ブレディニンの効果と適応症
ブレディニンの作用機序と免疫抑制効果
ブレディニン(一般名:ミゾリビン)は、1971年に八丈島の土壌から分離された糸状菌の培養濾液中から発見された免疫抑制薬です。この薬の作用機序は、核酸代謝におけるプリン合成系を阻害することにあります。
参考)ブレディニン
具体的には、イノシン一リン酸合成酵素(IMPDH)およびグアノシン一リン酸合成酵素を選択的に阻害し、細胞分裂のS期でDNA合成を停止させることにより効果を発揮します。この作用により、リンパ球の増殖が強力に抑制され、免疫応答が調整されます。
参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se39/se3999002.html
プリン合成系の阻害は、細胞内でリン酸化されたミゾリビンがイノシン酸からグアニル酸に至る経路を拮抗阻害することで実現されます。これにより、免疫を担当するリンパ球の核酸合成が特異的に阻害され、液性・細胞性免疫応答の両方に作用します。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00000241.pdf
ブレディニンの治療効果と適応疾患
ブレディニンは以下の疾患に対して適応が認められています:
参考)免疫抑制剤「ブレディニンOD錠25、同OD錠50」新発売のお…
- 腎移植における拒絶反応の抑制:移植後の免疫反応を効果的に抑制します
- 原発性糸球体疾患を原因とするネフローゼ症候群:副腎皮質ホルモン剤のみでは治療困難な場合に限定されます
- ループス腎炎:持続性蛋白尿やネフローゼ症候群を呈する症例に使用されます
- 関節リウマチ:他の抗リウマチ薬で十分な効果が得られない場合に適応されます
臨床試験において、メトトレキサートと比較して効果は穏やかですが、比較的安全な薬剤として評価されています。また、抗サイトメガロウイルス作用も報告されており、感染症の予防効果も期待されています。
関節リウマチ患者に対する市販後調査では、腎機能障害や間質性肺炎があり、メトトレキサートを使用できない患者でも安全に使用できることが確認されています。
参考)関節リウマチ患者に対するミゾリビンの腎機能別有効性と安全性な…
ブレディニンの重大な副作用と骨髄抑制リスク
ブレディニンの使用において最も注意すべき重大な副作用は骨髄機能抑制(2.19%)です。これには以下の症状が含まれます:
参考)ブレディニン錠25の基本情報(副作用・効果効能・電子添文など…
その他の重大な副作用として、感染症(1.32%)があり、肺炎、髄膜炎、敗血症、帯状疱疹等が報告されています。B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎やC型肝炎の悪化も観察されることがあります。
間質性肺炎は発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常を伴って発現し、投与中止と副腎皮質ホルモン剤の投与が必要となります。急性腎障害(0.04%)も重要な副作用で、血液透析等の対応が必要になる場合があります。
肝機能障害・黄疸(1.74%)では、AST、ALT、ALPの上昇等を伴い、定期的な肝機能検査が必要です。
参考)ブレディニン®︎(ミゾリビン)の特徴について【免疫抑制薬】 …
ブレディニンの使用法と服薬指導のポイント
ブレディニンの効果的な使用には適切な投与方法の理解が重要です。最近の研究では、1日3回に分けて服用するよりも、1日1回で服用する方が血中濃度が高まり効果が良いことが報告されています。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答
用法・用量は適応症により異なり、腎移植における拒絶反応の抑制では初期量1日2~3mg/kg、維持量1日1~3mg/kgで1~3回分割経口投与が基本となります。腎機能障害のある患者では薬物の排泄が遅延するため、血中濃度を測定し投与量を調整する必要があります。
参考)免疫抑制薬|東京女子医科大学病院 腎臓内科
服薬アドヒアランスの向上を目的として、口腔内崩壊錠(OD錠)も開発されており、水なしでも水と一緒でも服用可能で、高齢者や嚥下機能が低下した患者の利便性向上に寄与しています。
服用中は免疫が抑制されるため、手洗いやうがいを励行し、規則正しい生活を心がける必要があります。また、催奇形性を疑う報告があるため、妊娠中の使用は禁忌とされています。
参考)ブレディニン|免疫抑制薬(内服薬)|くすり事典|よくわかる腎…
ブレディニン治療における独自の高尿酸血症対策
ブレディニン治療において見過ごされがちな副作用として高尿酸血症があります。これは一般的な免疫抑制薬では見られない、ブレディニン特有の現象です。
参考)全日本民医連
ミゾリビンの代謝過程において、プリン体代謝経路が阻害されることで尿酸の産生が増加し、同時に腎臓からの尿酸排泄も低下するため、血中尿酸値の上昇が起こります。臨床データでは、副作用の半数以上が投与開始後3カ月以内に発現しており、早期からの監視が重要です。
興味深いことに、腎機能に問題がない症例においても高尿酸血症が発症することが報告されており、すべての患者で注意深い経過観察が必要です。多くの場合、高尿酸血症は経過観察で改善するとされていますが、急性腎不全に進展する可能性もあるため、定期的な尿酸値測定と適切な対策が求められます。
参考)https://jsn.or.jp/journal/document/44_7/543-546.pdf
この独自の副作用プロファイルを理解することで、より安全で効果的なブレディニン治療が可能になります。