びまん型胃がん と 診断 と 治療 と 予後

びまん型胃がん と 診断 と 治療

びまん型胃がん と 診断 と 治療
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診断の難しさを言語化

腫瘤を作らず胃壁内へ浸潤し、内視鏡・生検が「陰性でも否定できない」構造を把握する。

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病理と臨床を接続

低分化腺癌・印環細胞癌(por/sig)を想定し、採取・固定・追加生検の判断を標準化する。

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遺伝と腹膜播種を先回り

CDH1関連(HDGC)や腹膜播種の評価設計を早期に組み込み、治療選択と説明をブレさせない。

びまん型胃がん の 定義 と 4型 と びまん浸潤型

びまん型胃がんは「腸型」のように明瞭な腫瘤を作るより、胃壁の中を這うように浸潤して壁肥厚・硬化を来し、病変境界が不明瞭になりやすいのが臨床上の本質です。特に肉眼型(Borrmann分類)では4型が「びまん浸潤型」とされ、著しい潰瘍形成や周堤を欠き、胃壁肥厚・硬化と境界不明瞭を特徴とします。したがって、通常の「隆起」「潰瘍」を探す視点だけで内視鏡を行うと、構造的に取り逃がしやすい病型だと整理できます。

医療現場では「スキルス」という用語が4型進行胃がんの文脈で使われることが多く、びまん浸潤型=スキルスとほぼ同義で扱われがちです。ただし重要なのは名称よりも、胃壁内進展(粘膜下中心)・線維化・全周性狭窄といった進展様式が、診断戦略(深部生検、複数点、再検)と治療戦略(腹膜播種の先読み)を規定する点です。

(参考:4型=びまん浸潤型の定義や特徴の確認に有用)

Borrmann分類(4型:びまん浸潤型の要点)

びまん型胃がん の 病理 と 未分化型 と 印環細胞癌

びまん型胃がんは、病理学的に低分化腺癌や印環細胞癌を含む「未分化型」成分と結びついて語られることが多く、臨床でも生検片の所見が治療方針に直結します。印環細胞癌が低分化腺癌と混在して「por/sig」と表記されることがある点は、レポート読解と多職種カンファレンスでの共通言語として重要です。病理側で「粘膜面の変化が乏しい」「散在性で採取しにくい」前提を持つことで、内視鏡側は“見えたところだけ”から“疑う領域を面で拾う”へ発想転換できます。

見落としやすさの実務的背景として、腫瘍細胞が粘膜下で進展しやすいため、通常生検が浅いと陰性になり得る点が指摘されています。したがって、臨床的に疑わしい(壁肥厚、伸展不良、ひだ集中の不自然さ等)にもかかわらず病理陰性の場合は、同一部位への追加・深部狙い・複数点採取の組み立てが必要になります。

意外に見過ごされやすいのは、病理診断が「陰性」であっても、臨床的疑いが強いケースでは“陰性は情報の一つ”に過ぎず、診断設計(次の手段)を止める根拠にはなりにくい点です。つまり、びまん型胃がんは「病理が最終診断」ではあるものの、病理に到達するまでの採取戦略そのものが診療の質を左右します。

(参考:びまん性胃がんにおけるpor/sig混在の説明が有用)

びまん性胃がん(印環細胞癌と低分化腺癌の混在)の解説

びまん型胃がん の 診断 と 内視鏡 と 生検

びまん型胃がん(4型/スキルスを含む)は、目立つ腫瘤や潰瘍を形成せず胃壁にしみ込むように進行するため、発見時点で広範囲に及ぶことがあるとされています。確定診断は生検ですが、粘膜下で進展する傾向から「より深い部位にがん細胞が存在する」ことがあり、通常生検で拾えない状況が起こり得ます。ここが、医療者が患者説明で“検査したのに見つからない”を単なる手技の問題ではなく、病型由来の限界として共有すべきポイントです。

実務では、内視鏡所見が決め手になりにくい代わりに、「胃の伸展不良」「ひだの肥厚」「全周性の硬さ」「幽門狭窄傾向」など、機能・形態の違和感を拾い、疑いが続く限り診断を取りに行く設計が重要になります。施設内での再検基準(例:症状持続+画像で壁肥厚+初回生検陰性なら再検)を作ると、担当者が変わっても診断経路が途切れにくくなります。

