調剤薬局の時間外加算は何時から?算定要件と平日の注意点

調剤薬局の時間外加算は何時から?

基本の時間枠

平日は朝8時前と夜18時以降、土曜は13時以降が目安

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算定の落とし穴

開局時間内なら「夜間・休日等加算」になる点に注意

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説明の重要性

患者トラブルを防ぐための事前の周知と掲示が鍵

調剤薬局の時間外加算は何時から

調剤薬局の現場において、事務スタッフや薬剤師が最も頻繁に判断を迫られ、かつ患者さんからの問い合わせが多い項目の一つが「時間外加算」です。「いつもと同じ薬をもらいに来ただけなのに、なぜ料金が高いのか」という不満を持たれないためにも、また、保険請求上の返戻(へんれい)リスクを回避するためにも、正確な知識が不可欠です。特に「何時からが時間外なのか」という境界線は、曜日やその薬局の届出状況によって複雑に変化します。

本記事では、2024年の診療報酬改定の動向も踏まえつつ、現場で即座に使える実践的な知識として、時間外加算の基本的なルールから、間違いやすい「夜間・休日等加算」との区別、さらには返戻を防ぐためのシステム設定のポイントまでを網羅しました。新人スタッフの教育資料としても活用できる内容となっていますので、ぜひ最後までご確認ください。

平日・土曜日の時間外加算と算定要件の基本

 

まず、時間外加算の原則的なルールを再確認しましょう。厚生労働省の規定によれば、時間外加算を算定できる基本的な時間帯は以下の通りです。

  • 平日:午前8時前、および午後6時(18時)以降
  • 土曜日:午前8時前、および午後1時(13時)以降
  • 休日:日曜日、国民の祝日、年末年始(12月29日~1月3日)は「休日加算」の対象
  • 深夜:午後10時(22時)~翌午前6時は「深夜加算」の対象

ここで最も重要なポイントは、これらが「薬局が表示する開局時間以外の時間」に行われた調剤に対して適用されるという点です。つまり、あなたの薬局が「平日9:00~18:00」を開局時間として届け出ている場合、18:00を過ぎてから急患対応などで調剤を行った場合に初めて「時間外加算」の算定要件を満たします。

点数についても整理しておきましょう。時間外加算は「基礎額(調剤技術料)の100%」が加算されます。これは非常に大きなウェイトを占めます。たとえば、通常の調剤基本料などが倍になるイメージですので、患者さんの自己負担額も目に見えて変わります。だからこそ、「何時から適用されるのか」というタイムスタンプの管理は極めて厳格に行う必要があります。

また、土曜日の取り扱いには特に注意が必要です。「土曜日は午前中のみ営業」という薬局が多い中、午後1時(13時)という境界線は絶対的な基準として存在します。しかし、もしあなたの薬局が「土曜日 9:00~15:00」を開局時間として届け出ている場合、13:00~15:00の間に調剤を行っても、それは「開局時間内」であるため、原則として「時間外加算」は算定できません(後述する「夜間・休日等加算」の対象となります)。この「届出上の開局時間」と「算定ルールの時間」のズレが、現場での混乱を招く最大の要因です。

夜間・休日等加算と時間外加算の決定的な違い

現場で最も混同しやすいのが、「時間外加算」と「夜間・休日等加算」の違いです。どちらも「夕方以降や休日に高い」という点では共通していますが、その適用条件は真逆と言っても過言ではありません。

項目 時間外加算 夜間・休日等加算
対象となる時間帯 開局時間 開局時間
主な加算点数 基礎額の100% 40点(処方箋受付1回につき)
適用の前提 急病等、やむを得ない事由 地域支援体制等の要件を満たす薬局

このように、「夜間・休日等加算」は、平日19時まで営業している薬局などが、その「開局時間内(例えば18:30など)」に調剤を行った場合に算定できるものです。対象時間は「平日:午後7時~午前8時」「土曜日:午後1時~午前8時」となっています。

具体例で考えてみましょう。
ケースA:開局時間が18:00までの薬局に、18:30に急患が来て調剤した。

→ これは開局時間「外」の対応となるため、「時間外加算(100%)」の対象となります。

ケースB:開局時間が20:00までの薬局に、19:30に患者さんが来て調剤した。

→ これは開局時間「内」ですが、平日19時以降という夜間・休日等加算の対象時間帯に含まれるため、「夜間・休日等加算(40点)」の対象となります。

この違いをスタッフ全員が理解していないと、レセプト請求時に重大なミスが発生します。特に、2024年の改定議論においても、薬局の地域支援機能や体制整備が重視されており、「夜間・休日等加算」を算定できる薬局は、単に遅くまで開いているだけでなく、地域医療への貢献体制(24時間対応など)が整備されていることが前提となっています。

特例の届出が必要なケースとは

通常のルールでは「開局時間内であれば時間外加算は算定できない」と説明しましたが、これには重要な例外が存在します。それが「時間外加算の特例」です。

この特例は、地域医療の確保に必要な体制を整備している薬局に対して認められるもので、事前に地方厚生局長等への届出が必要です。具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 地域の輪番制に参加している場合
  • 救急医療対策の一環として設けられている場合

これらの特例の届出を行っている薬局では、たとえその時間が「開局時間内」として表示されていても、平日のおおむね午後6時以降や休日などに調剤を行った場合、特例的に「時間外加算」と同等の点数を算定することが認められています(ただし、基礎額の100%がそのまま加算される形式など、詳細は点数表の注釈によります)。

