膨隆虹彩 とは
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膨隆虹彩 とは:定義 と 病態生理(瞳孔ブロック)
膨隆虹彩(iris bombé)とは、後房から前房への房水移動が障害されて後房圧が上がり、その圧で虹彩周辺部が前方へ弓状に押し出される状態を指します。
臨床的には「瞳孔ブロック」を背景に、隅角(前房隅角)が物理的に閉塞し、房水流出が遮断されて眼圧が急上昇し得る、という連鎖で理解すると整理しやすいです。
とくに狭隅角の素因がある眼では、散瞳により虹彩と水晶体の接触が増えて房水の“通り道”が詰まりやすくなり、膨隆虹彩→隅角閉塞へ進みやすい点が重要です。
医療者が押さえるキーワード(覚えやすい順)
- 房水:後房で産生→瞳孔を通過→前房→線維柱帯→シュレム管へ流出。
- 瞳孔ブロック:虹彩‐水晶体接触の増大で房水が前へ行けない状態。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/909c6fa4481fab7e5ace6b397ff80303cf4ee745
- 膨隆虹彩:後房圧で虹彩が前方弯曲し、隅角を塞ぐ形になる所見。
- 隅角閉塞:線維柱帯から排出できず眼圧上昇につながる状態。
膨隆虹彩 とは:原因(ぶどう膜炎・後癒着・水晶体)と 続発緑内障
膨隆虹彩の代表的な原因の一つが、前部ぶどう膜炎などで虹彩と水晶体が癒着する「虹彩後癒着」で、瞳孔全周に及ぶと房水移動が妨げられて膨隆虹彩を起こし、続発緑内障の原因になります。
閉塞隅角緑内障は原発性だけでなく続発性もあり、ぶどう膜炎などの併発疾患で隅角の機械的閉塞が起こり得る点は、原因検索の実務で効いてきます。
また、加齢で水晶体が厚くなると虹彩が前方へ押され隅角が狭くなり、狭隅角→瞳孔ブロック→膨隆虹彩という経路に乗りやすくなるため、前眼部形態(前房深度・水晶体厚)も「原因の一部」として扱うのが安全です。
原因の見分け方のヒント(所見の組み合わせで推定する)
- ぶどう膜炎が背景:前房炎症所見+後癒着+眼圧上昇(ただし炎症期は低眼圧もあり得るため、眼圧だけで決めない)。jvoc+1
- 水晶体要因が強い:高齢+浅前房+散瞳で悪化、など形態要因が前面に出る。
- 併発疾患で牽引性:新生血管膜の収縮や炎症後瘢痕で虹彩が隅角へ牽引される機序もあり、単純な瞳孔ブロックだけでは説明できないときに疑う。
膨隆虹彩 とは:症状・徴候(急性閉塞隅角緑内障)と 鑑別
急性閉塞隅角緑内障の症状は、重度の眼痛・充血・視力低下・虹暈に加えて、頭痛、悪心、嘔吐など全身症状を伴うことがあり、内科・救急の鑑別で紛れやすいのが現場的な落とし穴です。
診察では、結膜充血、角膜混濁(浮腫)、中等度散瞳で固定した瞳孔、前房炎症などが典型とされ、眼圧は40~80mmHg程度の高値になり得ます。
慢性閉塞隅角緑内障では開放隅角緑内障に似た経過を取り、隅角鏡検査で周辺虹彩前癒着(PAS)を伴うことがあるため、「膨隆虹彩のエピソードを経た結果」としてPASが残る、という時間軸の理解も重要です。
救急での見落とし予防チェック(短時間で回す)
- 眼痛+嘔気の訴えがある:眼の診察を“必ず”追加する(角膜混濁・充血・散瞳固定)。
- 眼圧測定:急性は眼圧測定と臨床所見で診断を固める。
- 反対眼の評価:患眼で隅角鏡が難しい場合でも、反対眼が狭隅角かどうかが示唆になる。
- 散瞳薬・抗コリン薬の確認:誘発要因になり得るため、処方歴や使用歴を拾う。
参考:緑内障の病型(患者説明にも使える公的解説)
緑内障全体像、隅角(線維柱帯・シュレム管)や閉塞隅角の説明、検査・治療の整理(一般向けだが用語確認に便利)
膨隆虹彩 とは:検査(隅角検査・眼圧・前房深度)と 評価手順
急性例では、眼圧測定と臨床所見で診断を確定し、隅角鏡検査は角膜混濁などで困難な場合があるため、無理に“その場で完璧”を目指さず反対眼も含めた評価へ切り替える判断が実務的です。
散瞳点眼薬を投与・処方する前に前房深度を評価すべきで、隅角鏡が使えない場合はペンライトで鼻側虹彩に影ができるかを目安に、狭隅角を大まかに推定できるとされています。
緑内障診療全体では、隅角検査(隅角鏡)に加えて、眼底検査、OCT、視野検査などを組み合わせて、視神経(乳頭)と視野の変化で診断・進行判定を行う、という枠組みを共有しておくとチーム連携が円滑になります。
現場向け「評価の順番」例(救急〜外来導線を意識)
- バイタルと疼痛・嘔気の重症度確認(嘔吐が強いほど眼以外に引っ張られやすい)。
- 視力(可能なら)→対光反射→瞳孔径→結膜充血→角膜混濁の有無。
- 眼圧測定(高眼圧なら急性閉塞隅角を最優先で疑う)。
- 可能なら隅角鏡検査、難しければ反対眼で狭隅角評価。
- 原因検索:ぶどう膜炎所見、薬剤(散瞳・抗コリン)歴、眼内手術歴など。jvoc+1
膨隆虹彩 とは:治療(レーザー虹彩切開術)と 独自視点の医療安全
急性閉塞隅角緑内障では、複数の点眼薬(例:チモロール、ピロカルピン、ブリモニジン)と全身薬(例:アセタゾラミド、浸透圧薬)で緊急に眼圧を下げ、その後に根治的治療としてレーザー虹彩周辺切開術(LPI)を行う流れが基本です。
重要な点として、眼圧が40~50mmHgを超えると瞳孔括約筋が無酸素状態になり、縮瞳薬(例:ピロカルピン)が効きにくいことがあるため、「点眼したのに縮瞳しない=診断が違う」と早合点しない注意が必要です。
また反対眼の発作リスクは高いとされ、LPIは両眼に行うのが原則的対応になりやすいので、患者説明や同意取得の段階で“片眼だけの問題ではない”点を先に共有するとトラブルを減らせます。
独自視点:医療安全(非眼科部門での“誘発”を減らす)
- 画像検査前の散瞳:散瞳が急性閉塞隅角を誘発し得るため、リスク患者では散瞳前に前房深度評価が推奨されます。
- 抗コリン作用薬の全身投与:瞳孔散大を起こし得る薬剤が誘因になり得るため、処方時は既往(狭隅角・閉塞隅角)確認が安全策になります。semanticscholar+1
- 「消化器症状メイン」で来院した急性例:悪心・嘔吐が前景に出ると誤診され得るため、救急外来では“眼痛・充血の有無を必ず確認”をプロトコル化すると有効です。
参考:閉塞隅角緑内障の病態、膨隆虹彩(iris bombé)、急性例の症状と治療(薬物→LPI)、散瞳リスクなどの実務情報(日本語の臨床向け解説)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B7%91%E5%86%85%E9%9A%9C/%E9%96%89%E5%A1%9E%E9%9A%85%E8%A7%92%E7%B7%91%E5%86%85%E9%9A%9C