エキノキャンディン系抗真菌薬の特徴と適応
C. parapsilosisには感受性が低いため、エキノキャンディン系は推奨されません。
エキノキャンディン系抗真菌薬の作用機序と特性
エキノキャンディン系抗真菌薬は、真菌細胞壁の骨格多糖であるβ-1,3-Dグルカンの合成を阻害する薬剤です。この作用機序は他の抗真菌薬とは異なり、グルカンシンターゼ酵素複合体を非競合的に阻害することで真菌細胞壁の合成を妨げます。wikipedia+1
β-グルカンが破壊されると、真菌細胞は浸透圧への耐性を失い、細胞溶解が引き起こされます。この機序により、カンジダ属の大部分に対して殺真菌的に作用し、フルコナゾール耐性株に対しても有効性を示します。weblio+1
アスペルギルス属に対しては静真菌的に作用しますが、カンジダ属に対する殺菌効果と比較すると活性は限定的です。
つまり殺菌か静菌かは菌種で異なります。
分子量が大きく腸管からほとんど吸収されないため、経口薬は存在せず、すべて静脈注射で投与されます。
エキノキャンディン系抗真菌薬が効く菌種と効かない菌種
カンジダ属の主要な菌種、すなわちC. albicans、C. glabrata、C. kruseiに対しては高い感受性を示します。特にC. glabrataやC. kruseiはアゾール系抗真菌薬に耐性を示すことが多いため、エキノキャンディン系が推奨される重要な菌種です。
一方、C. parapsilosisに対してはMIC(最小発育阻止濃度)が高く、in vitroでの感受性が不良である傾向があります。カテーテル関連血流感染症でC. parapsilosisが疑われる場合は、エキノキャンディン系の有効性が不十分な可能性を考慮する必要があります。theidaten+1
クリプトコッカス属、トリコスポロン属、ロドトルラ属には効果がなく、これらの酵母に対しては別の抗真菌薬を選択する必要があります。接合菌であるフザリウム属やクモノスカビ属にも作用しません。wikipedia+1
アムホテリシンBやフルコナゾールとの併用で、カンジダのバイオフィルムに対する相乗的・相加的活性が期待できる点も重要です。
エキノキャンディン系抗真菌薬の副作用と肝機能障害リスク
エキノキャンディン系抗真菌薬の主な副作用として肝機能障害が知られています。添付文書では、カスポファンギン、ミカファンギンいずれの薬剤においても、肝機能異常または肝機能障害が5%以上の頻度で発現すると記載されています。hospital+1
消化管症状や肝障害は比較的軽微とされていますが、投与中は定期的な肝機能検査値のモニタリングが必要です。5%という数字は20人に1人の割合に相当するため、決して無視できる頻度ではありません。
参考)https://www.jstct.or.jp/uploads/files/guideline/01_04_shinkin03n.pdf
シトクロムP450システムの阻害剤、誘導剤、基質ではなく、P糖タンパク質にも影響しないため、薬物相互作用は最小限です。これは他剤併用の多い重症患者での使用において大きな利点です。
参考)エキノカンディン
腎不全や血液透析による薬物動態への影響がないため、腎機能障害患者でも用量調整が不要な点も特徴的です。年齢、性別、人種による用量調整も必要ありません。
肝機能障害リスクを念頭に置きつつ、定期的なモニタリングを実施することで安全に使用できます。
エキノキャンディン系抗真菌薬のparadoxical effectとは
エキノキャンディン系抗真菌薬には「paradoxical effect(逆説的効果)」と呼ばれる現象が存在します。これは、高濃度の薬剤存在下で本来感受性のある真菌が増殖を再開する現象です。pmc.ncbi.nlm.nih+1
このparadoxical effectは、特定の濃度範囲(約4~32 µg/mL)で発現することが知られています。薬剤濃度が高ければ高いほど効果が強まるという一般的な概念に反する現象であるため「逆説的」と呼ばれます。
カスポファンギンはミカファンギンやアニデュラファンギンよりもparadoxical effectを起こしやすいとされています。菌種によっても差があり、C. albicans、C. tropicalis、C. krusei、C. parapsilosisで起こしやすく、C. glabrataでは起こしにくいという特徴があります。
この現象は耐性変異やβ-グルカン合成酵素の活性上昇、薬剤の不活化によるものではなく、β-グルカン合成酵素活性の回復が主な原因と考えられています。臨床的意義は完全に解明されていませんが、治療効果に影響する可能性があるため認識が必要です。pmc.ncbi.nlm.nih+1
エキノキャンディン系抗真菌薬の耐性菌の現状と対策
アゾール系抗真菌薬と比較して、エキノキャンディン系は耐性菌出現の問題が少ないとされてきました。発売から数年を経ても低感受性菌の分離報告は欧米を中心に散見される程度でしたが、その報告例は徐々に増加しています。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204210756864
低感受性株のほとんどはC. albicansですが、C. glabrata、C. krusei、C. tropicalisでも確認されています。これらの株では、エキノキャンディンに対する感受性が100倍近く低下し、膜画分中のβ-1,3-グルカン合成酵素も耐性を示します。
耐性と強く関連しているのは、β-グルカン合成酵素の触媒サブユニットをコードするFKS遺伝子のエキノキャンディン耐性領域(EchR)と呼ばれる部分のアミノ酸置換です。ただし、このアミノ酸置換がどのように耐性に関わっているか、詳細は不明な部分が残されています。
近年、血液培養から分離されるC. glabrataでエキノキャンディン耐性率の増加が報告されています。直近でエキノキャンディン系抗真菌薬の投与歴がある患者や、予防投与中または初期治療で投与中の患者がカンジダ血症を発症した場合には、感受性結果が判明するまでアムホテリシンB製剤の使用が推奨されています。
参考)microbiology round – 亀田総合病院 感染…
耐性菌出現を抑制するには、不必要な長期投与を避け、感受性試験に基づいた適切な薬剤選択を行うことが基本です。