中心暗点と疾患
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中心暗点 疾患の定義と典型パターン(黄斑・視神経)
中心暗点は、固視点付近(中心視野)に「見えない/見えにくい領域(暗点)」が出現する状態で、患者は「見たいところが欠ける」「中心が暗い」「文字の一部が飛ぶ」と表現しやすいのが特徴です。
同じ“中心”の訴えでも、原因が黄斑(網膜の中心部)なのか、視神経(とくに乳頭黄斑線維束)なのかで、随伴症状と検査の当たり方が大きく異なります。池袋サンシャイン通り眼科診療所の視野検査解説では、加齢黄斑変性症・視神経炎・中心性網膜症の代表的な視野異常として中心暗点が挙げられています。
医療従事者として重要なのは、「中心暗点=黄斑疾患」と短絡せず、視神経疾患も同列に置いて鑑別することです。難病情報センターのレーベル遺伝性視神経症(LHON)解説では、発症が“一眼の視力低下、中心暗点で始まり”、不定期間をおいて対側眼にも同様の症状が出ること、亜急性に進行しうることが明記されています。
参考)302 Found
一方で黄斑疾患では、中心暗点に加えて「変視症(歪み)」が強いヒントになります。黄斑円孔の解説では、視力低下や変視症、中心暗点が症状として示され、患者の訴えが“欠け”と“歪み”のセットになりやすい点が臨床的に有用です。
参考)黄斑円孔と変視症
ここで、現場で使いやすい「中心暗点の入口トリアージ」を箇条書きで整理します。
- 変視症が強い:黄斑疾患(加齢黄斑変性、黄斑円孔、黄斑浮腫など)を優先
- 眼球運動痛を伴う:視神経炎など視神経病変を優先
- 急性~亜急性に片眼→反対眼:LHONなども含め神経眼科的評価を急ぐ
- 自覚と検査の不一致が目立つ:心因性視覚障害や検査信頼性の問題も並走して検討
中心暗点 疾患の視野検査(ハンフリー・ゴールドマン)と暗点の読み方
中心暗点の評価では、静的視野(自動視野計:ハンフリー視野計)と動的視野(ゴールドマン視野計)の特性を理解して使い分けることが重要です。池袋サンシャイン通り眼科診療所の解説では、ハンフリー視野計は中心付近を詳細に調べる検査として説明され、暗点(黒い部分)がどこに出るかを把握する基本が示されています。
同ページでは、ゴールドマン視野計は動いてくる光を用いる「動的量的視野検査」として位置付けられ、視野の広がりと感度を評価できる点が強調されています。
“暗点”はひとまとめにせず、絶対暗点と比較暗点に分けて考えると判断が安定します。池袋サンシャイン通り眼科診療所の視野検査説明では、暗点には絶対暗点と比較暗点があり、進行に伴い比較暗点が絶対暗点へ変化することが多い、と述べられています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/219e9182072ab450b3cd5bb77af0478a56c1b08b
中心暗点の訴えが強いのに視野の“真っ黒”が小さいケースでは、「比較暗点主体」「固視不安定」「検査手技の影響」などを疑う余地があり、ここで早合点すると見落としにつながります。
また、視野検査の読みでは「生理的盲点(マリオット盲点)」の位置を知っておくことが、中心暗点との混同を防ぐうえで必須です。池袋サンシャイン通り眼科診療所の説明では、中心より耳側約15度の位置にマリオット盲点が存在し、誰にでもある絶対暗点で、日常生活では自覚しにくいとされています。
中心暗点を疑って検査を出したのに、患者が示す“欠け”が実は盲点近傍の異常だった、あるいは盲点の扱いが信頼性評価(固視)に影響していた、という落とし穴は意外に起こります。
臨床のコツとして、「どの視野プログラムを選ぶか」も結果の解像度を左右します。中心訴えが強いのに24-2相当だけで“正常寄り”に見える場合、より中心密度が高い測定(10-2相当)が有用になり得る、という点は緑内障の非典型例でも指摘されています(中心暗点の訴えに対し10-2で欠損が明瞭化した症例報告)。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10035547/
ただし、視野は「患者の集中・理解・疲労」でブレやすい検査なので、数値だけで断定せず、眼底・OCT・自覚症状(変視症、羞明、眼球運動痛)との整合を必ず取ります。
中心暗点 疾患としての視神経炎・レーベル遺伝性視神経症の見落とし防止
中心暗点を“緊急度高”として扱うべき代表が、視神経炎とレーベル遺伝性視神経症(LHON)です。南東北眼科クリニックの視神経炎解説では、見ようとするところが見えない「中心暗点」や視力低下が症状として挙げられ、突然の発症が特徴と説明されています。
