エチオナミド略語と多剤耐性結核治療

エチオナミド略語と使用状況

エチオナミドの略語は施設によってETHとTHが混在使用されています。

エチオナミド略語の重要ポイント3つ
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2つの略語が存在

ETHとTHの両方が医療現場で使用されており、施設間での統一がない状態です

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多剤耐性結核の二次治療薬

標準治療が効かない多剤耐性結核に対して他の抗結核薬と併用される重要な薬剤です

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副作用に注意が必要

胃腸障害、肝障害、甲状腺機能低下などの副作用が高頻度で発生するため定期的なモニタリングが必須です

エチオナミド略語ETHとTHの使い分け

エチオナミドには国際的に認められた略語と国内で慣用的に使われてきた略語の2種類が存在しています。ETHは英語名Ethionamideの頭文字を取った国際標準の略語として位置づけられており、日本化学療法学会の用語集や多くの医学文献でこの表記が採用されています。一方でTHという略語も医療現場では広く使われており、特に臨床現場や処方箋でこの表記を目にする機会が多いのが実情です。

このような略語の二重表記は一見すると混乱を招くように思えるかもしれませんが、実際には両方とも同じエチオナミドを指しています。

つまり本質的な違いはありません。

しかし施設間での連携や転院時の処方箋の受け渡しにおいて、どちらの略語が使われているかを確認することは重要です。特に多剤併用療法を行っている結核患者の場合、複数の抗結核薬が同時に処方されるため、略語の混同は避けなければなりません。

日本病院薬剤師会が発行している抗微生物薬略語一覧では、エチオナミドの略語としてETHが採用されています。一方で一部の医療施設や文献ではTHという略語が使用されているケースがあり、これは「チオアミド系」を示す略称として使われてきた経緯があります。厚生労働省の結核医療の基準に関する文書でもTHという表記が見られることから、国内では両方の略語が正式に認知されていると考えられます。

医療従事者としては、自施設で使用している略語を把握するとともに、他施設からの処方箋や紹介状を受け取る際には略語の確認を怠らないことが大切です。

日本化学療法学会用語集

エチオナミドの標準的な略語ETHについて確認できる公式の用語集です。

エチオナミド商品名と基本情報

エチオナミドの日本国内での商品名はツベルミン錠100mgです。Meiji Seikaファルマが製造販売しており、1錠あたり100mgの有効成分を含有しています。

この薬剤は1956年にイソニアジドの類似化合物の研究中に合成された結核化学療法剤であり、特にイソニアジド耐性菌に対して有効性を示すことが知られています。結核菌の細胞壁を構成するミコール酸の合成を阻害することで、菌の増殖を抑制する作用機序を持っています。

投与方法は経口投与で、通常成人に対しては最初1日300mg(3錠)から開始し、徐々に増量して1日500~700mg(5~7錠)を1~3回に分けて服用します。体重あたりの標準的な投与量は10mg/kg/日とされており、最大量は600mg/日です。年齢や症状、腎機能などを考慮して適宜調整する必要があります。

薬価は1錠126.4円となっており、標準的な投与量の500mgを1日服用する場合、1日あたり約632円の薬剤費がかかることになります。結核治療は長期間に及ぶため、経済的な負担も考慮する必要があります。ただし結核治療については感染症法第37条の2に基づく医療費公費負担制度があり、患者の自己負担は通常5%に軽減されます。

小児への投与については添付文書上の記載は限られていますが、小児結核診療のてびきによると体重あたり10~20mg/kgの範囲で使用されることがあります。

ツベルミンは他の抗結核薬と併用することが原則とされており、単剤での使用は薬剤耐性を招くリスクがあるため推奨されていません。

エチオナミド多剤耐性結核での位置づけ

多剤耐性結核とはリファンピシンとイソニアジドの両方に耐性を持つ結核菌による感染症のことです。これらは結核治療において最も強力な抗菌作用を持つ薬剤であり、標準治療の中核を担っています。

エチオナミドは多剤耐性結核の治療において二次抗結核薬として位置づけられています。

つまり最初から使う薬ではありません。

標準的な結核治療が効かない場合や、薬剤感受性試験の結果に基づいて使用される薬剤です。WHOのガイドラインにおいてもエチオナミドは多剤耐性結核に対する治療選択肢の一つとして挙げられていますが、近年では新しい抗結核薬であるベダキリンやデラマニドの登場により、治療レジメンにおける優先順位は変化しつつあります。

厚生労働省の結核医療の基準によると、多剤耐性結核の治療では感受性を有する抗結核薬を3剤または4剤併用することが原則とされています。エチオナミドは、アミノグリコシド系抗菌薬(ストレプトマイシンやカナマイシン)、エンビオマイシン、パラアミノサリチル酸、サイクロセリンなどと併用して使用されることが多い薬剤です。

