ビソルボン注射の効果と副作用について

ビソルボン注射の効果と副作用

ビソルボン注射の基本情報
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有効成分

ブロムヘキシン塩酸塩4mg/2mL配合の気道粘液溶解剤

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主な効果

去痰作用と気管支分泌物の溶解・低分子化による呼吸機能改善

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重要な副作用

ショックやアナフィラキシーなど重篤な過敏反応に注意が必要

ビソルボン注射の効果と作用機序

ビソルボン注射(ブロムヘキシン塩酸塩)は、気道粘液溶解剤として呼吸器疾患治療において重要な役割を果たしています。本剤の効果は複数の作用機序によって発現され、臨床現場での去痰効果の向上に寄与しています。

主要な作用機序

  • 漿液性分泌増加作用:気管支粘膜及び粘膜下気管腺の分泌を活性化し、漿液性分泌を増加させることで、粘稠な痰を希釈します
  • 酸性糖蛋白溶解・低分子化作用:気管分泌細胞内で酸性糖蛋白の線維網を溶解・低分子化し、痰の粘性を低下させます
  • 肺表面活性物質の分泌促進作用:肺胞Ⅱ型細胞内層状封入体及び肺のリン脂質含量を増加させ、肺の機能を改善します
  • 線毛運動亢進作用:気管線毛のビート回数及び振幅を増大させ、痰の排出を促進します

適応疾患と効果

ビソルボン注射は、経口投与困難な患者における以下の疾患で使用されます。

  • 肺結核における去痰
  • 塵肺症の症状改善
  • 手術後の去痰促進
  • 気管支造影後の造影剤排泄促進

国内29施設で実施された臨床試験では、795例中423例で効果判定が行われ、有効率(有効以上)は72.0%という良好な結果が得られています。

ビソルボン注射の重大な副作用とその対策

ビソルボン注射の使用において最も注意すべきは重大な副作用です。医療従事者は以下の症状に十分な注意を払い、適切な対応を行う必要があります。

重大な副作用

これらの重篤な過敏反応は、以下の症状として現れる可能性があります。

  • 発疹
  • 血管浮腫
  • 気管支痙攣
  • 呼吸困難
  • そう痒感

対応策と予防

重大な副作用の発現を防ぐため、以下の点に注意が必要です。

  • 投与前の確認:本剤の成分に対する過敏症の既往歴を必ず確認する
  • 観察の徹底:投与中は患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合は直ちに投与を中止する
  • 適切な処置:ショックやアナフィラキシー症状が現れた場合は、速やかに適切な救急処置を行う

禁忌事項

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者には絶対に投与してはいけません。この禁忌事項の遵守は、重篤な副作用の予防において最も重要な要素です。

ビソルボン注射の一般的な副作用と頻度

調査症例4,737例中、副作用が報告されたのは90例(1.90%)でした。一般的な副作用の詳細な頻度と症状を以下に示します。

消化器系副作用

  • 嘔気・悪心:30件(0.63%)- 最も頻度の高い副作用
  • 嘔吐:0.1%未満
  • 下痢:頻度不明

過敏症

  • 発疹:頻度不明
  • そう痒感:頻度不明
  • 蕁麻疹:頻度不明

循環器系副作用

  • 胸内苦悶:0.1~5%未満
  • 心悸亢進:0.1~5%未満

精神神経系副作用

局所症状

  • 局所疼痛:20件(0.42%)- 筋肉内注射時に発現

筋肉内注射時に疼痛を訴える場合は、静脈内注射に切り替え、ゆっくりと静注することが推奨されています。動物実験では充血、出血、変性等の局所障害が確認されているため、注射部位の選択や繰り返し注射時の部位変更に注意が必要です。

ビソルボン注射の適応と用法用量

ビソルボン注射の適切な使用には、正確な用法用量の理解が不可欠です。

用法用量

  • 通常成人:1回1~2管(ブロムヘキシン塩酸塩として4~8mg)を1日1~2回
  • 投与方法:筋肉内注射または静脈内注射
  • 投与調整:年齢、症状により適宜増減

投与方法の選択

筋肉内注射

  • 一般的な投与方法
  • 注射部位の疼痛に注意
  • 神経走行部位を避けて投与
  • 繰り返し注射時は左右交互に投与部位を変更

静脈内注射

  • 筋肉内注射で疼痛がある場合
  • ゆっくりと静注することが重要
  • より迅速な効果が期待できる

特殊患者群への配慮

高齢者

  • 一般に生理機能が低下しているため減量を検討
  • より慎重な経過観察が必要

妊婦・授乳婦

  • 治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与
  • 妊娠中の安全性は確立されていない

小児

  • 低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児に対する安全性は確立されていない
  • 乳幼小児には連用しないことが望ましい

薬物動態

健康成人での検討では、静脈内投与後24時間で77%が尿中に、5%が糞中に排泄されます。主代謝産物はシクロヘキシル環の水酸化体とその閉環体であり、尿中には主としてグルクロン酸抱合体として排泄されます。

ビソルボン注射の臨床現場での効果的な活用法

ビソルボン注射を臨床現場で効果的に活用するためには、患者の状態に応じた適切な使い分けと、他の治療法との併用について理解することが重要です。

効果的な使用タイミング

急性期の対応

  • 手術後の痰貯留が著明な患者
  • 気管支鏡検査後の分泌物除去
  • 人工呼吸器装着患者の気道管理
  • 意識障害により自発的な喀痰困難な患者

慢性期の管理

  • 経口薬の効果が不十分な慢性呼吸器疾患患者
  • 嚥下障害により経口投与困難な患者
  • 消化器症状により経口薬が使用できない患者

他の治療法との併用効果

理学療法との併用

ビソルボン注射による化学的な痰の溶解作用と、理学療法による物理的な痰の移動促進を組み合わせることで、より効果的な去痰が期待できます。投与後30分~1時間後に体位排痰法や気道クリアランス法を実施することで、相乗効果が得られます。

吸入療法との併用

β2刺激薬やステロイド吸入薬との併用により、気管支拡張と抗炎症作用による気道環境の改善と、ビソルボン注射による痰の性状改善の両方の効果を得ることができます。

投与経路の選択基準

筋肉内注射を選択する場合

  • 患者の協力が得られる場合
  • 静脈確保が困難な場合
  • 緩徐な薬効発現を希望する場合

静脈内注射を選択する場合

  • 急速な効果が必要な場合
  • 筋肉内注射で疼痛の訴えがある場合
  • 循環動態が不安定で筋肉血流が低下している場合

注意すべき相互作用と併用注意

動物実験において大量を長期間連続投与した場合に血清トランスアミナーゼ値の上昇が報告されているため、肝機能障害のある患者や肝毒性のある薬剤との併用時は注意が必要です。

患者・家族への説明ポイント

  • 喀痰量の一時的増加により不安を感じる患者への説明
  • 薬剤の効果発現時間と持続時間
  • 副作用症状の早期発見の重要性
  • 注射部位の観察と異常時の連絡方法

これらの知識を基に、各患者の病態と治療目標に応じたオーダーメイドの治療計画を立案することが、ビソルボン注射の真の治療効果を引き出すための鍵となります。

ベーリンガーインゲルハイム社の添付文書による詳細な安全性情報

https://bij-kusuri.jp/leaflet/attach/pdf/bl_fg2_pi.pdf

薬剤情報データベースでの最新の副作用情報

https://hokuto.app/medicine/a4L8vJjaTW13htYq1OIh