加えて、LHONは疾患背景を知っているかどうかで、紹介の速さ・説明の質が変わります。難病情報センターのLHON解説では、ミトコンドリア遺伝子変異が関与し、若年男性に好発し、一眼の中心暗点で始まり、数か月のうちに両眼の高度視神経萎縮に至り得るとまとめられています。
“意外に重要だが見落とされやすい情報”として、LHONでは光視症や羞明を自覚することがある点が記載されています。
黄斑疾患でも羞明は起こり得ますが、視神経系の文脈で「無痛性」「亜急性」「中心暗点+色覚・コントラストの違和感(※臨床的に疑う)」の組み合わせが出てきたとき、眼底所見が乏しくても神経眼科的視点を前面に出す価値があります。
また、診断確度を上げるには「鑑別リストを最初から持つ」ことが効きます。難病情報センターはLHONの鑑別として、特発性視神経炎、脱髄性視神経症、多発性硬化症関連、虚血性視神経症、圧迫性視神経症、中毒性・栄養障害性視神経症などを挙げています。
中心暗点の患者を前にしたとき、この鑑別群を一度“声に出して”確認するだけで、問診(薬剤・栄養・喫煙歴、神経症状、家族歴)と追加検査(MRIの要否など)の方向性がブレにくくなります。
参考リンク(LHONの概要・診断基準・鑑別の整理に有用)
中心暗点 疾患としての黄斑円孔・加齢黄斑変性と変視症・アムスラー
黄斑由来の中心暗点は、患者が「中心が暗い」だけでなく「線が曲がる」「マス目が歪む」と訴えることが多く、変視症の有無が鑑別の近道になります。黄斑円孔の解説では、黄斑円孔で視力低下・変視症・中心暗点が現れると明確に説明されています。
この“歪み+欠け”のセットは、患者説明にも使える実務的なポイントで、問診で引き出せると検査の無駄打ちが減ります。
セルフチェックとして有名なアムスラーチャートも、医療側が使いどころを理解して案内すると効果が上がります。ひきち眼科の解説では、アムスラーチャートは変視や中心暗点の有無を簡便にチェックでき、加齢黄斑変性や黄斑浮腫など黄斑疾患で自覚される症状だと述べています。
一方で同ページでは、前駆病変があると軽度の変視や小さな中心暗点をすでに自覚していることが多く、滲出型加齢黄斑変性に進行して症状が悪化しても気づきにくい可能性が示唆されています。
「アムスラーで毎日チェックしているから大丈夫」という安心感が逆に遅れにつながる場合があるため、医療者側は“変化の捉え方(昨日との違い)”と“受診トリガー(急な悪化・片眼差)”をセットで指導するのが現実的です。
臨床の現場向けに、中心暗点(黄斑疑い)で押さえるべき検査と所見を整理します。
- 視力:近見低下が目立つか、左右差が強いか
- 変視症:直線が曲がる/文字が歪む(黄斑の示唆)
- OCT:黄斑円孔、黄斑浮腫、網膜前膜、滲出性変化の評価に直結
- 視野:中心感度低下の“分布”を把握(症状と一致するか確認)
- 眼底:出血・滲出・牽引所見の有無(ただし初期は乏しいこともある)
参考リンク(変視症・中心暗点のセルフチェックと、加齢黄斑変性の文脈が理解しやすい)
中心暗点 疾患の独自視点:ロービジョン訓練と偏心視の導入タイミング
中心暗点の診療は「診断して終わり」ではなく、読書・書字・運転・顔認識などの生活機能に直結するため、リハビリ(ロービジョンケア)を早く視野に入れるほど患者満足度が上がります。難病情報センターのLHONの予後説明でも、中心視機能障害により読書・書字・運転・色識別・顔認識障害などで就学・就労に大きな支障を来すことが明記されています。
この文章は、医療者が“生活の困りごと”を具体的に聞き取るためのチェックリストとして、そのまま使える粒度です。
意外に知られていないのが、「中心暗点が大きい=訓練しても無意味」ではない、という点です。J-STAGEの報告では、大きな中心暗点の症例に対して、有効視野の意識化と偏心視訓練、色カードによる訓練などで、視覚を用いた日常生活が改善する可能性が示唆されたとされています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jorthoptic/45/0/45_045F116/_pdf
中心暗点の患者は“中心で見ようとして見えない”ことがストレスになりやすく、見える網膜部位(PRL:preferred retinal locus)を意識して使う発想に切り替えるだけで、読み速度や作業効率が改善するケースがあります(特に訓練導入が早いほど説明が通りやすい印象です)。
ロービジョン導入の実務ポイントを、中心暗点に特化して整理します。
- 説明の順番:原因疾患→予後の幅→「できる工夫」を同日に提示(絶望感を減らす)
- 依頼タイミング:視力が一定以下になるのを待たず、仕事・学業で困った時点で紹介
- 具体的支援:拡大読書器、スマホの読み上げ、コントラスト設定、照明環境、偏心視訓練
- 多職種連携:視能訓練士、ロービジョン外来、就労支援(障害認定の相談含む)
参考リンク(中心暗点が大きい症例でも訓練で改善余地がある点の根拠)