分泌性流涙症 点眼薬 病態と治療
分泌性流涙症 点眼薬の薬効とエビデンス
分泌性流涙症に対して国内で「流涙症治療点眼剤」として承認されている代表的薬剤が、局所麻酔薬成分オキシブプロカイン塩酸塩を含むラクリミン点眼液0.05%です。
添付文書上の効能・効果には「分泌性流涙症」と明記されており、1日2~5回、1回1~2滴点眼する用法で過剰な涙液分泌を抑制することが示されています。
本剤の薬理は、角結膜の知覚神経を一過性に麻酔することで三叉神経反射弓を遮断し、反射性の涙液分泌を抑えるという点にあります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00053099.pdf
臨床試験ではプラセボに比べ、涙液分泌量がおよそ30%程度抑制されたと報告されており、過敏性の高い眼表面に由来する流涙に有効とされています。
ただし、この作用機序から、症状コントロールはあくまで一時的であり、原因疾患そのものを治す薬ではないことを理解しておく必要があります。
長期連用で角膜障害(びらん・混濁・剝離など)が起こり得ることも添付文書に記載されており、実臨床では投与期間や頻度のコントロール、定期的な角膜所見のチェックが欠かせません。
参考)医療用医薬品 : ラクリミン (ラクリミン点眼液0.05%)
分泌性流涙症 点眼薬と診断の前提:導涙性との鑑別
流涙症は大きく、涙液分泌亢進による「分泌性流涙」と、涙道狭窄や閉塞など流出障害による「導涙性流涙」に分けられることが古くから整理されています。
分泌性流涙は逆さまつげ、結膜炎、角膜炎、ドライアイなど、眼表面の刺激により涙が作られすぎる状態とされる一方、導涙性流涙では涙点から鼻腔までの涙道に狭窄・閉塞があり、涙があふれ出る状態が問題となります。
ラクリミンなど分泌性流涙症 点眼薬の適応は、あくまで「過剰分泌」が主体のケースであり、涙道閉塞が疑われる場合には、点眼薬に頼る前に涙道造影や涙道内視鏡検査などの評価が優先されます。
涙点狭小や鼻涙管閉塞など導涙性の病態では、点眼薬で涙を減らしても根本的な解決にはならず、涙道ブジー、シリコンチューブ挿入術、場合によっては涙嚢鼻腔吻合術(DCR)など外科的治療が必要になることが多い点を押さえておく必要があります。
また、患者側からは「いつも涙目=ドライアイではない」「目薬を増やしても治らない」という誤解が生じやすいため、診察室では分泌性と導涙性の違いを図示して説明し、点眼治療の限界を共有しておくことが望まれます。
看護師や視能訓練士が問診・観察の段階で「屋外で風に当たると悪化する」「うつむくと涙がこぼれる」「目やに・膿性分泌が多い」などの訴えパターンに注目すると、病態の推定や医師への情報提供に役立ちます。
参考)なみだ目(流涙症)-原因・症状、治療について|川越眼科手術と…
分泌性流涙症 点眼薬と原因疾患別治療:抗菌薬・抗アレルギー薬・ステロイド
分泌性流涙症では、点眼薬による治療は多くの場合、専用の流涙症治療薬だけでなく、背景にある結膜炎や角膜炎、アレルギー性炎症に対する薬剤とセットで考える必要があります。
細菌性結膜炎が原因の場合、第一選択になるのは抗菌点眼薬であり、細菌の負荷を減らすことで結膜炎に伴う刺激が軽減し、結果として涙液分泌が減少します。
ウイルス性結膜炎には特異的な有効点眼薬が存在しない一方で、二次感染を防ぐ目的で抗菌点眼薬が併用されることがあります。
アレルギー性結膜炎では抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー点眼薬が主体となり、重症例ではステロイド点眼薬を短期的に追加する戦略が一般的です。
参考)瑞浪市の眼科|かとう眼科クリニック|ドライアイ・結膜炎・もの…
ステロイド点眼薬は炎症抑制効果が高いぶん、眼圧上昇や白内障進行などの副作用リスクを内在しており、流涙が目立つからといって安易に漫然投与することは避けなければなりません。
