腸腰筋膿瘍の原因菌と大腸菌とMRSA

腸腰筋膿瘍 原因 菌

腸腰筋膿瘍:原因菌の全体像
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原因菌は「背景疾患」で変わる

原発性は黄色ブドウ球菌系、続発性は消化器・尿路由来の腸内細菌や嫌気性菌が混ざりやすく、まず病態分類が抗菌薬選択の起点になります。

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画像と培養はセットで考える

造影CT/MRIで膿瘍を同定しつつ、血液培養+膿培養(必要時は抗酸菌検査)で原因菌を確定し、de-escalationまで見据えます。

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ドレナージは治療と診断

膿量を減らすだけでなく、原因菌同定と感受性に直結します。多房性やドレナージ困難例では戦略が変わります。

腸腰筋膿瘍の原因菌:原発性と続発性

腸腰筋膿瘍(iliopsoas abscess)は、腸腰筋内に膿が貯留する状態で、原因として「遠隔感染からの血行性波及(原発性)」と「隣接臓器・骨盤内・脊椎などからの直接波及(続発性)」に大別して考えると、原因菌の見立てが整理しやすくなります。

日本の多施設後ろ向きコホートでは、続発性が72%と多数で、原発性が28%でした。

同研究では、起因菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が最も多く、MRSAによる症例も一定割合(11%)含まれていました。

一方で、国内の解説では起因菌として大腸菌、結核菌、嫌気性菌、MRSAなどが挙げられ、病態(消化器・尿路・筋骨格)を起点に「どの菌を疑うか」を調整する重要性が示されています。

この「原発性=黄色ブドウ球菌寄り、続発性=腸内細菌/嫌気性菌寄り」という軸は臨床的に有用ですが、現実には脊椎感染(化膿性脊椎炎など)を起点とした続発性でも黄色ブドウ球菌が主役になり得る点は、初期治療で見落としやすい落とし穴です。

腸腰筋膿瘍の原因菌:黄色ブドウ球菌とMRSA

黄色ブドウ球菌は腸腰筋膿瘍の起因菌として頻出で、複数の国内報告でも「最多」とされる傾向が示されています。

原発性では、皮膚軟部組織感染・血流感染などから血行性に波及し、結果として腸腰筋に膿瘍を形成する経路が典型的に想定されます。

実臨床で注意したいのは、MRSAが「医療曝露が明確でないケース」でも起因菌となり得る点で、菌血症に腸腰筋膿瘍を合併し、ドレナージ困難でも長期抗菌薬治療で奏効した症例報告が存在します。

また、宮城県のデータでは黄色ブドウ球菌感染群は他菌種群と比べ、敗血症性ショックの頻度が高いなど重症化と関連する所見も報告されています。

このため、初療で「黄色ブドウ球菌(含MRSA)カバーが必要か」を判断する際は、病態(原発性の疑い、脊椎感染の合併、菌血症所見)と重症度(ショック、臓器障害)を一体で評価するのが安全です。

腸腰筋膿瘍の原因菌:大腸菌と嫌気性菌

続発性腸腰筋膿瘍では、消化器疾患(虫垂炎憩室炎クローン病など)や尿路感染症など、腸腰筋に近い臓器の炎症が背景として重要になります。

この文脈では、大腸菌を含む腸内細菌科や嫌気性菌が起因菌として挙げられており、混合感染の可能性も踏まえた初期カバーが必要になります。

実際、宮城県コホートでもE. coliが起因菌として同定されており、続発性の一部でグラム陰性菌が関与することが臨床データとして裏づけられています。

意外に見落とされやすいのは「画像で腸腰筋膿瘍が見えた段階で、原因臓器の探索が遅れる」パターンです。宮城県コホートでは続発性の起源として化膿性脊椎炎が最多でしたが、尿路感染や消化管感染なども起源として挙げられており、原因臓器を取り違えると“必要な菌カバー”がズレます。

したがって、原因菌の推定は「膿瘍=筋感染」と単純化せず、「どこから波及した膿瘍か」を同時に詰めるのが、抗菌薬選択の精度を上げる近道です。saiseikai+1​

腸腰筋膿瘍の原因菌:結核菌の鑑別

腸腰筋膿瘍は化膿性(pyogenic)が多い一方、結核菌が起因菌となるケースも鑑別に入ります。

結核性脊椎炎(脊椎カリエス)など筋骨格感染症が背景となり得ることが一般向け解説でも触れられており、腸腰筋膿瘍を見た段階で結核の可能性を意識することが推奨されます。

さらに、繰り返す腸腰筋膿瘍から結核性脊椎炎と診断された報告では、長期反復例では結核も原因菌として鑑別に挙げる必要があると述べられています。

「抗菌薬が効きにくい」「炎症反応の割に症状が乏しい」「膿瘍が遷延・再燃する」などのとき、抗酸菌検査(抗酸菌培養や必要に応じて核酸検査)を“最初からセット”で出しておくかどうかが、その後の診療スピードを大きく左右します。jstage.jst+1​

結核を疑う根拠が弱い段階でも、再燃を繰り返す症例や脊椎病変が示唆される症例では、検体採取の機会(ドレナージ時)を逃さない設計が重要です。jstage.jst+1​

腸腰筋膿瘍の原因菌:培養の落とし穴(独自視点)

腸腰筋膿瘍では、血液検査で炎症反応は出ても単純X線では見つけにくく、造影CTやMRIで診断されることが多いとされます。

ここで独自視点として強調したいのは、「画像で膿瘍が確定した時点で抗菌薬を開始しやすいが、その結果として培養陰性化が起き、原因菌が特定できず最終的に治療期間と薬剤スペクトラムが広がる」点です。

実際、宮城県コホートでも原因菌不明(unknown)が一定割合(39%)を占めており、微生物学的確定が難しい現実が示されています。

ドレナージは「膿を減らす治療」であると同時に、「原因菌を見極め、効果的な抗菌薬を決定するために必要」と明記されており、診断学としての価値が大きい手技です。

したがって、可能な限り血液培養を先行し、ドレナージで膿培養(必要なら抗酸菌)まで揃えてから、初期治療→感受性に応じた狭域化、という流れを設計すると、結果的に患者安全と抗菌薬適正使用の両方に寄与します。saiseikai+1​

権威性のある日本語の参考リンク(原因・起因菌・診断(CT/MRI)・治療(抗菌薬/ドレナージ)の要点)

済生会:腸腰筋膿瘍の症状・原因(起因菌)・診断・治療の解説

関連論文(疫学、続発性の割合、起因菌として黄色ブドウ球菌とMRSA、死亡率など)

Epidemiological features and outcomes of patients with psoas abscess: A retrospective cohort study (Ann Med Surg, 2021)