ビビアント錠と抜歯の関係・顎骨壊死リスクと対処法

ビビアント錠と抜歯の注意点・対応ガイド

ビビアント錠(バゼドキシフェン)はビスホスホネート系薬剤ではないため、抜歯前に休薬しなくても顎骨壊死リスクはほぼゼロです。

この記事の3つのポイント
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ビビアント錠はSERM製剤

ビスホスホネート系薬剤ではなく、顎骨壊死(MRONJ)の主要リスク薬に該当しません。抜歯前の休薬は原則不要です。

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休薬が必要なケースは限定的

大阪市立病院など主要病院のガイドラインでは、ビビアント錠の抜歯前休薬は「長期不動化(骨折・術後など)」に限定されています。

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歯科との情報共有が最重要

服用中であることを歯科医師へ必ず伝達することが、安全な抜歯処置の前提となります。処方医・歯科医の連携が患者を守ります。

ビビアント錠の薬理作用と顎骨壊死リスクの関係

ビビアント錠(一般名:バゼドキシフェン酢酸塩)は、2010年7月に日本で承認された閉経後骨粗鬆症治療薬です。 作用機序はSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)に分類され、骨組織においてエストロゲン様作用(破骨細胞の分化・機能抑制)を示す一方、子宮や乳腺にはほとんど刺激を与えません。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/bazedoxifene-acetate/)

骨密度への効果は明確です。臨床試験では3年間の投与で椎体骨折リスクを42%低減したとの報告があります。 骨粗鬆症による寝たきりを予防する重要な薬剤です。 kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/bazedoxifene-acetate/)

顎骨壊死(MRONJ / BRONJ)の主要リスク薬として知られるのは、ビスホスホネート(BP)製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬です。 ビビアント錠はSERM製剤であり、BP製剤とは作用機序がまったく異なります。顎骨の血流を障害するメカニズムを持たないため、抜歯との関連でのMRONJリスクは極めて低いと考えられています。 kenkyugakuenshika(https://kenkyugakuenshika.com/news/%E6%8A%9C%E6%AD%AF%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%81%AB%E9%A1%8E%E9%AA%A8%E5%A3%8A%E6%AD%BB%EF%BC%88bronj%EF%BC%89%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%81%82%E3%82%8B%E8%96%AC/)

ただし、「骨粗鬆症の薬を飲んでいる=抜歯に慎重対応が必要」と一律に判断する現場の習慣には注意が必要です。薬剤の種類によってリスクプロファイルは大きく異なります。

参考:骨粗鬆症治療薬とMRONJリスクに関する最新ポジションペーパー(2023年改訂版)

顎骨壊死を起こさない骨粗鬆症治療を医歯薬連携で!(GCOA 2023年)

ビビアント錠服用中の抜歯前休薬の必要性と病院ガイドライン

「ビスホスホネートじゃないから大丈夫」という感覚は正しい方向ですが、もう少し精密な確認が必要です。大阪公立大学医学部附属病院の「手術・検査前に休薬を要する薬剤(内服薬)一覧(2025年版)」では、ビビアント錠(バゼドキシフェン酢酸塩)について「長期不動化を伴う場合は3日前から休薬を考慮」という記載があります。 hospital.ompu.ac(https://hospital.ompu.ac.jp/departments/department_of_pharmacy/oli5lt0000003zqc-att/l1mbah0000001pho.pdf)

これが基本方針です。つまり通常の外来抜歯であれば、ビビアント錠の休薬は原則不要ということになります。

「長期不動化」とは、例えば全身麻酔下の大手術後や骨折後など、患者が長期間安静を余儀なくされる状況を指します。ビビアント錠にはSERM特有の副作用として静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクがある点が背景です。 長期不動状態ではVTEリスクが上昇するため、手術前の一時休薬が考慮されます。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204275695488)

外来での局所麻酔下抜歯は「長期不動化」には該当しません。通常は継続投与のまま抜歯処置が可能です。患者に正確な情報を届けるためにも、この区別を明確にしておくことが大切ですね。

参考:大阪公立大学医学部附属病院薬剤部「手術・検査前に休薬を要する薬剤一覧(2025年11月現在)」

手術・検査前に休薬を要する薬剤(内服薬)一覧(大阪公立大学医学部附属病院)

ビスホスホネート(BP)製剤との混同を防ぐ重要な区別ポイント

現場では「骨粗鬆症の薬」でひとまとめにされがちです。しかしビビアント錠とビスホスホネート製剤は、顎骨への影響という観点では全く別の薬剤です。ここが混同されると、不要な休薬が発生し、患者の骨折予防治療が中断されるという実害が生じます。

薬剤分類 代表薬 MRONJ主なリスク 抜歯前の休薬
SERM製剤 ビビアント錠(バゼドキシフェン)、エビスタ(ラロキシフェン 極めて低い 原則不要
経口BP製剤(3年未満・リスク因子なし) ボナロンアクトネル、ベネット 0.01〜0.04% 原則不要
経口BP製剤(3年以上・リスク因子あり) 同上 0.09〜0.34% 3ヶ月休薬を検討
静注BP製剤(悪性腫瘍治療) ゾレドロン酸(ゾメタ) 6.67〜9.1% 個別評価が必要
デノスマブ(注射) プラリアランマーク 6〜9% 個別評価が必要

total-dc-kasuga(https://www.total-dc-kasuga.com/%E9%AA%A8%E7%B2%97%E9%AC%86%E7%97%87%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%96%AC%E3%81%A8%E6%AD%AF%E7%A7%91%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82/)

