中心性漿液性脈絡網膜症レーザー治療の適応と効果

中心性漿液性脈絡網膜症とレーザー治療

中心性漿液性脈絡網膜症レーザー治療の特徴
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漏出点の凝固

脈絡膜からの漏出点をレーザーで凝固し、網膜色素上皮のバリア機能を再構築する治療法

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回復期間の短縮

自然治癒まで2~3カ月かかるところを数週間程度まで短縮できる可能性

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再発予防効果

適切な位置への照射により再発リスクを低減し、視機能の維持に貢献


中心性漿液性脈絡網膜症は、30~40代の男性に多く発症する網膜疾患で、脈絡膜からの漿液漏出により黄斑部に局所的な網膜剥離が生じます。この病態に対してレーザー治療は、漏出点を直接凝固することでバリア機能を回復させ、症状改善を促す有効な治療法として位置づけられています。

参考)301 Moved Permanently


中心性漿液性脈絡網膜症は自然治癒傾向を持つ疾患ですが、約30%の症例で再発が見られ、長期化すると視力回復が不十分になるリスクがあります。レーザー光凝固術は、この疾患に対する治療選択肢の一つとして、回復期間の短縮と再発予防という二つの重要な役割を果たしています。

参考)中心性漿液性脈絡網膜症


治療の原理は、フルオレセイン蛍光眼底造影検査で特定した漏出点にレーザーを照射し、網膜色素上皮細胞を凝固させることです。凝固された細胞を修復しようとする生体反応が活発化し、結果的に網膜色素上皮のバリア機能が再構築されます。この過程により、漏出した液体の吸収が促進され、数週間後には自覚症状の改善が期待できるんです。

参考)中心性漿液性脈絡網膜症


中心性漿液性脈絡網膜症のレーザー治療について詳しく解説した上本眼科クリニックの情報

中心性漿液性脈絡網膜症レーザー治療の適応基準

レーザー治療の適応を判断する上で最も重要な要素は、漏出点と中心窩(黄斑の中心部)との距離です。中心窩は視力を司る最も重要な部位であり、高い色彩識別能力を持っているため、この部分へのレーザー照射は避ける必要があります。

参考)レーザー光凝固術の費用|神戸市西区の【にしむら眼科】


具体的な適応基準として、漏出点が中心窩から離れていることが必須条件となります。加えて、フルオレセイン蛍光眼底造影検査で漏出点が明確に特定できることも重要な条件です。漏出点が不明瞭な場合や、漏出点と中心窩が重なっている場合には、レーザー光凝固術は選択できません。

参考)中心性漿液性網脈絡膜症(CSC)


治療のタイミングも重要な判断要素です。一般的には、発症後一定期間経過しても自然治癒が見られない場合や、再発を繰り返す症例が治療対象となります。網膜剥離が長期間続くと視力回復が不十分になるリスクが高まるため、経過観察と治療介入のバランスを慎重に見極める必要があります。

参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=51


マイクロパルスレーザーという新しい治療法の登場により、従来のレーザー治療では困難だった黄斑部のかなり近くまで照射が可能になりました。この技術は組織をほとんど破壊せず浸出液の漏れを止めることができるため、適応範囲が広がっています。

参考)中心性漿液性網脈絡膜症 – 新川崎眼科|川崎市幸区北加瀬

中心性漿液性脈絡網膜症レーザー治療の実際の手順

レーザー治療の実施には、まず詳細な診察と検査が必要です。フルオレセイン蛍光眼底造影検査により漏出点を特定し、光干渉断層計(OCT)で網膜剥離の範囲と程度を評価します。これらの検査結果をもとに、レーザー治療の適応と照射位置を慎重に判断します。

参考)網膜光凝固術|医療法人 藤田眼科


治療当日は、点眼薬による散瞳と点眼麻酔を行います。麻酔が効いた後、接触型のレンズを使用してレーザー装置でレーザーを照射します。照射時間は10~15分程度で、多少の痛みを伴う場合がありますが、注射麻酔は必要ありません。

参考)大阪市平野区で眼のレーザー治療なら眼科高橋クリニック│喜連瓜…


治療直後は一時的に視野が暗く感じられることがありますが、通常15分程度で回復します。ピントが合いにくくなるため、当日は乗り物の運転ができず、公共交通機関の利用が推奨されます。治療後は特に安静の必要はなく、日常生活に制限はありません。​
症例によっては、複数回のレーザー照射が必要になることもあります。治療後は定期的な眼底検査により、血管の異常が発生していないか確認する必要があります。​

