電子式血圧計 主要メーカー商品の特徴
電子式血圧計の測定方式と選び方のポイント
電子式血圧計は大きく分けて上腕式と手首式の2種類があります。上腕式はさらにカフタイプとアームインタイプに分類されます。
上腕式(カフタイプ)は、腕にカフと呼ばれる帯を巻いて測定する最も一般的なタイプです。医療機関でも使用されており、測定精度が高いという特徴があります。価格帯は4,000円台から20,000円台と幅広く、機能によって選べます。
上腕式(アームインタイプ)は、腕を筒状の測定部に入れるだけで測定できる手軽さが魅力です。カフを巻く手間がなく、腕の太さに関わらず測定できますが、価格は17,000円台からとやや高めです。
手首式は、手首に装着して測定するコンパクトなタイプです。持ち運びに便利で、厚手の服を着ている時でも測定しやすいという利点があります。ただし、正確な測定には手首の位置を心臓の高さに保つ必要があり、測定姿勢に注意が必要です。
電子式血圧計を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 測定精度: 医療機器認証を受けているか確認
- 使いやすさ: カフの巻きやすさや操作のシンプルさ
- データ管理: 測定履歴の保存数や複数人での使用可否
- 連携機能: スマートフォンとの連携やデータ管理アプリの有無
- 追加機能: 不規則脈波検知や体動検知などの安全機能
オムロン電子式血圧計の独自技術「インテリセンス」とその特徴
オムロンヘルスケアは家庭用電子血圧計の世界シェア約50%を誇る業界最大手です。130カ国以上で製品を展開し、その高い信頼性と測定精度で知られています。
オムロンの血圧計の最大の特徴は、独自の測定技術「Intellisense(インテリセンス)」にあります。この技術は1991年に世界で初めて開発されたもので、測定者一人ひとりの腕の太さや呼吸の状態などの特徴に合わせて最適な血圧測定を行います。
インテリセンスの核となるのは「ファジィ理論」の応用です。これは1965年にカリフォルニア大学バークレー校のロトフィ・ザデー教授によって提唱された理論で、人間の感覚や経験に基づく判断を機械に再現させる手法です。オムロンはこの理論を血圧計に応用し、その人のその時の血圧に最適な加圧値を自動的に推定・制御するシステムを実現しました。
オムロンの代表的な製品ラインナップには以下のようなものがあります。
- HEM-7600Tシリーズ: 本体とカフが一体化した持ち運びに便利なモデル。Bluetooth通信機能搭載で、専用アプリと連携してデータ管理が可能。
- HEM-7281T: 早朝高血圧確認機能や血圧値レベル表示など多機能モデル。
- HEM-7120: シンプル機能で使いやすい入門モデル。
- HCR-7502T: Bluetooth通信機能に加え、高血圧表示や早朝高血圧確認機能を搭載した高機能モデル。
特筆すべきは、オムロンが2006年に業界で初めて「早朝高血圧」確認機能を搭載した点です。早朝高血圧は脳卒中や心不全などの発症リスクと相関性が高いことが知られており、家庭での継続的な血圧管理の重要性を示す先駆的な取り組みでした。
テルモとエー・アンド・デイの電子式血圧計における測定技術の違い
テルモ株式会社は医療機器メーカーとして高い信頼性を持ち、独自の「ハイレゾリューションシステム」を搭載した血圧計を展開しています。このシステムは不規則な脈波リズムを高精度に検知する技術で、より正確な血圧測定を可能にしています。
テルモの電子血圧計の特徴は、文字が大きく見やすい表示画面と、医療機器メーカーならではの高い測定精度です。代表的な製品には「ES-P2020ZZ」や「ES-P2020DZ」があり、特にES-P2020DZはデータ通信機能(NFC)を搭載し、測定データの管理が容易になっています。
一方、株式会社エー・アンド・デイは、全自動血圧計市場でクリックシェア38.7%(2025年3月時点)を誇る業界リーダーです。同社の血圧計は軽量・コンパクト設計で設置場所を選ばない省スペース型が特徴です。
エー・アンド・デイの代表的な製品「TM-2657Wシリーズ」は、以下のような特長を持っています。
- 左右どちらの腕でも測定できるフォルム
- 不規則脈波(IHB:Irregular Heart Beat)検知機能
- 複数回測定機能(一部モデル)
- ビットマップ印字機能
特に不規則脈波検知機能は、血圧測定中に脈間隔を測定し、脈の揺らぎを監視する技術です。脈の揺らぎはストレスや疲労などの生理的要因から心臓病まで様々な原因で起こるため、この機能は健康管理において重要な役割を果たします。
テルモとエー・アンド・デイの技術的な違いは、テルモが脈波リズムの検知精度に重点を置いているのに対し、エー・アンド・デイは使いやすさと設置の自由度を追求している点にあります。どちらも医療現場での使用を想定した高い信頼性を持つ製品を提供していますが、用途によって選ぶべきメーカーが異なるでしょう。
日本精密測器とシチズンの電子式血圧計における独自機能と価格比較
日本精密測器株式会社は、「安心の日本製」をアピールポイントとする国内メーカーです。同社の血圧計の特徴は、独自技術「ハイ・レゾリューションシステム」を搭載している点にあります。この技術により、高精度な血圧測定が可能となっています。
日本精密測器の代表的な製品には、上腕式デジタル血圧計「DS-R10J」と「DS-N10J」があります。特にDS-R10Jは、血圧や脈拍に加えて脈圧も測定できる機能を持ち、脈圧値が65を超えると通知してくれる機能が特徴です。脈圧値の変化を日々チェックすることで、生活習慣の見直しなど早期の対策が可能になります。
また、同社の製品は以下のような機能を備えています。
- 二人分の測定結果記録(一人60回分、約1カ月分)
