エコリシン眼軟膏 犬 塗り方の実践ポイント
エコリシン眼軟膏 犬 塗り方の基本手順と用量の考え方
エコリシン眼軟膏はコリスチンとフラジオマイシンを含む複合抗菌薬で、ブドウ球菌などグラム陽性菌から腸内細菌科のグラム陰性菌まで幅広くカバーする眼科用軟膏として人体用に販売されています。獣医領域では結膜炎や角膜表在性潰瘍など細菌感染が疑われる犬の眼疾患に適応外使用されることがあり、局所で高濃度の抗菌作用を保てる点が利点です。
診療現場での塗布量は「1眼あたりリボン状1〜2cm」など目安で伝えられることが多いものの、小型犬では1〜2mm程度から開始し、症状と反応をみて調整するのが安全です。用量設定の際は、犬の体格だけでなく角膜病変の広がり、眼脂量、流涙の程度などで薬剤の滞留性が大きく変わる点も考慮する必要があります。
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実際の塗布手順は、以下のような流れに整理して飼い主へ説明すると理解されやすくなります。
参考)犬の眼のケア
- 手洗い:石けんと流水で30秒程度かけて手指・爪を洗浄し、清潔なタオルでしっかり乾燥させる。
- 眼周囲清拭:温湯で湿らせたコットンやガーゼで、目やに・汚れを内眼角から外側へ向けて優しく拭き取る。
- チューブ準備:キャップを外し、先端が被毛や指、眼球に触れていないことを確認する。
- 塗布位置の確認:下眼瞼を軽く引き、結膜嚢または瞼縁に45度前後の角度でチューブを構える。
- 軟膏塗布:チューブ先を眼球に触れさせないように注意しながら、下眼瞼の縁に細くリボン状に絞り出す。
- 薬剤の分布:上下眼瞼をそっと閉じて軽くマッサージし、その後まばたきを数回させて眼表面全体へ行き渡らせる。
チューブ先端が角膜に触れると角膜上皮損傷や二次感染のリスクが高まるため、「触れた場合は先端をふき取り、可能であれば別チューブに交換する」というルールを院内で統一しておくと安全です。また、複数の眼科用薬を併用する際は、点眼薬→5〜10分後に眼軟膏の順番にすることで、点眼薬の希釈を避けつつ軟膏の滞留性も確保できます。
参考)猫の眼のケア
エコリシン眼軟膏 犬 塗り方と保定のコツ(1人・2人での実践テクニック)
犬に眼軟膏を塗る際に最もトラブルが起こりやすいのが保定であり、診察室では落ち着いていても自宅では急に嫌がるケースが少なくありません。保定が不十分だと、チューブ先端が角膜を傷つけたり、犬が頭を振って軟膏が周囲に飛散したりするため、塗り方と同じくらい保定の説明が重要になります。
動画で推奨されている方法のうち、2人で行う塗り方は恐怖心の強い犬に適しており、1人が犬の体を後方から抱き込むように密着させ、もう1人が眼軟膏を塗布します。このとき、前方から覆いかぶさると犬が防御的になりやすいため、後方や斜め後ろから静かに近づくことを指導すると成功率が上がります。
1人で塗布する場合は、以下のポイントが有用です。
- 体幹の固定:犬を座位または伏臥位にし、施術者の体と前腕で胸〜体側を包み込むように支える。
- 顎の保持:片手で下顎を軽く持ち上げ、頭部を安定させる。顎を強く締めすぎると呼吸がしづらくなるため注意する。
- 上眼瞼の操作:同じ手の小指や薬指で上眼瞼をわずかに持ち上げ、視野を確保する。
- 塗布側の手:もう一方の手でチューブを持ち、下眼瞼の縁に軟膏を置く。
嫌がりの強い犬では、チューブから直接ではなく「指先塗布」が有効な場合もあります。消毒した指(または滅菌綿棒)に眼軟膏を少量とり、上まぶたや下まぶたの縁に薄く塗布したうえで、まばたきによって眼表面に広げる方法です。この方法はチューブ先端が角膜に触れるリスクを減らせる反面、指に付く分だけ用量が読みにくくなるため、あらかじめ「米粒大」「小豆大」など視覚的な目安を写真や図で提示すると飼い主にも理解されやすくなります。
保定がうまくいかないケースでは、マズルガードや口輪の一時的な使用も検討されますが、眼圧上昇が懸念される疾患(緑内障疑いなど)では締め付けが強くならないよう注意が必要です。特に角膜潰瘍や眼圧異常が疑われる症例では、軟膏の塗り方だけでなく「どこまで自宅で実施してよいか」の線引きをカルテに明記し、スタッフ間で共有しておくと安全です。
エコリシン眼軟膏 犬 塗り方と眼疾患ごとの注意点(角膜潰瘍・ドライアイなど)
エコリシン眼軟膏は細菌性結膜炎や表在性角膜炎に対して有用ですが、角膜潰瘍の深さや基礎疾患によっては塗り方そのものを変える必要があります。浅い表在性潰瘍では、潰瘍辺縁の乾燥を避けつつ全体に薄く軟膏を行き渡らせることが目的となり、下眼瞼結膜嚢に塗布した後のまばたきで角膜全体を覆うように広げる方法が適しています。
一方、メルト型角膜潰瘍や深部潰瘍では、自己融解酵素や二次感染のコントロールが重要で、抗菌薬単独では不十分なことも多く、血清点眼やコラーゲンプラグなどとの併用が検討されます(総説としては犬の角膜潰瘍治療に関するレビューが参考になります:例 JAVMAの角膜潰瘍治療レビュー)。このような症例では塗布後に激しい瞬目や疼痛が増悪する場合があり、その際は塗り方の問題と決めつけず、潰瘍深部への進行を疑って早期に再診を指示すべきです。
