大腿骨頭壊死症 症状と股関節痛と跛行

大腿骨頭壊死症 症状

大腿骨頭壊死症の症状:まず押さえる3点
🦴

壊死=痛い、ではない

骨壊死が起きた時点では自覚症状がないことがあり、圧潰(陥没)を契機に痛みが出現します。

🚶

股関節痛+跛行が典型

比較的急に始まる股関節痛や跛行が特徴で、腰痛・膝痛・殿部痛として始まる例もあります。

🧲

早期はMRIが鍵

早期は単純X線で変化が乏しく、疑えばMRIで特徴所見を確認し、壊死範囲を踏まえて治療方針を決めます。

大腿骨頭壊死症 症状の特徴:股関節痛と跛行

 

大腿骨頭壊死症(特に特発性)は、臨床的には「比較的急に始まる股関節痛」と「跛行」が中核症状として説明されます。日本整形外科学会も、変形性股関節症のように長期間かけて進む痛みとは異なり、比較的急性の発症になりやすい点を述べています。

一方で、痛みの部位が常に「股関節そのもの」に一致するとは限りません。指定難病情報でも、股関節部痛が特徴的としつつ、腰痛・膝痛・殿部痛などで始まる場合があるとされています。ここが、腰椎疾患や膝疾患として初期対応されやすいポイントで、現場では「股関節由来の関連痛(referred pain)」を常に疑う姿勢が重要です。

症状の現れ方を、患者説明にも使える形で整理すると次の通りです。

・🟦 典型:歩行開始、立ち上がり、荷重で増悪する股関節部痛 → 痛み回避の跛行へ(疼痛性跛行)

・🟨 非典型:膝痛・腰痛・殿部痛で受診し、股関節の内旋などで誘発痛が見つかる

・🟥 進行:安静時痛や夜間痛が混じり、日常生活動作が目に見えて制限される

「跛行」は患者の主訴にならないこともあります。問診では「歩幅が狭くなった」「長く歩くと脚の付け根が怖い」「無意識に体重をかけないようにしている」などの表現に置き換わっていることがあるため、具体的な生活場面に落として聞くと拾いやすくなります。

大腿骨頭壊死症 症状と圧潰:無症状から痛みへ

診療で最も重要な前提は、「骨壊死が起こった=すぐ痛い」ではないことです。指定難病情報では、骨壊死が発生しただけの時点では自覚症状はなく、壊死部が潰れて大腿骨頭に圧潰が生じたときに症状が出現すると説明されています。さらに、発生から症状が出るまで数か月〜数年の時間差があり得る点が明記されています。

つまり、症状の有無だけで病態の有無を否定できません。逆に言えば、症状が出た時点では「力学的イベント(圧潰)」が進んでいる可能性があるため、治療方針の議論では壊死範囲・局在と病期の把握が一気に重要になります。

また、初期の痛みがいったん軽くなることがある点も落とし穴です。指定難病情報では、初期の痛みは安静で2〜3週で軽減することがあるが、圧潰の進行に伴い再び増強する、とされています。済生会の解説でも同様に、初期痛が2〜3週間で軽減することがありつつ、陥没の進行で再度悪化する旨が述べられています。

この「いったん良くなる」は、患者の受診行動を遅らせます。医療者側も、初診時に疼痛が軽く「筋肉痛っぽい」「ぎっくり腰の延長」と見えてしまうと、画像の優先順位が下がり、結果的に圧潰後に再受診となるリスクが上がります。

したがって、次のような“圧潰に向かう痛み”の特徴を意識すると実装しやすいです。

・🧩 急に出た股関節部痛(または膝・殿部の原因不明痛)

・🧩 体重をかける動作で鋭く増悪し、歩容が変わる

・🧩 一時的に軽快しても、同じパターンで再燃する(繰り返す)

大腿骨頭壊死症 症状と診断:MRIと単純X線

症状があり大腿骨頭壊死症を疑う局面では、「X線で正常でも否定しない」という態度が必須です。日本整形外科学会は、早期には単純X線で変化が見えないため、疑われたらMRIを撮る、と明確に示しています。指定難病情報や済生会の解説も、画像検査(X線、MRI、CTなど)で診断し、壊死範囲を確定して治療方針を決める流れを述べています。