実際には、「抗アレルギー薬をベースに、急性増悪期だけステロイドを短期追加し、その後速やかに減量・中止する」「定期的に眼圧を測定する」といった運用が推奨されます。
さらに、ドライアイが背景にある場合には、ヒアルロン酸製剤などの保湿点眼や、マイボーム腺機能不全に対する温罨法・眼瞼清拭など、涙液層を安定させる介入も重要です。
このように、分泌性流涙症 点眼薬は、原因疾患を見極めたうえで、抗菌薬・抗アレルギー薬・ステロイド点眼薬と組み合わせる「パッケージ治療」の一部として位置づけると理解しやすくなります。
分泌性流涙症 点眼薬の意外な注意点と現場での工夫(独自視点)
分泌性流涙症 点眼薬は、局所麻酔の作用により眼表面の知覚が鈍くなるため、患者によっては「目が楽になった」と過度に評価し、自己判断で使用頻度を増やしてしまうリスクがあります。
とくにコンタクトレンズ装用者や高齢者では、角膜知覚低下に気づかないままレンズ装用を続け、微細な角膜障害を見逃して重症化させてしまうおそれがあるため、装用指導と併せて慎重にフォローする必要があります。
まだ広く共有されていないポイントとして、分泌性流涙症のなかには、眼表面が過敏になりすぎている「神経原性」の側面を持つ症例が含まれていることが挙げられます。
このような症例では、ドライアイや角膜上皮障害の治療とともに、ブルーライト曝露やVDT作業時間、眼瞼痙攣など神経過敏を助長する要因の評価も重要であり、単純に「涙を減らす薬」で対処しようとすると、かえって異物感や表面障害を長期化させる可能性があります。
現場での工夫としては、
- 点眼前後の自覚症状(しみる感じ、違和感の変化)を患者に記録してもらう
- スマホ画面やエアコン風など、生活環境因子を問診テンプレートに組み込み、流涙の増悪因子を可視化する
- 涙道疾患が疑われる場合は、早期に専門施設への紹介基準をクリニック内で共有する
といった取り組みが考えられます。
これにより、点眼薬への過度な依存を避けつつ、病態に即した介入へとスムーズに切り替えることが可能になります。
分泌性流涙症 点眼薬使用時の観察ポイントと患者説明
看護師・コメディカルが分泌性流涙症 点眼薬を使用する患者をフォローする際には、「涙の量」だけでなく、眼表面や付属器の変化を系統的に観察することが大切です。
具体的には、角膜・結膜の充血、糸状角膜炎様の所見、眼瞼皮膚のただれや発赤、膿性分泌の有無、視力変動、眼痛や異物感などをチェックし、異常があれば速やかに医師へ報告します。
患者説明では、
- 「この点眼薬は涙を『止める薬』というより、過敏な反射を一時的に弱める薬である」
- 「原因そのもの(逆さまつげ、結膜炎、涙道閉塞など)を治す治療とセットで使う」
- 「自己判断で回数を増やしたり、他人に勧めたりしない」
といったポイントを分かりやすく伝えることが重要です。
あわせて、点眼後の一時的なぼやけやしみる感覚、まれに起こる角膜障害のサイン(強い痛み、視力低下など)について事前に説明しておくと、患者側も異変に気づきやすくなります。
さらに、涙道疾患を扱う専門クリニックなどでは、なみだ目の診断フローや治療方針が図入りで解説されていることが多く、患者教育に利用できる資料が公開されています。
印刷物や院内掲示と組み合わせることで、「なぜ点眼薬だけでは不十分なことがあるのか」「どのタイミングで検査や手術が必要になるのか」を視覚的に共有でき、治療への納得感を高めることにつながります。
分泌性流涙と導涙性流涙の概念、原因疾患ごとの治療と点眼薬の位置づけを包括的に解説している医療者向け総説として、以下の資料が病態整理の参考になります(病態・診断パートの参考)。
ラクリミン点眼液0.05%の効能・用法・副作用や国内臨床試験の結果など、分泌性流涙症 点眼薬の詳細情報が整理されており、薬剤理解に有用です(薬理・用量・安全性パートの参考)。
流涙症と涙道疾患の原因・検査・治療オプションを図付きで説明しており、患者説明や紹介基準を考える際に役立つページです(涙道疾患・鑑別パートの参考)。