ビーフリード輸液の使用方法と安全管理

ビーフリード輸液の基本知識と臨床応用

ビーフリード輸液の基本情報
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製剤特徴

上室と下室に分かれたダブルバッグ製剤で、投与前の開通操作が必要

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主要成分

アミノ酸、糖質、電解質、ビタミンB1を配合した総合輸液

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安全管理

開通確認と適切な混合操作が医療安全の鍵

ビーフリード輸液の成分構成と特徴

ビーフリード輸液は大塚製薬工場が製造販売するアミノ酸・糖・電解質・ビタミンB1液で、医療現場において栄養補給を目的とした輸液療法の中核を担う製剤です。

本製剤の最大の特徴は、上室と下室に分かれたダブルバッグ構造にあります。上室(150mL)にはアミノ酸と電解質液が、下室(700mL)には糖質・電解質・ビタミンB1液が充填されており、投与前に隔壁を開通させて混合する仕組みとなっています。

上室の主要成分:

・L-ロイシン 2.100g

・L-イソロイシン 1.200g

・L-バリン 1.200g

・L-リシン塩酸塩 1.965g

・その他必須・非必須アミノ酸

下室の主要成分:

・ブドウ糖 74.998g

・塩化カリウム 0.634g

・塩化カルシウム水和物 0.368g

・チアミン塩化物塩酸塩 1.92mg

混合後の1000mL中には、総遊離アミノ酸量30.00g、総熱量420kcal、非蛋白熱量300kcalが含まれ、必須アミノ酸/非必須アミノ酸比は1.79、分岐鎖アミノ酸含有率は30w/w%となります。

この組成は、軽度から中等度の栄養不良状態にある患者の栄養需要を満たすよう設計されており、特に分岐鎖アミノ酸の高含有率は筋蛋白合成の促進や窒素バランスの改善に寄与します。

ビーフリード輸液の適応と効果

ビーフリード輸液の適応は、「経口摂取不十分で軽度の低蛋白血症又は軽度の低栄養状態にある場合」および「手術前後」のアミノ酸、電解質、ビタミンB1及び水分の補給とされています。

主な臨床適応:

・術前術後の栄養管理

・経口摂取困難時の栄養補給

・軽度の低蛋白血症の改善

・慢性疾患に伴う栄養不良状態

・高齢者の栄養状態維持

臨床効果として、アミノ酸補給により血清アルブミン値の改善や窒素バランスの正常化が期待できます。また、適切な電解質バランスの維持により、細胞機能の最適化と代謝改善が図られます。

ビタミンB1の配合により、糖代謝の円滑化とエネルギー産生効率の向上が得られ、特に高齢者や術後患者において重要な意味を持ちます。総熱量420kcalの供給により、基礎代謝の一部を補完し、異化亢進状態の抑制に寄与します。

注意すべき病態:

・重篤な肝障害

・重篤な腎障害

・先天性アミノ酸代謝異常症

・高カリウム血症

これらの病態では、アミノ酸代謝や電解質バランスに異常をきたす可能性があるため、慎重な適応判断が求められます。

ビーフリード輸液の開通操作と安全管理

ビーフリード輸液の最も重要な操作が開通作業です。この操作を適切に行わないと、下室のみの投与となり、高血糖や電解質異常、悪心・嘔吐等の副作用を引き起こす可能性があります。

正しい開通手順:

  1. 必ず下室を両手で強く押す
  2. 開通確認カバーが外れたことを確認
  3. 開通確認カバーを除去
  4. 上室と下室を交互に押して十分に混合
  5. 混合後は速やかに使用開始

従来のビーフリード輸液では、点滴棒の吊り下げ穴にプラスチック製の開通確認器具が装着されていましたが、現在は「開通確認」シールに変更されています。この変更により、未開通での投与リスクに対する注意喚起が強化されましたが、依然として開通漏れのインシデントは発生しているのが現状です。

安全管理のポイント:

・開通操作は必ず投与直前に実施

・複数人でのダブルチェック体制

・開通確認シールの適切な除去確認

・混合状態の目視確認

・外袋開封後は速やかに使用

未開通投与を防ぐため、各医療機関では独自の安全対策を講じており、チェックリストの活用や専用の手順書作成などが行われています。

遮光に関しても重要な管理項目です。ビタミンB1は光に不安定であるため、状況に応じて遮光カバーの使用を検討する必要があります。特に窓際での投与や長時間の点滴では、光分解による効果減弱を防ぐため遮光対策が推奨されます。

ビーフリード輸液と他製剤の比較検討

ビーフリード輸液と類似製剤との比較は、適切な製剤選択において重要な判断材料となります。特にパレプラス輸液との比較では、いくつかの重要な相違点が明らかになっています。

パレプラス輸液との主な違い:

項目 ビーフリード パレプラス
水溶性ビタミン ビタミンB1のみ 9種類配合
未開通防止機能 開通確認シール 未開通防止装置
安全性 中程度 高い
コスト 相対的に安価 やや高価

パレプラス輸液は、ビタミンB1に加えて8種類の水溶性ビタミン(B2、B6、B12、C、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)を配合しており、長期間の輸液療法においてビタミン欠乏症のリスクを大幅に軽減できます。

未開通防止装置に関しても、パレプラス輸液では開通操作なしに装置を取り外すことができない設計となっており、医療安全の観点で優位性があります。一方、ビーフリード輸液では開通確認シールによる注意喚起に留まっているのが現状です。

エルネオパとの比較:

エルネオパシリーズとの比較では、アミノ酸組成と適応範囲に違いがあります。エルネオパは重篤な病態に対応した高濃度製剤であるのに対し、ビーフリードは軽度から中等度の栄養不良に適した組成となっています。

選択基準:

・短期使用(1週間以内):ビーフリード

・長期使用(2週間以上):パレプラス推奨

・重篤な栄養不良:エルネオパ検討

・コスト重視:ビーフリード

・安全性重視:パレプラス

ビーフリード輸液投与時の看護ケアポイント

ビーフリード輸液投与時における看護ケアは、患者の安全確保と治療効果の最大化において極めて重要な役割を果たします。

投与前の確認事項:

・患者の栄養状態と水分バランスの評価

・腎機能・肝機能の検査値確認

・電解質異常の有無

・アレルギー歴の確認

・他の薬剤との相互作用チェック

投与速度の管理も重要な看護ケアの一つです。急速投与によりアミノ酸血症や悪心・嘔吐が生じる可能性があるため、患者の状態に応じた適切な滴下速度の設定と継続的な観察が必要です。

モニタリング項目:

・血糖値の変動(高血糖のリスク)

・電解質バランス(特にカリウム値)

・水分バランスと浮腫の有無

・投与部位の観察(血管痛、血管炎)

・全身状態の変化

三方活栓の使用については注意が必要です。ビーフリード輸液は高張液であるため、他の薬剤との配合により結晶析出や配合変化を起こす可能性があります。そのため、可能な限り単独ラインでの投与が推奨されます。

患者教育のポイント:

・点滴中の安静保持の重要性

・針刺し部位の痛みや腫脹時の報告

・水分摂取に関する指導

・退院後の栄養管理指導

血管選択においても、高張液であることを考慮し、できるだけ太い血管の選択と、必要に応じた中心静脈アクセスの検討が重要です。末梢静脈投与では血管痛や静脈炎のリスクが高まるため、投与部位の頻回な観察と適切な血管保護が求められます。

感染予防対策として、無菌操作の徹底と投与ライン交換のタイミング管理も重要な看護業務です。特に免疫力の低下した患者では、カテーテル関連血流感染症のリスクが高まるため、より厳格な感染管理が必要となります。

栄養アセスメントの継続的な実施により、治療効果の評価と投与計画の見直しを行うことで、患者の栄養状態改善と早期回復に貢献できます。血清アルブミン値、プレアルブミン値、窒素バランスなどの指標を定期的にモニタリングし、必要に応じて医師と連携した治療方針の調整を行います。

大塚製薬工場の製品情報および安全使用指針

https://www.otsukakj.jp/med_nutrition/dikj/menu1/000271.php