臨床では、MRIをいつ入れるかが勝負になります。下記のような状況は、X線が正常でもMRIへ進みやすい“診断トリガー”です。

・🧲 股関節の内旋で疼痛が再現され、荷重で増悪する

・🧲 30〜50歳代で、急に股関節痛が始まった(特発性で好発し得る年齢帯として指定難病情報にも記載)

・🧲 ステロイド投与やアルコール多飲などの背景がある(危険因子として指定難病情報で言及)

加えて、意外に見逃されやすいのは「両側性」です。症状は片側が強くても、反対側にも病変を抱えていることがあるため、問診では“反対側の違和感”も必ず確認します(病変の存在自体は画像で最終判断になりますが、問診で拾う姿勢が撮像戦略に影響します)。

検査説明の場面では、患者が「レントゲンが大丈夫なら安心」と思い込みやすいので、次のように誤解を解くとトラブルが減ります。

・📷 X線:骨の形が崩れた(陥没した)段階は捉えやすいが、早期は写りにくい

・🧲 MRI:早い段階の変化も拾えるので、症状と背景から疑う場合は有用

大腿骨頭壊死症 症状の鑑別:腰痛と膝痛

大腿骨頭壊死症は、患者の訴えが「股関節の奥」ではなく、腰・膝・殿部に出ることがあるため、鑑別の設計が重要です。指定難病情報は、股関節部痛が特徴である一方で腰痛・膝痛・殿部痛などで初発する場合があると明示しており、済生会も同様に「最初は腰や膝、太もも、お尻に痛みが出ることもある」と述べています。

医療従事者向けに実務的な鑑別ポイントを、股関節疾患(大腿骨頭壊死症を含む)へ引き戻す“質問”としてまとめます。

・❓ 痛みは「歩き始め」「立ち上がり」「階段」「靴下を履く動作」で増悪するか(股関節負荷で誘発しやすい)

・❓ 片側荷重を避けるような歩き方になっていないか(跛行の自己申告はなくても観察で気づく)

・❓ 腰部の姿勢や前屈で症状が大きく変わるか(腰椎由来を示唆する所見が乏しいなら股関節へ)

・❓ 膝局所(圧痛点・腫脹・不安定性)と症状が一致するか(膝痛でも局所所見が薄いなら関連痛を疑う)

ここでの“独自視点”として強調したいのは、初期対応の段階で「疼痛部位=責任病巣」と即断しない運用設計です。大腿骨頭壊死症は、壊死のみでは無症状になり得て、圧潰で症状が出るという時間差を持つため、痛みの場所だけに寄せた診断戦略だと遅れやすい構造があります。指定難病情報が「発生」と「発症」を区別して注意喚起しているのは、まさにこの臨床的ズレが起点です。

したがって、外来フローとしては「腰痛・膝痛で来院したが、荷重で増悪し、歩容が変わり、股関節可動で痛みが再現される」場合に、股関節の画像へ切り替える“ルール化”が現場では効きます。患者数が多い現場ほど、個々の名医芸ではなく、こうした分岐ルールが見逃し低減につながります。

有用:指定難病としての概要、症状が壊死ではなく圧潰で出る点、初期に軽快しても再増悪し得る点

特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71) – 難病情報センター

有用:医療者監修で、症状(急な股関節部痛、関連痛)と診断(X線とMRI)・治療選択の全体像

大腿骨頭壊死症 (だいたいこっとうえししょう)とは | 済生会
大腿骨頭壊死症の原因や症状、治療法について解説。大腿骨頭壊死症は、大腿骨の先端の丸い部分である「大腿骨頭」の血流が悪くなり、骨壊死が生じる病気です。骨壊死だけでは痛みは出ず、骨壊死した部分が押しつぶされ陥没することで痛みが生じます。

有用:日本整形外科学会による症状(股関節痛・跛行)と「早期はX線で見えにくくMRIが重要」という要点

「特発&#x602…

有用:診療ガイドライン試案(疫学・危険因子・診断などのCQ整理、文献の当たりを付けるのに有用)

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2016/162051/201610024A_upload/201610024A0016.pdf

関節外科 -基礎と臨床 2021年12月号 特集:大腿骨頭壊死症の基礎と臨床Up to date