/分、施行時間は原則2時間が基本です。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/10891/)

これは速い処理量ですね。

治療の目的は、エンドトキシンを直接除去することで全身性炎症反応を抑制し、多臓器不全への進行を防ぐことにあります。 単に血液を「きれいにする」透析とは異なる機序であり、集中治療領域で独自の位置づけをもつ治療です。 jseptic(https://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_05.pdf)

jaam(https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0131.html)

kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/10891/)

kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/10891/)

項目 内容
カラム名 トレミキシン® (東レ)
吸着物質 エンドトキシン(LPS)
固定素材 ポリスチレン繊維にポリミキシンBを固定
エンドトキシン除去能 約11μg(推定)
血液流量 80〜120mL/分
施行時間 原則2時間

エンドトキシン吸着療法の適応疾患と保険算定の基本条件

保険算定(J041 吸着式血液浄化法)において、エンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法が認められるのは、以下のすべての条件を同時に満たす患者に限られます。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_1%2Fj041.html)

まず「ア」として、エンドトキシン血症が強く疑われる状態であること(①エンドトキシン測定値が陽性、②グラム陰性菌菌血症が確認または疑われる、③腹腔内・消化管穿孔など感染源がある、のいずれか)が必要です。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_1%2Fj041.html)

次に「イ」として、以下のSIRS様重症病態基準4項目のうち2項目以上を同時に満たすことが条件です。 ishiyaku.co(https://www.ishiyaku.co.jp/pickup/206720/pdf/206720_01.pdf)

  • 🌡️ 体温が38℃以上、または36℃未満
  • 💓 心拍数が90回/分以上
  • 🫁 呼吸数が20回/分以上、またはPaCO₂が32 torr未満
  • 🔬 白血球数が12,000/mm³超、4,000/mm³未満、または桿状核球10%以上

さらに「ウ」として、通常の治療(輸液・抗菌薬・昇圧薬など)に反応が不十分であることも求められます。 ishiyaku.co(https://www.ishiyaku.co.jp/pickup/206720/pdf/206720_01.pdf)

つまり「疑い」だけでは算定できないということですね。

診療報酬明細書の摘要欄には、上記「ア」の①〜③のどれに該当するか、具体的な医学的根拠を記載する必要があります。 記載漏れは査定の原因となるため、記録の正確性が算定を守ります。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_1%2Fj041.html)

エンドトキシン吸着療法の適応:18歳未満の小児・新生児の特例

成人(18歳以上)と小児(18歳未満)では、保険算定上の適応基準が明確に異なります。これが現場で見落とされやすい点です。

18歳未満の患者では、「エンドトキシン血症であるもの又はグラム陰性菌感染症が疑われるもの」という条件のみで算定が可能です。 成人で必須のSIRS基準2項目以上という縛りは、小児には適用されません。 jseptic(https://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_05_1.pdf)

小児はSIRS基準が違う、これが原則です。

ただし、小児・新生児には独自の重症病態判定基準があり、日本腎不全看護学会などが策定した「小児・新生児におけるエンドトキシン除去療法ガイドライン」に基づいて適応を判断します。 体重・年齢による生理的数値の違いを加味した表が参照されます。 jsnhd.or(http://jsnhd.or.jp/pdf/endotoxinguidline.pdf)

また、出血傾向のある患児や、PMX-DHP導入時にすでに頭蓋内出血を認めている患児は適応除外です。 小児での施行は成人以上に慎重なリスク評価が必要になります。 jsnhd.or(http://jsnhd.or.jp/pdf/endotoxinguidline.pdf)

参考:日本腎不全看護学会による小児・新生児エンドトキシン除去療法ガイドライン(適応除外基準など詳細が掲載)

小児・新生児におけるエンドトキシン除去療法ガイドライン(PDF)

エンドトキシン吸着療法の適応拡大:特発性肺線維症(IPF)急性増悪への対応

2023年12月、トレミキシンは「既存治療が奏効しない特発性肺線維症(IPF)の急性増悪」に対して薬事承認(条件付き)を取得しました。 さらに2024年11月1日付で保険適用となり、現場での使用が公式に認められています。 jrs.or(https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/20241115_PMX-IPF.pdf)

これは使えそうです。

この適応追加は「医療機器等条件付き承認制度」を活用したものであり、一定症例数が集積されるまでの間は全例を対象とした使用成績調査(前向き)が承認条件として課されています。 IPF急性増悪症例でトレミキシンを使用する場合、調査への参加・症例登録が必須です。 jrs.or(https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/20241115_PMX-IPF.pdf)

先進医療Bとして2014年から検討が進められてきたこの治療は、PMXが持つエンドトキシン吸着以外の抗炎症メカニズム(ポリミキシンBによる直接的な炎症抑制作用)が注目された結果として承認に至りました。 従来の「PMX=敗血症」という認識を更新する必要があります。 pmda.go(https://www.pmda.go.jp/medical_devices/2024/M20240118001/480220000_20500BZZ00926_A100_1.pdf)

適応追加に伴う保険算定要件は「既存治療が奏効しない」ことが必須条件です。 ステロイド等の標準治療が無効な症例に限られるため、適応判断の根拠を明確に記録しておくことが求められます。 gemmed.ghc-j(https://gemmed.ghc-j.com/?p=63579)

参考:日本呼吸器学会による特発性肺線維症急性増悪に対するトレミキシン適正使用指針(2024年11月版)

特発性肺線維症急性増悪治療におけるトレミキシン適正使用指針(日本呼吸器学会・PDF)

参考:東レによるトレミキシンIPF適応追加の公式情報ページ(保険適用日・使用成績調査の概要が確認できる)

トレミキシン IPF急性増悪適応追加に関する情報(東レ)

エンドトキシン吸着療法の実施回数・算定点数と現場での注意点

保険算定上、エンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法の実施回数は「2回まで」が原則です。 2回を超えて実施する医学的必要性がある場合は、算定できないリスクがあるため、事前に確認が必要です。 apheresis-jp(https://www.apheresis-jp.org/download?file_id=238372)

算定点数はJ041 吸着式血液浄化法として1日につき2,000点です。 「1日につき」という表現に注意が必要で、同一日に複数回施行しても算定は1回分のみとなります。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_1%2Fj041.html)

2,000点が上限、これが条件です。

さらに、夜間に開始して翌日の午前0時以降に終了した場合も「1日として算定する」というルールがあります。 深夜帯をまたぐケースでは日付跨ぎによる誤算定が起きやすいため、施行開始・終了時刻の記録管理が重要です。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_1%2Fj041.html)

診療報酬明細書には、摘要欄への適応根拠の記載が必須です。 ①〜③のいずれに該当するかを具体的に記述していない場合、査定される可能性があります。電子カルテへの記録と、レセプト摘要欄への転記を一体的に管理する運用フローを施設内で整備しておくことが現実的な対策です。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_1%2Fj041.html)

参考:日本集中治療医学会によるPMX-DHPの算定要件解説資料(SIRS基準・摘要欄記載ポイントが詳しい)

PMX-DHP 保険算定・適応要件(日本集中治療医学会・PDF)

参考:東レ・メディカルによる保険適用・算定要件の最新情報(J041算定ルール・年齢別要件)

PMXカタログ 保険算定要件(東レ・メディカル・PDF)