- バックライト搭載で暗い部屋でも見やすい表示
- 体動チェック機能
- 安心測定ナビ
- 腕帯状態表示
- 不規則脈波リズムチェック機能
一方、シチズン・システムズの血圧計は、手頃な価格帯が特徴です。上腕式血圧計「CHU302-CC」は4,200円台と比較的安価ながら、脈間隔変動お知らせや体動お知らせ、血圧分類表示などの基本機能を備えています。
手首式血圧計では「CH-650F」(3,280円台)や「CHWH803」(8,800円台)などがあり、特にCHWH803はBluetoothに対応し、体動お知らせや測定姿勢ガイドなど充実した機能を搭載しています。
両社の製品を価格帯で比較すると。
メーカー | 製品モデル | タイプ | 価格帯(税込) | 主な特徴 |
---|---|---|---|---|
日本精密測器 | DS-R10J | 上腕式 | 13,200円 | 脈圧測定、バックライト搭載 |
日本精密測器 | DS-N10J | 上腕式 | 8,980円 | 体動チェック、安心測定ナビ |
シチズン | CHU302-CC | 上腕式 | 4,200円 | シンプル機能、コストパフォーマンス良好 |
シチズン | CHWH803 | 手首式 | 8,800円 | Bluetooth対応、測定姿勢ガイド |
シチズン | CH-650F | 手首式 | 3,280円 | 低価格、基本機能搭載 |
日本精密測器の製品は価格がやや高めですが、脈圧測定や詳細な健康管理機能を重視する方に適しています。一方、シチズンの製品はコストパフォーマンスに優れ、基本的な血圧管理を手頃な価格で実現したい方に向いています。
電子式血圧計のデータ管理機能とスマート連携の最新動向
近年の電子式血圧計は、単に血圧を測定するだけでなく、データ管理機能やスマートデバイスとの連携機能が急速に進化しています。この分野では特にオムロンやファーウェイなどが先進的な取り組みを行っています。
オムロンの多くの上位モデルには、Bluetooth通信機能が搭載されており、専用アプリ「OMRON connect」と連携することで、測定データをスマートフォンに転送し管理できます。例えばHEM-7600TやHCR-7502Tなどのモデルでは、測定した血圧値をグラフ化して傾向を視覚的に把握できるほか、「かんたん血圧日記」機能で日々の健康状態を記録することも可能です。
一方、ウェアラブルデバイスの分野では、ファーウェイの「HUAWEI WATCH D」が注目を集めています。この製品は腕時計型の血圧計で、以下のような先進機能を備えています。
- Bluetooth通信機能
- 血中酸素レベルモニタリング
- 睡眠アドバイス
- ストレスモニタリング
- 皮膚温度測定
- ワークアウトモード
- スマート音声アシスト
特筆すべきは、常時装着することで日常生活中の血圧変動を継続的に記録できる点です。これにより、運動や食事、ストレスなどと血圧の関係をより詳細に分析することが可能になります。
また、オムロンも「HCR-6900T-M」というウェアラブル血圧計を展開しており、歩数や移動距離、睡眠状態などを測定できる多機能モデルとなっています。
データ管理の観点では、クラウドサービスとの連携も進んでいます。測定データをクラウド上に保存することで、医療機関との共有が容易になり、遠隔での健康管理や診療をサポートする仕組みも整いつつあります。
このような最新の電子式血圧計は、単なる測定器から健康管理のためのプラットフォームへと進化しています。特に高齢者や慢性疾患を持つ患者にとって、日常的な健康モニタリングと医療専門家との連携を容易にする重要なツールとなっているのです。
オムロン独自の血圧測定技術「インテリセンス」についての詳細情報
医療現場で活用される電子式血圧計の特殊機能と将来展望
医療現場で使用される電子式血圧計は、家庭用とは異なる特殊機能を備えています。特にエー・アンド・デイやテルモなどの医療機器メーカーが提供する製品には、臨床現場のニーズに応える高度な機能が搭載されています。
エー・アンド・デイの「TM-2657Wシリーズ」には、複数回測定機能が搭載されています。これは日本高血圧学会発行の「高血圧治療ガイドライン2019」で推奨されている測定方法で、2回または3回の測定を実施し、その平均値を算出します。この機能により、より正確な血圧値の把握が可能となり、治療方針の決定に役立ちます。
また、医療機関向け血圧計には以下のような特殊機能も備わっています。
- ビットマップ印字機能: 測定結果と共に医療機関のロゴやメッセージを印刷できる
- 体重計・身長計との連携: 他の測定機器と連携してデータを一元管理
- 医療情報システムとの接続: 電子カルテなどの医療情報システムとデータ連携
将来的には、AIを活用した血圧変動の予測分析や、遠隔医療との連携がさらに進むと予想されています。例えば、患者の日常的な血圧データを分析し、異常値が出る前に予防的な介入を行うシステムの開発が進められています。
また、非侵襲的連続血圧測定技術の発展も注目されています。現在の間欠的な測定ではなく、24時間連続して血圧を測定できる技術が実用化されれば、睡眠中の血圧変動や日内変動をより詳細に把握できるようになります。
さらに、ウェアラブルデバイスとの融合も進んでいます。腕時計型やリストバンド型の血圧計は既に一部製品化されていますが、今後はさらに小型化・高精度化が進み、日常生活に完全に溶け込んだ形での血圧モニタリングが可能になるでしょう。
医療現場と家庭をシームレスにつなぐ電子式血圧計の発展は、高血圧管理の質を向上させ、心血管疾患の予防に大きく貢献すると期待されています。特に高齢化社会において、自宅での適切な健康管理と医療機関との効率的な連携を支える重要なツールとなるでしょう。