ビタミンB6不足の症状と原因

ビタミンB6不足の症状

ビタミンB6不足で起こる主な症状
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皮膚・粘膜の症状

脂漏性皮膚炎、口内炎、舌炎、口角炎などの炎症が起こりやすくなります

神経系の症状

手足のしびれ、末梢神経障害、けいれん発作などが生じることがあります

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精神症状

うつ状態、イライラ、不安、錯乱などの精神的不調が現れることがあります

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血液の異常

赤血球の形成に必要なため、欠乏すると貧血を起こすことがあります

ビタミンB6不足による皮膚炎と口内炎の症状

ビタミンB6は「皮膚や粘膜のビタミン」とも呼ばれており、不足すると脂漏性皮膚炎や口内炎などの炎症が起こりやすくなります。特に鼻や耳、口の周辺に赤く油っぽいうろこ状の発疹が生じることがあり、舌がヒリヒリして赤くなったり、口の端にひび割れができる口角炎も代表的な症状です。

参考)ビタミンB6欠乏症 – 11. 栄養障害 – MSDマニュア…


ビタミンB6は血液を作ったり、たんぱく質を合成したり、アレルギーに対抗する働きがあるため、不足すると免疫力が低下し、口腔内の炎症が起きやすい状態になります。口内炎の予防や改善には、ビタミンB2やビタミンB6などのビタミンB群をバランスよく摂取することが重要です。

参考)口内炎について


もともとビタミンB6は、ラットを用いた研究において欠乏により生じる発育不良や皮膚炎と関連があることから発見された栄養素であり、皮膚や粘膜の健康維持に深く関わっています。食欲不振や吐き気などの消化器症状も現れることがあり、これらの症状が複合的に起こる場合もあります。

参考)ビタミンB6の働きとは?摂取量の目安やビタミンB6を多く含む…

ビタミンB6不足による神経障害としびれ

ビタミンB6不足の重大な症状の一つが末梢神経障害です。手足がしびれて、ピンや針で刺されるようなチクチクした感覚が生じることがあり、これは末梢神経が正常に機能していないことを示しています。ビタミンB6は神経伝達物質の合成に深く関わっているため、不足すると神経系全体に影響が及びます。

参考)ビタミンB6欠乏症および依存症 – 09. 栄養障害 – M…


成人では錯乱、脳波異常、痙攣発作などの深刻な神経症状が起こることもあり、まれに乳児でビタミンB6欠乏症によるけいれん発作が生じる場合もあります。こうした乳児のけいれん発作は抗てんかん薬が効かないことがあるため、ビタミンB6欠乏症を疑う必要があります。​
ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸などの不足で感覚障害をきたすことがあり、特にアルコールを多飲する方や食事が偏っている方に生じやすい傾向があります。末梢神経障害は日常生活の質を大きく低下させる症状であるため、早期の発見と対処が重要です。

参考)パーキンソン病,しびれ,末梢神経障害,ビタミンB6

ビタミンB6不足によるうつ症状と精神的不調

ビタミンB6は精神を落ち着かせる神経伝達物質で「しあわせホルモン」と呼ばれることもあるセロトニンの合成に欠かせません。ビタミンB6不足のためにセロトニンを十分に合成できなくなることで、イライラしやすくなったり、うつ病の発症リスクにつながったりする可能性があります。​
また、ビタミンB6は抑制系の神経伝達物質「GABA」を合成するのに必要な栄養素です。GABAは不安を抑える働きがあるため、B6が不足するとイライラしやすくなったり、神経が高ぶりやすくなる可能性があります。実際にビタミンB6の値が低い人はうつ病の発症リスクが高く、ビタミンB6の投与によってうつ病の症状が改善されたという動物実験の報告もあります。

参考)ビタミン不足がうつや不安を悪化させる?──精神科医が解説する…


最近の研究では、健康な若年成人に高用量のビタミンB6を1か月間補充したところ、不安感が有意に減少したという結果も出ています。うつ病の方では、ビタミンB12や葉酸とともにビタミンB6が不足しているケースが多く、補充することで治療反応が良くなる場合があります。

参考)【食べるだけで!】うつに効果あり/なし/逆効果の食品【食べる…


ビタミン不足とうつ・不安の関係について詳しく解説した記事(国分寺イーストクリニック)

ビタミンB6不足による貧血の症状

ビタミンB6は赤血球の形成に必要な栄養素であり、欠乏すると貧血を起こすことがあります。正球性、小球性、または鉄芽球性貧血が発生することもあり、赤血球が適切に作られなくなることで酸素を全身に運ぶ能力が低下します。

参考)ビタミンB6/B12の働きと1日の摂取量


貧血になると、疲労感、息切れ、めまい、顔色の悪さなどの症状が現れます。ビタミンB6不足による貧血は、他のビタミンB群(特にビタミンB12や葉酸)の欠乏と同時に起こることが多いため、複合的な栄養不足として現れることが一般的です。

参考)ビタミンB6|横浜青葉ゆうクリニック|あざみ野の泌尿器科


赤血球の産生にはビタミンB6が深く関わっているため、長期的な欠乏状態が続くと慢性的な貧血状態に陥る可能性があります。リンパ球減少症も起こることがあり、免疫力の低下につながるため、感染症にかかりやすくなるリスクも高まります。​

ビタミンB6不足の原因となる薬物と生活習慣

ビタミンB6欠乏症は摂取不足だけでなく、特定の薬物の使用によっても引き起こされます。抗てんかん薬、抗菌薬のイソニアジド(結核の治療薬)、降圧薬のヒドララジンコルチコステロイド、ペニシラミン(関節リウマチウィルソン病などの治療薬)などがビタミンB6を不活化する作用を持ちます。

参考)Table: ビタミン欠乏症を起こす主な薬-MSDマニュアル…


アルコールを多量に摂取する方にもビタミンB6欠乏の症状が多く見られます。アルコールは葉酸、チアミン、ビタミンB6の欠乏を引き起こすため、長期的な飲酒習慣がある方は特に注意が必要です。血液透析中に起こるビタミンB6の過度の損失も、欠乏の原因となります。

参考)ビタミンB6欠乏による不定愁訴とは?改善方法を解説


外食やインスタント食品などの偏った食事をしている方も、十分な注意が必要です。長時間の調理により食品からビタミンB6が取り除かれてしまうこともあり、過剰な加熱調理は栄養素の損失につながります。ビタミンB6は水に溶けやすく酸や光に弱いため、新鮮な食品を選び、刺身などできるだけシンプルな調理で摂るようにすると無駄なく摂取できます。

参考)ビタミンB6とは?体をつくるタンパク質の元となる、アミノ酸代…


興味深いことに、パーキンソン病の治療薬であるレボドパが多いほど、血中のビタミンB6が低下して末梢神経障害が悪化する傾向があるという報告もあります。このようにビタミンB6欠乏は、薬物治療の副作用として現れることもあるため、長期的な薬物療法を受けている方は定期的な栄養状態のチェックが重要です。​
ビタミン欠乏症を起こす主な薬のリスト(MSDマニュアル)