ドライアイ(角結膜乾燥症)を伴う犬では、エコリシン眼軟膏の基剤として用いられるワセリンや流動パラフィンが涙液の代替としても機能し、角膜保護の面でプラスに働くことがあります。しかし油性基剤は視界を一時的にぼかし、犬が違和感から前肢で目をこすってしまうことがあるため、塗布後しばらくはカラー装着や飼い主による見守りを指導することが勧められます。
また、眼圧が高い症例では、眼軟膏塗布時に眼球を圧迫するような保定やマッサージは避ける必要があります。特に大型犬で飼い主が強く眼球を押さえ込むような癖がついている場合、眼圧コントロールが乱れる可能性があるため、「瞼をつまむように軽く閉じる」「眼球本体には力をかけない」という具体的な言葉で指導すると誤解が少なくなります。
エコリシン眼軟膏 犬 塗り方と誤飲・副作用リスクへの対応
犬に眼軟膏を塗ったあと、前肢でこすったり、顔を床やソファにこすりつけたりして軟膏を舐めてしまうケースは少なくありません。少量の眼軟膏を舐めた程度では、コリスチンやフラジオマイシンの全身吸収量はごくわずかとされており、多くの場合は一過性の消化器症状も認めないと報告されています。しかし、反復して大量に舐めてしまう状況では、特に腎機能低下や神経筋疾患を抱える個体で全身性の副作用リスクを完全には否定できません。
誤飲リスクを減らすためには、塗布後の時間の使い方を具体的に指導することが効果的で、以下のような工夫が有用です。
- 塗布直後に、嗜好性の高いおやつや知育トイを与えて注意をそらす。
- 散歩前や食事前など、犬が別の楽しみに集中しやすいタイミングで塗布する。
- 必要に応じてエリザベスカラーやソフトカラーを短時間装着し、目への直接の接触を防ぐ。
もし舐めてしまった場合の相談対応では、「体重」「摂取したと推定される量」「基礎疾患の有無」「併用薬」を確認したうえで、観察のみでよいケースか、血液検査や輸液などの介入が必要かを判断します。抗菌薬の全身暴露による腸内細菌叢への影響については、短期間・少量であれば臨床的問題はほとんど報告されていませんが、長期にわたる不適切な使用は耐性菌選択の一因となりうることが知られており、抗菌薬適正使用の観点からも指導が求められます。
眼局所での副作用としては、まれに軟膏基剤や添加物に対する接触性皮膚炎様の反応が認められ、眼周囲の紅斑や掻痒、落屑として現れることがあります。このような症状が塗布開始後に出現した場合は、薬剤アレルギーや刺激反応を疑い、同系統の別製剤への切り替えや点眼薬への変更を検討することが望ましいとされています(ヒトの眼科領域でも、抗菌薬眼軟膏による接触皮膚炎症例が複数報告されています:例 J Dermatol. 2011)。
エコリシン眼軟膏 犬 塗り方の実務と代替薬選択(供給状況と抗菌薬適正使用の独自視点)
エコリシン眼軟膏は一部で供給中止や流通制限の影響を受けており、動物病院ではオフロキサシン眼軟膏やタリビッド眼軟膏などフルオロキノロン系への切り替えが行われているケースも報告されています。このとき、「同じように塗ればよい」というだけでなく、それぞれの抗菌スペクトルと耐性リスクを踏まえた選択が求められます。例えば、慢性結膜炎で既に複数回の抗菌薬眼科治療歴がある犬に対しては、培養・感受性検査を併用したうえで、漫然と広域薬へシフトしないことが重要です。
実務上の独自視点として、以下のような工夫は検索上位の記事ではあまり触れられていないものの、診療効率と安全性の向上に役立ちます。
- 電子カルテに「眼軟膏塗布プロトコル」をテンプレート化し、病態ごとに塗布量・回数・保定方法・再診タイミングを紐付けておく。
- 看護スタッフが飼い主に実際に塗ってもらう「ハンズオン指導」の際、スマートフォンでの動画撮影を許可し、自宅で見直せるようにする。
- 同居犬・同居猫への誤使用(別個体への流用)を防ぐため、ラベルに「この子専用」「○○ちゃん右眼のみ」など大きく記載し、塗り方と一緒に「誰に・どの眼に」の確認を徹底する。
また、塗り方説明用の配布資料では、単に手順を図示するだけでなく、「このステップを省略するとどういうトラブルが起こりうるか」を短く添えることで、飼い主の遵守率が上がる傾向があります。例えば、「チューブ先端が眼に触れたまま続けると、細菌が付着し別の家族やペットの眼に感染を広げることがあります」といった具体的なリスク提示は、単なる「触れないでください」という注意書きよりも行動変容につながりやすいと報告されています。
参考)眼軟膏の使い方 – 草津犬猫病院(滋賀県草津市の動物病院)
エコリシンのような旧来から使われてきた抗菌眼軟膏は、今後も供給状況や耐性菌の動向によって位置づけが変化していく可能性があるため、獣医師は定期的にヒト医療・獣医眼科双方のガイドラインや総説に目を通し、処方と塗り方指導のアップデートを続けることが望まれます。その意味でも、「エコリシン眼軟膏 犬 塗り方」を単なるテクニックとしてではなく、抗菌薬適正使用と安全な在宅治療の文脈でとらえ直すことが、これからの診療現場における重要なテーマといえるでしょう。
犬の眼軟膏一般の使い方や保定の図解がわかりやすくまとまっている参考ページ(眼軟膏の塗布手順と保定の具体例に利用)