なぜこのような特例があるのでしょうか。それは、救急医療や輪番制を担当する薬局の負担を評価するためです。深夜や休日に、地域の救急病院の門前として機能する薬局が、通常の点数しか算定できないのでは経営が成り立ちません。そうしたインフラを守るための仕組みがこの「特例」です。

自店舗がこの「特例」の届出を出しているかどうか、管理薬剤師や開設者は必ず確認しておく必要があります。もし届出を出しているにもかかわらず、通常の「夜間・休日等加算」で算定してしまっていれば、大きな収益の損失となります。逆に、届出の要件を満たしていない(例えば輪番制から外れた)のに特例で算定を続けていれば、指導や監査の対象となり、最悪の場合は返還を求められることになります。

参考:厚生局|保険調剤の理解のために(時間外加算の特例や届出に関する詳細な記載あり)

処方箋受付時のトラブル回避!患者さんへの説明術

「いつもと同じ薬なのに高い!」

窓口でこのようなクレームを受けた経験は、誰しもあるでしょう。特に時間外加算は金額が大きくなるため、患者さんの心理的な負担も大きくなります。トラブルを未然に防ぐためには、処方箋受付の時点でのコミュニケーションが極めて重要です。

まず大前提として、薬局内の見やすい場所に「時間外加算」や「夜間・休日等加算」に関する掲示を行う義務があります。しかし、掲示物を見ている患者さんは稀です。そのため、対象となる時間帯に受付をする際には、必ず口頭で一言添えるオペレーションを徹底しましょう。

効果的な声かけの例:
「現在は夜間(または時間外)の受付時間帯となりますので、厚生労働省の定めで夜間加算が追加となり、通常よりも〇〇円ほどご負担が増えますが、よろしいでしょうか?」

ポイントは、「当薬局が決めた値上げ」ではなく、「国の制度(厚生労働省の定め)」であることをやんわりと伝えることです。これにより、スタッフ個人への理不尽な怒りを回避することができます。

また、よくあるトラブルとして、「18:00ギリギリに入ったのに加算された」というケースがあります。時間外加算の判定基準は、基本的には「処方箋を受け付けた時間」です。しかし、患者さんは「店に入った時間」や「病院を出た時間」を基準に考えがちです。タイムカードやレセコンの受付時刻が証拠となりますが、1分1秒を争うような微妙なタイミングの場合は、事前に「今の時間からの受付ですと、加算の対象となります」と案内することが、信頼関係を守るための最善策です。

さらに、意外と知られていないのが「基礎額」の意味です。患者さんに「なぜこんなに高いのか」と詳しく聞かれた際、「お薬代そのものが高くなるわけではなく、調剤にかかる技術料に対する加算です」と説明できると、納得感が違います。薬の値段(薬剤料)は変わりませんが、薬剤師が時間外に対応するための人件費や光熱費などのコストとしての技術料が加算される仕組みであることを、専門用語を使わずに説明できるように準備しておきましょう。

返戻対策!システム設定と算定要件の落とし穴

最後に、管理者が最も恐れる「返戻(へんれい)」について、独自視点から解説します。返戻とは、レセプト請求の内容に不備があり、支払基金から請求が差し戻されることです。時間外加算において、返戻の原因となりやすいのが「届出上の開局時間と、レセコンの自動算定設定のズレ」です。

多くのレセコン(レセプトコンピュータ)には、時間帯に応じて自動的に加算を算定する機能がついています。しかし、この設定が「実際の届出」とリンクしていないケースが散見されます。

危険なパターンの例:

実際の届出開局時間は「18:00」までだが、少し延長して営業することが常態化しており、レセコンの設定では「18:30」から時間外加算がつくようになっている。

この場合、18:00~18:30の間に来局した患者さんに対して、本来なら「時間外加算」を算定できる(開局時間外の対応のため)にもかかわらず、算定漏れが発生します。これは「逆・返戻(請求漏れ)」とも言える損失です。

逆に、届出を「19:00」まで延長したのに、レセコン設定を「18:00以降は時間外」のままにしていた場合、18:30の調剤に対して誤って時間外加算を算定してしまいます。これは明らかな不当請求となり、返戻どころか個別指導での指摘事項となります。

また、算定要件の一つである「薬剤服用歴(薬歴)への受付時間の記載」も忘れがちです。時間外加算を算定した場合は、必ず薬歴に「受付時間:18時45分」といった具体的な記録を残す必要があります。自動入力されるシステムであれば問題ありませんが、手動記載が必要なシステムの場合、ここが抜けていると、監査の際に「加算の根拠がない」とみなされるリスクがあります。

さらにマニアックな視点ですが、災害時やシステム障害時などの「緊急やむを得ない場合」の解釈も重要です。通常、開局時間内の対応には時間外加算はつきませんが、近隣の災害などで突発的に患者が殺到し、やむを得ず時間を延長して対応したようなケースでは、その詳細を摘要欄に記載することで算定が認められる場合もあります。こうしたイレギュラーな対応こそ、知識の差が収益とリスク管理の差となって現れます。

参考:令和6年度診療報酬改定の概要(調剤)|時間外加算等の最新ルールを確認

調剤薬局の経営において、時間外加算は正当な対価を得るための重要な権利です。しかし、その権利を行使するためには、厳格なルールの理解と、患者さんへの誠実な説明、そして正確なシステム管理が求められます。今回の記事を参考に、自店舗の運用を今一度見直してみてください。


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