静注BP製剤では、抜歯を受けた症例において6.67〜9.1%という高頻度でMRONJが発生しています。 ビビアント錠が全くリスクの異なる薬剤であることが、数字でも明確です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1l01.pdf)

2023年の「顎骨壊死関連薬剤(ARONJ)に関するポジションペーパー」改訂版では、骨粗鬆症のための経口BP使用者に対しても、抜歯時の休薬は基本的に推奨されないことが改めて明示されました。 SERMに分類されるビビアント錠では、なおさら休薬の必要性は低いということになります。 kenkyugakuenshika(https://kenkyugakuenshika.com/2025/02/26/bp%E8%A3%BD%E5%89%A4%E3%81%AF%E4%BC%91%E8%96%AC%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%81%8B%EF%BC%9Fbp%E8%A3%BD%E5%89%A4%E3%82%92%E9%A3%B2%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%82%8B%E6%96%B9%E3%81%B8/)

不要な休薬は骨折予防効果を損ないます。患者にとってデメリットです。

参考:BP製剤と抜歯に関する最新ガイドラインの解説

抜歯の予定だがBP製剤は休薬するべきか?(研究学園歯科 2025年)

ビビアント錠服用患者が抜歯を受ける際の医療従事者の対応フロー

では実際の現場では、どう動けばよいのでしょうか?対応を整理します。

Step 1:服用薬剤の正確な確認

患者の「骨粗鬆症の薬」が具体的に何かを必ず確認します。薬剤名(ビビアント錠、BP製剤、デノスマブなど)によって対応は全く異なります。お薬手帳の確認が最も確実です。

Step 2:リスク評価

ビビアント錠のみで骨粗鬆症治療を受けている場合は、MRONJ関連リスクは低いと判断できます。ただし以下の点は確認が必要です。

  • 🔍 他にBP製剤やデノスマブを併用していないか
  • 🔍 ステロイド長期投与・化学療法・放射線治療の既往がないか
  • 🔍 糖尿病免疫抑制状態など追加リスク因子がないか

Step 3:処方医・歯科医の連携

ビビアント錠服用中であることを歯科医師へ確実に情報共有します。 これは不要な処置回避ではなく、「リスクが低い根拠を明確にする」ための連絡です。歯科医師が安心して処置できる環境を整えることが目的です。 perio(https://www.perio.jp/publication/upload_file/position_paper_bisphos.pdf)

Step 4:抗菌薬・止血対応の確認

SERM製剤で顎骨壊死リスクが低くても、抜歯後の感染予防・止血は通常通りに行います。VTEリスクがある点を念頭に置き、長期安静が必要な侵襲的処置の場合は3日前からの休薬を考慮することを忘れずに対応します。 hospital.ompu.ac(https://hospital.ompu.ac.jp/departments/department_of_pharmacy/oli5lt0000003zqc-att/l1mbah0000001pho.pdf)

院内での骨粗鬆症治療薬の一覧整理には、各病院の薬剤部が公開している「休薬を要する薬剤一覧」が有用です。上記の大阪公立大学病院版はPDFで公開されており、定期的に更新されているため活用できます。 hospital.ompu.ac(https://hospital.ompu.ac.jp/departments/department_of_pharmacy/oli5lt0000003zqc-att/l1mbah0000001pho.pdf)

抜歯前に申告すべき薬剤と医歯連携のポイント(独自視点)

「申告してください」という説明は患者にしているが、何をどう伝えるかの具体的な連絡が歯科側に届いていない、という医歯連携の「情報の断絶」が現場では多発しています。これは患者へのデメリットに直結します。

処方箋の備考欄、診療情報提供書、お薬手帳の3つが情報共有のチャネルです。特に歯科受診時には「お薬手帳を必ず持参するよう患者に指導する」だけで、連携の質が大きく変わります。

ビビアント錠については、歯科医師側が「SERM製剤=MRONJ低リスク」という認識を持っていないケースもゼロではありません。その場合、歯科医師が過剰に慎重になり、必要な抜歯が先送りにされる事態が起こります。

感染源となる不良歯が口腔内に残存し続けると、抜歯以上に感染リスクが高まります。 歯科治療を延期するリスクの方が、多くの場合は大きいということですね。 mutou-dc(https://www.mutou-dc.com/2024/03/29/4618/)

医療従事者側からの積極的な情報提供が、患者の口腔・骨の両方の健康を守ることにつながります。特に整形外科・内科で骨粗鬆症患者を担当する医師・薬剤師が「ビビアント錠はBP製剤ではない」という情報を明確に持ち、歯科への紹介状や薬剤情報提供書に明記する習慣をつけることが有効です。

具体的なアクションとしては、「骨粗鬆症の薬の種類と歯科処置への影響」を1枚のリーフレットにまとめ、外来患者に配布するだけでも連携の質が向上します。日本骨粗鬆症学会や骨と歯の健康連携ポータルにも患者向け・医療者向けの資料が公開されています。

参考:骨粗鬆症と顎骨壊死の医歯連携に関する詳細情報

【2023改訂】顎骨壊死ポジションペーパーのFAQ(骨と歯の健康連携ポータル)