調剤料と同一薬剤と用法違いと外用
調剤料 同一薬剤 用法違い 外用の基本ルール(1調剤・3調剤まで)
外用薬の薬剤調製料(いわゆる外用の調剤料のカウント)は、投与日数にかかわらず「1調剤につき算定」するのが大原則です。
また、1回の処方箋受付で外用が4調剤以上ある場合でも、算定できるのは3調剤までという上限があります。
ここで重要なのが、外用薬には「同一有効成分で同一剤形の外用薬が複数ある場合は、その数にかかわらず1調剤として取り扱う」という明確な整理が置かれている点です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/001521414.pdf
つまり「同じ成分・同じ剤形の外用が複数行に分かれている」だけで、安易に調剤料を増やす設計にはなっていません。
現場で混乱が起きやすいのは、同じ薬(あるいは同じ成分の別銘柄)が、行を分けて記載されている・用法が違う・部位が違う、といったケースです。
しかし、点数表のロジックはまず「同一有効成分」「同一剤形」の条件でまとめる方向に働くため、ここを軸に考えると判断がブレにくくなります。
調剤料 同一薬剤 用法違い 外用は別調剤になる?(同一剤形の考え方)
結論から言うと、「用法が違う」こと自体が、外用で自動的に“別調剤”を成立させる根拠にはなりにくい、という整理になります。
外用に関する明文は「同一有効成分で同一剤形の外用薬が複数ある場合は1調剤」という形で、例外条件として“用法違いなら別”とは書かれていないためです。
一方、内服の薬剤調製料では「服用方法が異なる場合」など、別剤として算定できる例外が通知上はっきり列挙されています。
この内服の例外を、そのまま外用へ“類推”してしまうのが、実務での誤解ポイントになりがちです。
では、外用で「用法違い」「使用タイミング違い」「朝だけ・夜だけ」などの指示があるときはどう考えるか。
基本は、同一有効成分×同一剤形の複数が並んでいるなら、まず1調剤として取り扱う(=調剤料を増やさない)方向で組み立て、別扱いにするなら“なぜ別物として調製が必要か”を処方意図・調剤行為の違いとして説明できる状態が必要です。
実務での落としどころとしては、次の順で確認すると安全です。
- 同一有効成分か(成分名で一致するか)。
- 同一剤形か(例:軟膏同士、クリーム同士、点眼同士など)。
- 同一剤形かつ同一有効成分が複数 → 原則1調剤として扱う。
- 別調剤で請求したい事情がある → 処方医へ確認(疑義照会)し、調製上の区別が必須である根拠を残す。
調剤料 同一薬剤 用法違い 外用で査定を避ける薬歴・摘要(審査で見られる点)
審査側は、外用の“数え方”そのものよりも、「同一有効成分・同一剤形が分割されているのに、なぜ別調剤として請求しているのか」を見ます。
そのため、別調剤に寄せる運用を取るなら、疑義照会の要否と記録の整合性(薬歴・処方箋への記載・レセプト摘要の一貫性)が重要になります。
実務で特に守りたいのは、薬剤師法上の「疑義があるときは問い合わせて確かめた後でなければ調剤してはならない」という原則です。
用法違いで同一薬剤を“あえて”分ける場合は、医師側の意図(例:症状の時間帯差、部位差、塗布量差、患者の認知・アドヒアランス配慮など)があることが多く、疑義照会して処方意図を言語化しておくと後工程が安定します。
現場で効く具体策は次のとおりです。
- 処方医へ確認した内容を、薬歴に「回答の要点」として残す(長文でなく要点でよい)。
- 処方箋への記入や記録は、後から追える形にしておく(回答内容の要点が分かるように)。
- 別調剤で請求するなら、摘要欄に“区別が必要な理由”が伝わる短文を置く(例:使用部位明確化のため別包・別指示、など)。
「同一成分・同一剤形が複数行=必ず査定」ではありませんが、説明のない“機械的な分割請求”は疑われやすい、というのが現実的なリスク感です。
参考:調剤の基本ルールと留意事項(外用の1調剤、同一有効成分・同一剤形の扱いなど)
調剤料 同一薬剤 用法違い 外用の具体例(点眼・軟膏・貼付剤)
ここでは「同一薬剤」「用法違い」「外用」で現場が迷いやすい例を、ルールに照らして整理します(※最終判断は地方厚生局・審査支払機関の運用や個別事例の確認が必要です)。
例1:同一成分の点眼が用法違い
同一有効成分で同一剤形(点眼)が複数並び、用法が「1日3回」「1日4回」のように違うだけなら、原則は1調剤として取り扱う方向が基本です。
もし、どうしても別に調製・別ラベル・別管理が必要という事情があるなら、疑義照会で意図確認し、薬歴と摘要で説明できる状態にします。
例2:同一成分の外用(軟膏)を部位別に分ける
同一有効成分×同一剤形(軟膏)が、手と顔で別用法・別用量として並ぶケースは、患者安全の観点では分けたくなる場面です。
ただし点数上は「同一有効成分・同一剤形は1調剤」の考え方が先に立つため、分けて請求するなら“調剤行為として別物”にする必要性を、医師の意図と合わせて確認・記録しておくのが安全寄りです。
例3:貼付剤の剤形差(独自の注意点)
外用で“同じ鎮痛消炎系”でも、剤形の違い(例:テープ剤とパップ剤など)が争点になることがあります。
剤形の整理は通知等で扱いが示されることがあるため、同一剤形かどうかが曖昧なときは、過去の疑義解釈・行政資料の確認を前提に運用を固めるのが現実的です。
調剤料 同一薬剤 用法違い 外用の独自視点(アドヒアランスと医療安全で“分ける価値”)
検索上位の多くは「算定できる/できない」の結論に寄りがちですが、現場では“請求の正しさ”と同じくらい“患者が間違えない設計”が重要です。
同一薬剤の外用は、用法違い(朝だけ、入浴後、症状時のみ等)や部位違いがあるほど、患者側で取り違えが起こりやすく、塗布量過多・部位誤り・ステロイドランクの混同などに直結しやすい領域です。
ここでのポイントは、「分けて渡す=必ず別調剤で請求」ではない、という割り切りです。
算定は原則に沿って1調剤に寄せつつ、交付の工夫(ラベル、用法の強調、色分け、薬袋のコメント、指導文)で患者安全を取りにいく、という二層構造が作れます。
具体的には次が効きます。
- 薬袋コメントを“用法違い”の違いが一目で分かる文にする(例:朝のみ、入浴後、症状の強い時のみ等)。
- 同じ成分の外用が複数あるときは、使用部位の図示(簡単な手書きでも)を提案し、誤用リスクを下げる。
- 疑義照会で「部位別に明確化したい」「患者が取り違える」など安全上の理由を共有し、処方側の書き方を整える提案につなげる。
外用は「1調剤10点をどう取るか」という視点だけでなく、誤用が起きたときの不利益が大きい領域です。
だからこそ、算定はルールに忠実に、交付は患者中心に、記録は審査で説明できる形に、という三点セットで運用すると、現場のストレスが下がります。

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