ダイアライザー 種類 違い
ダイアライザー 種類 違い:膜面積と透析効率
ダイアライザーの「種類」を語るとき、まず現場で体感しやすいのが膜面積(例:1.5、1.8、2.1㎡など)です。膜面積が大きいほど血液が膜と接触できる面が増えるため、単位時間あたりの溶質除去や除水が進みやすく、透析効率が上がりやすいという大枠の方向性があります。
一方で「膜面積を上げれば常に正義」ではありません。膜面積が大きいダイアライザーはプライミングボリューム(体外循環量)が増えやすく、体格の小さい患者・高齢者・循環動態が不安定な患者では、透析中の血圧低下など“別のリスク”が前面に出ることがあります。
臨床での落とし穴は、「機能分類(Ⅰ〜Ⅴ型)」や「高性能」という言葉だけを見て、膜面積や運転条件(血流量、透析時間)を軽視してしまうことです。実際、β2-ミクログロブリン(β2-MG)の除去は、血流量が多いほど、また膜面積が大きいほど高い傾向が示されています。
参考)https://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2009/p042.pdf
ポイントとして、同じ患者でも「今日は除水が多い」「食事摂取が落ちてアルブミンが低い」「穿刺トラブルで血流量が上がらない」など、当日の条件で“膜面積の最適解”が揺れます。膜面積は固定パラメータではなく、透析条件の中で意味を持つ設計値として再確認すると、選択ミスが減ります。
ダイアライザー 種類 違い:膜素材(PS・PES・PMMA・CTA)
ダイアライザーの「種類の違い」は、膜面積だけでなく膜素材でも大きく変わります。メーカーの説明でも、PSU(PS系)・PEPA・EVAL・PMMA・AN69(PAN系)などの合成高分子膜と、CTA(セルローストリアセテート)などのセルロース系が区別されます。
実務的には、PS(ポリスルホン)やPES(ポリエーテルスルホン)は“主流で選択肢が多い膜素材”として扱われることが多く、製品ごとの設計差(親水化剤の有無など)も含めて検討されます。PSは実績とバランス、PESは親水性や分画特性の設計自由度などが語られやすい、という整理が臨床向け解説でも見られます。
参考)ダイアライザー(人工腎臓)の種類と性能|透析効率との関係
一方、PMMAは「吸着」という軸で語られることが多い膜素材です。β2-MGだけでなく炎症性サイトカインなどの吸着が話題になりやすく、“透析条件を上げても症状が残る”ようなケースで検討されることがあります。
参考)透析膜の種類PS・PES・PEPA・EVAL・PMMA・AN…
CTAは、PVPフリーやBPAフリーといった製品設計の文脈で触れられることがあり、「何を避けたいか(材料由来の懸念、反応性など)」から逆算して選ばれる場面があります。
膜素材は「性能」だけでなく「患者の反応(かゆみ、血圧低下、炎症、凝固トラブル)」の差として現れることがあるため、過去の経過と結び付けて評価するのが現実的です。
ダイアライザー 種類 違い:分画特性とβ2-MG
現在のダイアライザーは、性能に応じてⅠ型からⅤ型まで分類され、β2-MGクリアランスやアルブミン漏出のしにくさなどを基に整理されます。
この「分類」は便利ですが、分類だけで透析の結果が決まるわけではありません。実データでも、β2-MG除去率はダイアライザの機能分類に加えて、血流量や膜面積の影響を受ける傾向が示されています。
分画特性の考え方を現場に落とすなら、「どこまで通して、どこから通さないか」です。β2-MGのような中分子をより落としたいとき、孔径や膜構造の設計(=分画特性)が効いてきますが、アルブミンの不必要な喪失は避けたい、というトレードオフが常に同席します。
ここで意外に見落とされやすいのが、「分類が高い=アルブミンが漏れる」ではなく、製品設計・運転条件・患者背景で実際の“漏れ方”が変わる点です。例えば血流量が上げられない日や、除水が多く循環動態が不安定な日には、同じ膜でも狙った分画の通りにいかないことがあります。
そのため、β2-MGだけを単独KPIにせず、栄養指標・炎症指標・症状(掻痒、関節痛、透析後倦怠感など)とセットで追うと、膜変更の評価がブレにくくなります。
参考)https://www.nagano-dialysis.jp/wp-content/uploads/vol45_16.pdf
参考:β2-MG除去率が血流量・膜面積・機能分類でどう変わるか(図表)
日本透析医学会:透析条件とβ2-MG除去率の関係(血流量、膜面積、機能分類の傾向)
ダイアライザー 種類 違い:中空糸型と積層型
ダイアライザーの構造面の種類として、中空糸型と積層型があります。積層型は、膜を積み重ねる枚数で膜面積を調整しやすいと説明され、血液と透析液が膜を挟んで向流で流れる基本原理は同じでも、モジュール設計の思想が異なります。
臨床では「中空糸=当たり前」になりがちですが、構造が違うと、圧損・血液の流れ方・境膜層の作られ方などが変わり得ます(結果として同じ分類でも体感が違うことがあります)。素材・膜面積・分画特性に加えて、“形(モジュール)”も種類の一部として理解しておくと、トラブル時の切り分けが速くなります。
参考)https://jsn.or.jp/journal/document/55_4/515-522.pdf
また、教育や申し送りでは「中空糸1本の内径は約200µm」「膜厚は10〜50µm程度」などの標準的なスケール感を共有しておくと、血液側の条件(粘稠度上昇、ヘマトクリット変動など)が膜内の流れに与える影響を想像しやすくなります。
参考)http://ohnomc.net/img/file99.pdf
ダイアライザー 種類 違い:透析条件と“選択の逆転”(独自視点)
検索上位の解説は「分類」「膜面積」「素材」「β2-MG」までで止まりがちですが、現場で本当に迷うのは“同じ膜でも日によって最適解が変わる”ことです。β2-MG除去率は血流量が多いほど高い傾向があり、膜面積が大きいほど高い傾向も示されるため、血流量が落ちた日は膜変更より先に「なぜ血流量が確保できないか」を詰める方が改善が速いことがあります。
例えば、穿刺条件・脱血不良・アクセス狭窄疑いで血流量が下がると、分類を上げても期待したβ2-MG除去が出にくく、「膜が悪い」という誤解が生まれます。ここで膜面積だけ上げると、プライミングボリューム増加による循環負荷が増え、低血圧を助長してさらに血流量が落ちる、という“負の連鎖”に入ることがあります。touseki-ikai+1
逆に、炎症反応が強い・症状が残る・掻痒が強いといったケースでは、単純なクリアランス競争ではなく、膜素材(吸着特性など)を変える方が患者体感が改善することがあります。PMMAが吸着の文脈で語られるのは、こうした「数値だけでは説明しづらい困りごと」を拾いにいく発想と相性が良いからです。
実務で使える“選び分けの観点”を、チェックリスト化すると次の通りです(入れ子にしない運用を想定)。
- 血流量が確保できているか(アクセス、穿刺、脱血、凝固)。
- 膜面積を上げるメリットが、体外循環量増加のデメリットを上回るか(特に高齢・小柄・低血圧)。
- β2-MGなど中分子を狙うのか、アルブミン喪失を極力避けたいのか(栄養・炎症・フレイル)。
- 素材変更で改善が期待できる症状があるか(掻痒、炎症、透析後倦怠感など)。
- 同じ「Ⅰ〜Ⅴ型」でも製品差がある前提で、採用製品の特性をチーム内で共有できているか。
この整理は、機能分類やβ2-MGだけに寄り過ぎず、透析条件と患者背景を同時に扱うための“現場向けの補助線”になります。
