注視麻痺 症状
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注視麻痺 症状の定義と患者訴え(複視・動揺視)
注視麻痺は、左右(水平)あるいは上下(垂直)へ視線を向ける「共同運動」が障害され、意図した方向へ両眼がそろって動かない状態を指します。
患者の主訴としては、複視(特に側方視や上方視で悪化)、視線を動かしたときの見え方の不安定(動揺視)、読書や階段での見えづらさなどが前面に出ます。
軽症例では「完全に動かない」よりも、固視の維持困難や眼振が中心となり、本人は「目が合わない」「視線が定まらない」と表現することがあります。
臨床での最初の整理は、「水平注視麻痺か、垂直注視麻痺か、両方か」です。
参考)神経眼科疾患および脳神経の疾患の概要 – 07. 神経疾患 …
水平優位なら橋〜小脳・脳卒中を強く意識し、垂直優位なら中脳(梗塞・腫瘍など)や、経過によってはPSPも疑います。
参考)共同注視麻痺 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MS…
注視麻痺 症状と病変(橋・中脳)を結ぶ神経解剖の要点
水平注視は、橋の傍正中網様体(PPRF)や外転神経核、内側縦束(MLF)などのネットワークが重要で、ここが障害されると共同注視が破綻します。
橋背側の梗塞で両側性の水平注視麻痺と顔面神経麻痺を呈した症例報告もあり、橋病変では「眼球運動+顔面」などの組み合わせが手がかりになります。
垂直注視は中脳上部が重要で、垂直注視麻痺の一般的原因として中脳の損傷(脳卒中や腫瘍など)が挙げられています。
この整理ができると、画像の「どの断面を優先して見るか」も決まりやすくなります。PSPでは進行例で中脳被蓋部萎縮などが画像所見として挙げられます。
一方、急性の脳幹梗塞ではDWIで橋背側などの高信号が診断の助けになることがあります。
参考)https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051020125.pdf
注視麻痺 症状の鑑別(脳卒中・腫瘍・PSP・核間麻痺)
鑑別は「発症様式(急性/亜急性/慢性)」「合併する脳幹症状」「眼球運動のパターン(水平/垂直/輻輳・瞳孔)」で組み立てると実務的です。
急性発症なら脳卒中が一般的原因の一つで、水平注視障害を来しうるとされています。
垂直注視麻痺は中脳病変が代表的で、腫瘍なども原因になり得るため、頭痛・乳頭浮腫・意識変容など頭蓋内圧亢進サインをセットで確認します。
慢性進行で転倒が目立つ場合、PSPが重要で、厚労省資料でもPSPの特徴として易転倒性や核上性注視麻痺が挙げられています。
PSPでは初期には上下方向の随意運動が遅くなり、進行すると下方視ができなくなる(下方視障害が目立つ)という記載があり、「階段が怖い」「足元が見にくい」といった訴えの背景として理解すると有用です。
核間麻痺(INO)などの眼球運動障害も鑑別に入り、MLF障害で内転障害が起こること、MRIで微小梗塞が描出されない場合もある点に注意が必要です。
参考)水平眼球運動
注視麻痺 症状の画像診断(MRI)と救急での見落とし回避
急性期の注視麻痺では、責任病変が脳幹の小病変であることがあり、MRIでの検出が課題になり得ます。
橋背側の新鮮梗塞がDWIで示された報告があり、症状(眼球運動・顔面・構音など)と画像の突き合わせが診断精度を左右します。
また、PSPのような変性疾患では、進行例で中脳被蓋部萎縮や脳幹萎縮、第三脳室拡大などが画像所見として挙げられており、急性疾患と違って「構造の萎縮」を見に行く視点が必要です。
救急では、眼球運動がうまく評価できない(患者が指示理解できない、めまい・悪心が強い、頸部痛がある)ことも多いため、ベッドサイドの所見は“取りこぼし前提”で組み直します。MSDマニュアルでは脳卒中による麻痺で眼球が刺激に反応しない可能性にも触れており、強い注視障害は重症病変の可能性として扱うのが安全です。
参考)共同注視麻痺 – 07. 神経疾患 – MSDマニュアル プ…
そのうえで、DWI陰性でも臨床的に脳幹梗塞を疑う場合は、経過観察と再評価・再撮像の判断が重要になります(※施設の脳卒中プロトコルに従う)。
注視麻痺 症状の独自視点:転倒・嚥下とチーム医療(看護/リハ)
注視麻痺は「目の症状」に見えて、実際は転倒や誤嚥に直結し、ケア設計まで含めて初動が決まる所見です。
PSPでは早期から転倒が多く、姿勢反射障害が特徴で、転倒を繰り返しやすいことが厚労省資料に具体的に記載されています。
さらにPSPでは構音障害や嚥下障害が出現し、早期の嚥下障害は生命予後不良の可能性が示されているため、注視麻痺を見た時点で「食事場面の安全性」まで見越した連携が必要です。
この観点は検索上位の一般解説では薄くなりがちですが、医療現場では重要度が高いポイントです。
例えば病棟では、ベッド柵・離床センサーだけでなく、視線移動が苦手な患者に対して「足元・段差が見えにくい」前提で環境調整(照明、動線、段差表示)を整えるだけでも事故リスクが変わります。
リハビリでは、注視や追視を使った介入例が紹介されており、眼球運動の課題を全身のバランス課題に統合する発想が実装しやすい方法の一つです。
参考)【発症後4ヵ月】40代男性・脳梗塞・複視/バランス障害 – …
参考:PSPの症状(易転倒性、核上性注視麻痺、嚥下障害、画像所見、予後)を公的資料として確認できる
参考:共同注視麻痺の原因として脳卒中や垂直注視麻痺の中脳病変が要点としてまとまっている
【臨床で使えるチェック項目(例)】
✅ 眼球運動の方向別(水平/垂直)に、どちらが強いかをカルテに明記する。
✅ 複視の出方(側方視・上方視・下方視)と、動揺視の有無を記録する。
✅ 眼球運動以外の脳幹症状(構音・嚥下、顔面、歩行・姿勢)を同時に確認する。
✅ 急性なら脳卒中を最優先に、慢性進行ならPSPなど変性疾患の経過も拾う。
【ミニ表:所見→疑う方向】
| 注視麻痺のパターン | 疑う責任部位の方向性 | 臨床の次アクション(例) |
|---|---|---|
| 水平注視麻痺が目立つ | 橋(PPRF/外転神経核/MLFなど) | 脳幹梗塞・出血を想定し、他の脳幹徴候も同時評価 |
| 垂直注視麻痺が目立つ | 中脳上部(脳卒中・腫瘍など) | 頭痛・意識、瞳孔・乳頭浮腫なども確認し画像へ |
| 慢性進行+転倒が早期から多い | PSP(核上性注視麻痺、易転倒性) | 嚥下評価・転倒対策を含めチームで介入設計 |