中心性漿液性脈絡網膜症レーザー治療後の効果と合併症

レーザー治療の主な効果は、回復期間の短縮と再発予防です。通常2~3カ月かかる自然治癒期間を、数週間程度まで短縮できる可能性があります。治療後は網膜色素上皮のバリア機能が改善し、漏出した液体の吸収が促進されます。​
視力予後については、適切な時期に適切な位置へ照射された場合、良好な結果が期待できます。しかし、網膜剥離が長期間続いていた症例や再発を繰り返していた症例では、何らかの見にくさが残ることもあります。

参考)中心性漿液性脈絡網膜症(中心性網膜症) – 足立区の眼科疾患…


合併症のリスクも理解しておく必要があります。従来型のレーザー治療では、照射部位の網膜機能が失われ、視野の一部分が欠けるという合併症が必発でした。また、照射後に凝固斑が拡大し、視野障害や視力低下をきたすこともあります。

参考)マイクロパルス閾値下凝固治療


ごく稀ではありますが、レーザー治療後に白内障の進行、眼底出血、網膜剥離などが起こる場合があり、これらの合併症によっては視力低下を招くことがあります。視力低下や一時的な目のくらみなどの副作用も報告されていますが、レーザー治療を行わない場合と比べると、視力低下の程度は小さくなります。​
日本眼科学会による中心性漿液性脈絡網膜症の公式情報

中心性漿液性脈絡網膜症における新しいレーザー治療技術

従来のレーザー治療の合併症を克服するため、マイクロパルス閾値下凝固という新しい技術が登場し、世界的に注目されています。この治療法は、非常に短い凝固時間のレーザーをマイクロ秒単位で連続発振し照射することで、選択的に網膜色素上皮に熱エネルギーが伝わるという性質を応用したものです。

参考)https://opth.tomey.co.jp/top/wp-content/uploads/2016/11/55th-JRVS-seminar-poster.pdf


マイクロパルスレーザーの最大の利点は、神経網膜に影響を及ぼさないため、黄斑疾患を安全に治療できることです。従来の光凝固では網膜に凝固斑が残り、その後の凝固斑拡大により視野障害や視力低下をきたすことがありましたが、マイクロパルス閾値下凝固ではこれらが見られず、非常に侵襲の少ない治療となっています。​
作用機序は完全には明らかになっていませんが、網膜色素上皮細胞に熱刺激が加わることで、網膜色素上皮細胞による網膜下液の排出が促進されることが考えられています。組織をほとんど破壊せず浸出液の漏れを止めることができるため、黄斑部のかなり近くまでレーザー照射が可能になりました。​
この技術により、副作用がないため従来のように経過観察を行うことなく、早期から治療を行うべきではないかとの意見も出ています。現在、世界的に最も注目されている治療は、マイクロパルスレーザーと電解質コルチコイド拮抗薬(商品名セララ)の内服の組み合わせです。​

中心性漿液性脈絡網膜症レーザー治療と他の治療法の比較

中心性漿液性脈絡網膜症には、レーザー治療以外にもいくつかの治療選択肢があります。光線力学療法(PDT)は最も有効な治療法とされていますが、日本では健康保険外であり、費用が高額になることが課題です。PDTは加齢黄斑変性の治療法の一つで、CSCに対しては低侵襲な設定で使用されます。

参考)中心性漿液性脈絡網膜症(CSC) – 王子さくら眼科|北区王…


抗VEGF療法も有効な治療法の一つですが、こちらも日本では健康保険外です。内服薬による治療としては、末梢循環障害改善薬、蛋白分解酵素、ビタミン薬などが使用されます。末梢循環障害改善薬は目の血流を良くすることで網膜の働きを改善し、蛋白分解酵素はむくみに含まれる蛋白を分解して目の中のむくみを早く引かせることを目的としています。​
日本での一般的な治療アプローチは、まず末梢循環改善薬などの内服投与を行いながら経過観察を行い、改善が見られない場合にレーザー治療(網膜光凝固術)を考慮するというものです。従来型のレーザー治療が積極的に行われてこなかった理由は、照射部位が見えなくなるという合併症が必発であったためです。​
治療選択は、漏出点の位置、網膜剥離の程度、病態の持続期間、再発の有無などを総合的に判断して決定されます。マイクロパルスレーザーの登場により、レーザー治療の位置づけは変化しつつあり、早期からの治療介入の可能性も議論されるようになっています。

参考)慢性中心性漿液性脈絡網膜症における半用量光線力学療法対マイク…