多剤耐性結核の治療期間は通常18~24ヶ月と長期にわたるため、副作用の管理が極めて重要になります。エチオナミドは後述する副作用のため、患者が服用を継続できないケースも少なくありません。そのため治療開始時から副作用対策を講じることが求められます。

日本における多剤耐性結核の発生頻度は比較的低く、新規結核患者の約1~2%程度とされていますが、一度発症すると治療が困難で予後も不良となりやすいため、適切な薬剤選択と治療管理が不可欠です。

日本結核病学会「結核の治療」

多剤耐性結核におけるエチオナミドの使用方法について詳細な情報が記載されています。

エチオナミド副作用と対処法

エチオナミドで最も高頻度に見られる副作用は消化器症状です。吐き気、嘔吐、食欲不振、胃部不快感などが投与開始後早期から出現することが多く、これらの症状により服薬を継続できなくなる患者が少なくありません。

医薬品インタビューフォームによると、食欲不振や悪心・嘔吐などの胃腸症状は最も多く認められる副作用として報告されています。これらの症状を軽減するために、食事と一緒に服用する、分割投与する、制吐剤を併用するなどの対策が取られます。

肝障害も重要な副作用の一つです。劇症肝炎や急性肝炎などの重篤な肝障害が発現することがあるため、定期的な肝機能検査が必須となります。特に他の抗結核薬と併用している場合、肝障害のリスクが上昇するため注意が必要です。黄疸や倦怠感、食欲不振などの症状が現れた場合は、すぐに医師に連絡するよう患者への指導が重要です。

甲状腺機能低下も特徴的な副作用として知られています。添付文書では頻度5%以上または頻度不明とされており、長期投与時には特に注意が必要です。甲状腺機能低下の症状としては倦怠感、体重増加、寒がり、便秘などが挙げられます。定期的な甲状腺機能検査を実施し、異常が認められた場合には甲状腺ホルモンの補充療法が検討されます。

精神神経系の副作用として、頭痛、不眠、不安、めまい、抑うつ、興奮などが報告されています。これらの症状は患者のQOLを大きく低下させる可能性があるため、早期発見と適切な対応が求められます。

その他にも、発疹などの皮膚症状、月経異常、インポテンツ、女性型乳房、脱毛などの内分泌系の副作用も報告されています。特に月経異常については頻度0.1~5%未満とされており、女性患者への説明と同意が必要です。

高齢者では副作用が発現しやすいという報告があり、患者の状態を慎重に観察しながら投与量を調整することが重要です。

副作用が疑われる場合は、投与の継続可否を判断するため、速やかに処方医に連絡して対応を協議する必要があります。

エチオナミド処方時の確認ポイント

エチオナミドを含む抗結核薬の処方を受け取った際、薬剤師として確認すべきポイントがいくつかあります。

まず略語の確認が最優先事項です。

処方箋にETHまたはTHと記載されている場合、それがエチオナミド(ツベルミン)を指すことを確実に把握する必要があります。特に転院や施設間連携の際は、略語の混同による調剤ミスを防ぐため、疑義照会を躊躇しないことが重要です。

投与量の妥当性についても確認が必要です。標準的な投与量は1日500~700mgですが、体重や腎機能、年齢などによって調整されるべきです。特に体重50kg未満の患者や腎機能低下患者では、通常量での投与が過量になる可能性があります。添付文書では体重あたり10mg/kg/日が標準量とされているため、患者の体重から適切な投与量を逆算して確認することが推奨されます。

併用薬の確認も欠かせません。エチオナミドは他の抗結核薬と必ず併用することが原則です。処方箋に単剤での処方がある場合は、処方意図を確認する必要があります。また他の抗結核薬との併用により肝障害のリスクが上昇するため、肝機能検査の実施状況について確認することも重要です。

投与回数と投与タイミングについても注意が必要です。エチオナミドは1日1~3回に分けて投与されますが、胃腸障害を軽減するために食後投与が推奨されます。処方箋に食前や食間の指示がある場合は、患者の副作用発現状況を考慮して適切な投与タイミングを提案することが望ましいでしょう。

患者への服薬指導では、副作用の初期症状について具体的に説明することが重要です。特に吐き気や食欲不振は高頻度で出現するため、これらの症状が現れた場合の対処法(食事と一緒に服用する、症状が強い場合は医師に相談するなど)を伝えます。また肝障害や甲状腺機能低下の初期症状(倦怠感黄疸、体重変化など)についても説明し、異常を感じたらすぐに連絡するよう指導します。

DOTSの実施状況についても確認が望ましいでしょう。結核治療では服薬確認が極めて重要であり、特に多剤耐性結核の治療では確実な服薬が治療成功の鍵となります。

ツベルミン錠添付文書

エチオナミドの詳細な使用上の注意や副作用情報について確認できる公式文書です。