また、びまん型胃がんは腹膜播種を伴いやすい臨床像が問題になりやすく、初期の段階から「遠隔転移(腹膜を含む)を拾う」視点で検査計画を立てることが、治療選択(手術可否)と患者の期待調整に直結します。

(参考:粘膜下進展により生検が難しい点、診断の流れの概要に有用)

スキルス胃がん(びまん浸潤型)の診断と生検の注意点

びまん型胃がん の 腹膜播種 と CT と FDG-PET/CT

びまん型胃がんでは、腹膜播種の有無が「手術で根治を狙うか」「全身治療中心か」を大きく分けるため、画像・病期評価の質が治療成績だけでなく説明の納得感を左右します。腹膜播種のCT所見として、腹膜肥厚(結節状・不整な肥厚)、腹水(高濃度・不均一、壁在結節)や大網の変化などが挙げられ、鑑別として感染性腹膜炎なども意識する必要があります。CT単独で微小播種が拾えない場面もあるため、MRI(拡散強調像)やFDG-PETなどを組み合わせて精度を上げる考え方が提示されています。

さらに、胃癌の腹膜播種は小結節型・びまん浸潤型が多く、CTなど画像検査では診断が困難になり得るという指摘もあり、画像陰性=播種なしと短絡しない姿勢が重要です。FDG-PET/CTの位置づけを含め、施設の標準的フロー(どのタイミングで追加するか、腹水が少量でも穿刺するか等)をプロトコル化すると、判断のばらつきを減らせます。

「意外な落とし穴」としては、腹膜播種がある症例は“測定可能病変に乏しい”ことが少なくなく、治療効果判定が画像サイズ変化だけでは不十分になりやすい点です。症状(腹部膨満、食思不振)、栄養指標、腹水量、疼痛、体重変化など、臨床指標をセットで追う体制が、医師だけでなく看護・薬剤・栄養を巻き込む起点になります。

(参考:腹膜播種のCT所見・鑑別、補助画像(MRI/PET)の考え方に有用)

腹膜播種・癌性腹膜炎のCT画像診断ポイント

(参考:胃癌腹膜播種で画像診断が難しい点、FDG-PET/CTに触れる診療ガイドライン)

腹膜播種 診療ガイドライン(胃癌腹膜播種の評価)

びまん型胃がん の CDH1 と 遺伝性びまん性胃がん

びまん型胃がんは散発例が多い一方、遺伝性びまん性胃がん(HDGC)という枠組みがあり、CDH1生殖細胞系列変異が代表的原因として知られています。HDGCでは明確な腫瘤形成を伴わず、腫瘍細胞が胃壁へ浸潤して壁肥厚を起こす低分化腺癌(linitis plastica型)の形態が特徴とされます。医療従事者向けには、若年発症や家族歴があるケースで「通常の胃がん診療」だけで完結せず、遺伝カウンセリング・検査・家族対応まで視野に入る点が重要です。

あまり一般記事で強調されにくい実務ポイントは、「CDH1は腫瘍抑制に関与し、スプライシング異常などがびまん型胃がんに特徴的に見られた」という研究報告があり、びまん型という病型が分子異常と結びついて理解されつつある点です。これにより、患者説明でも「タイプが違うから挙動が違う」という納得感を作りやすくなり、治療方針(全身治療優先、臨床試験検討など)の背景説明にも応用できます。

もう一つの臨床的含意は、HDGCでは内視鏡で拾いにくい微小病変が問題になり得るため、家族歴・若年例など“拾うべき患者”を取りこぼさない仕組み(問診テンプレ、遺伝紹介ルート)が診断精度と患者安全に直結することです。現場では「病理が未確定だから遺伝はまだ」と先延ばしになりがちですが、びまん型を疑う段階で家族歴を取り切るだけでも、次の意思決定が速くなります。

(参考:HDGCの概念と形態(linitis plastica型)、遺伝形式の説明に有用)

遺伝性びまん性胃癌(HDGC)の概要

(参考:びまん型胃がんに特徴的なCDH1異常の研究ニュースの要点に有用)

胃がんゲノム解析(びまん型胃がんとCDH1)