膨満と緊満の違い

膨満と緊満の違い

膨満と緊満の医学的定義
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膨満感

腹部が膨らんでいるが柔らかい状態で、ガスや便による拡張

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緊満感

腹部が硬く張って圧力が高まった状態で、腹水や重篤な疾患を示唆

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鑑別の重要性

適切な診断と治療方針決定のために医療従事者が理解すべき相違点

膨満感の医学的定義と特徴

膨満感は、腹部が膨らんでいるが比較的柔らかい状態を指します。一般的に消化管内にガスが溜まることが主な原因で、お腹が張って苦しい感覚が特徴的です 。

参考)緊満【ナース専科】

この症状は、食事時に無意識に飲み込む空気や腸内細菌による発酵ガス、便秘による腸内容物の滞留によって引き起こされます 。膨満感は触診時に比較的柔らかく、打診では鼓音を呈することが多く、患者は「お腹が張っている」「ガスが溜まっている感じ」と表現します 。

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症状の程度は軽度から中等度で、時間の経過とともに変動することが多く、排ガスや排便により改善する傾向があります。機能性消化管障害や過敏性腸症候群機能性ディスペプシアなどでよく見られる症状です 。

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緊満感の医学的定義と病態

緊満感は、腹部の圧力が高まり硬く張ったような感覚を指し、膨満感よりも重篤な病態を示唆する重要な症状です 。腹腔内の液体貯留(腹水)や腹腔内圧の急激な上昇が主な原因となります 。

参考)腹水に関するQ&A

緊満感では、腹壁が緊張し触診時に硬さを感じ、打診では濁音を呈することが特徴です 。患者は「お腹が硬く張って苦しい」「内側から強く押されるような感じ」と訴えることが多く、呼吸困難や体位変換困難を伴うことがあります 。

参考)がんに伴う腹部膨満(感)への対策

この症状は肝硬変による腹水、癌性腹膜炎、腸閉塞の重症例、急性腹症などの重篤な疾患で認められることが多く、緊急性の高い病態の可能性を示唆します 。

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膨満と緊満の鑑別診断ポイント

両者の鑑別には、系統的なフィジカルアセスメントが不可欠です。視診では腹部全体の形状変化を観察し、膨満感では比較的均等な膨隆、緊満感では腹水による特徴的な形状変化を認めます 。

参考)第8回 腹部膨満を訴える患者さんのアセスメント(排ガスの有無…

触診による硬度の評価が最も重要で、膨満感では比較的柔らかく、緊満感では硬さや抵抗感を認めます 。打診では膨満感で鼓音、緊満感で濁音を呈することが多く、腹水の場合は体位変換により音響変化を認めます 。

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随伴症状も重要な鑑別点で、膨満感では比較的軽度の不快感が中心ですが、緊満感では呼吸困難、循環動態の変化、強い疼痛などの重篤な症状を伴うことが多く、緊急度の判断に重要です 。

膨満感の主要原因疾患と病態

膨満感の最も一般的な原因は機能性消化管障害で、過敏性腸症候群では腸管の知覚過敏や運動機能異常により慢性的な膨満感が生じます 。機能性ディスペプシアでは胃の運動機能低下により上腹部の膨満感が特徴的です 。

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消化器疾患では逆流性食道炎による胃内容物の滞留、慢性便秘による大腸内容物の貯留が膨満感の原因となります 。また、呑気症(空気嚥下症)では食事時の過剰な空気摂取により腹部膨満が生じ、ゲップの頻発を伴います 。
稀ですが、胃麻痺(gastroparesis)では胃排出遅延により持続性の膨満感が生じ、糖尿病患者や術後患者で注意が必要です。これらの疾患では適切な原因治療により症状改善が期待できます 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10257400/

緊満感を示す重篤疾患とその特徴

緊満感を呈する最も重要な疾患は腸閉塞(イレウス)で、腸管内容物の通過障害により急速に腹腔内圧が上昇します 。特に絞扼性腸閉塞では血流障害を伴い、激烈な腹痛と緊満感が急速に進行し、緊急手術が必要となります 。

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肝硬変や心不全による腹水貯留では、徐々に進行する緊満感とともに呼吸困難、下肢浮腫、腹囲増大を認めます 。癌性腹膜炎では悪性腫瘍の腹膜播種により急速な腹水増加と緊満感が生じ、予後不良の徴候として重要です 。

急性腹症では腹膜炎による腹壁筋の反射性収縮(筋性防御)により著明な緊満感を呈し、発熱、頻脈、血圧低下などの全身症状を伴います。これらの病態では迅速な診断と治療介入が患者の予後を左右します 。