ベリチームとエクセラーゼの違いは?成分・効果・薬価を比較し使い分けを解説

ベリチームとエクセラーゼの違い

ベリチームとエクセラーゼ 3つの違い
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配合成分と作用機序

ベリチームは複数の起源の酵素を配合し、胃と腸で働くよう設計。エクセラーゼは4種の消化酵素が主体です。

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得意な症状・食事

ベリチームは脂っこい食事後の胃もたれに、エクセラーゼは幅広い消化不良に対応します。

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薬価と剤形

剤形は顆粒や錠剤・カプセルなど様々。薬価も異なるため、患者さんの状態や希望に合わせて選択します。

ベリチームとエクセラーゼの有効成分と作用機序の根本的な違い

 

ベリチーム配合顆粒とエクセラーゼ配合錠(またはカプセル)は、どちらも消化不良の症状改善に用いられる代表的な消化酵素製剤ですが、その有効成分の構成と作用機序には明確な違いがあります 。これらの違いを理解することは、患者さん一人ひとりの症状に合わせた最適な処方選択の鍵となります。

まず、ベリチームの最大の特徴は、異なる起源から得られた多種多様な消化酵素を組み合わせている点と、それらが胃と腸の異なるpH環境で効果的に働くよう製剤工夫が凝らされている点です 。具体的には、胃で働く「胃溶性顆粒」と、胃酸で失活せず腸に届いてから溶ける「腸溶性顆粒」の2種類で構成されています 。

  • 胃溶性部分: 酸性環境(pH 3.7〜6.5)で働くアスペルギルス由来の消化酵素(ビオヂアスターゼ1000)、細菌由来の脂肪分解酵素(リパーゼAP6)、繊維素分解酵素(セルラーゼAP3)が含まれます 。これにより、食事の初期段階である胃の中から、でんぷん、タンパク質、脂肪、そして野菜などの繊維素の分解を始めます 。
  • 腸溶性部分: 中性〜アルカリ性環境(pH 6.0〜9.0)で働くブタの膵臓由来の濃厚膵臓性消化酵素(パンクレアチン)が含まれています 。これは、タンパク質、脂肪、でんぷんに対して強力な消化作用を示し、膵液の分泌が不足している状態を補います 。

一方、エクセラーゼは、主に4種類の消化酵素(サナクターゼM、メイラーゼ、プロクターゼ、オリパーゼ2S)を主体としており、これに膵臓性消化酵素TAが加わっています 。これらの酵素が協力し合うことで、でんぷん、繊維素、タンパク質、脂肪という主要な栄養素の消化を総合的にサポートします 。エクセラーゼの酵素は、胃から腸にかけて幅広い範囲で作用するように設計されていますが、ベリチームのような明確な二重構造(胃溶性・腸溶性)はとっていません 。

この作用機序の違いから、ベリチームは「タイミングと場所を分けて働く二段階消化」、エクセラーゼは「チームで協力して幅広く消化を助ける」というイメージで捉えることができます。

参考リンク:ベリチームの添付文書情報。詳細な有効成分や作用pH域が確認できます。
医療用医薬品 : ベリチーム (KEGG)

ベリチームの消化酵素の配合比から見る得意な症状と食事

ベリチームが得意とする症状や食事内容は、そのユニークな消化酵素の配合比率と二重構造から読み解くことができます 。特に注目すべきは、脂肪とタンパク質に対する強力な消化能力です。

ベリチームの腸溶性顆粒に含まれる濃厚膵臓性消化酵素は、脂肪を分解するリパーゼ活性と、タンパク質を分解するプロテアーゼ活性が非常に高いのが特徴です 。これは、天ぷらや焼肉、中華料理といった脂質の多い食事や、ステーキなどのタンパク質が豊富な食事を摂った後の「胃もたれ」や「消化不良」に特に効果を発揮することを示唆しています。

具体的な症状と食事の例を以下に示します。

  • 脂っこい食事後の胃もたれ: 濃厚膵臓性消化酵素と細菌性脂肪分解酵素のダブルのリパーゼ作用により、脂肪の分解を強力にサポートします。これにより、脂肪分が原因で起こる胃排出の遅延や、それに伴う不快感を軽減します 。
  • タンパク質の消化不良: 肉類などを食べた後に感じるお腹の張りや不快感に対し、強力なプロテアーゼ活性がタンパク質の分解を助け、消化を促進します 。
  • 野菜の消化不良: 胃溶性部分に含まれるセルラーゼAP3は、植物の細胞壁を構成するセルロース(繊維素)を分解します 。これにより、野菜を食べた後のガスの発生やお腹の張りを和らげる効果が期待できます。

さらに、ベリチームは胃溶性と腸溶性の二段構えで働くため、食事の摂取から消化が進むまでの各段階で持続的に効果を発揮します 。例えば、胃の中ではまず胃溶性顆粒が溶け出して初期消化を助け、その後、食物が十二指腸に送られると、今度は腸溶性顆粒が溶けて膵液の働きを補強するという、非常に合理的な設計になっています。

このように、ベリチームは特に脂肪やタンパク質が豊富な現代的な食生活に起因する消化器症状に対して、その真価を発揮する薬剤と言えるでしょう。

エクセラーゼ配合錠・カプセルの特徴と膵外分泌機能不全への応用

エクセラーゼは、幅広い消化不良症状に対応可能な総合消化酵素薬であり、特に膵臓の機能が低下した「膵外分泌機能不全」の患者さんにおいて重要な役割を果たします 。

膵外分泌機能不全とは、慢性膵炎膵臓がん、膵臓切除後などの原因により、膵臓から分泌される消化酵素(膵液)が量・質ともに低下し、食物、特に脂肪の消化・吸収が著しく障害される病態です 。主な症状として、脂肪便(便が白っぽく、水に浮く)、体重減少、下痢、腹部膨満感などが見られます。

エクセラーゼは、このような状態に対して、不足した消化酵素を外部から補充する「膵酵素補充療法(PERT: Pancreatic Enzyme Replacement Therapy)」に用いられる薬剤の一つです 。エクセラーゼには、でんぷん、タンパク質、脂肪、繊維素を分解する複数の酵素がバランスよく配合されており 、膵液の代わりとなって消化を助けます。

エクセラーゼの特徴をまとめると以下のようになります。

特徴 詳細
バランスの取れた酵素配合 でんぷん(サナクターゼM)、タンパク質(プロクターゼ)、脂肪(オリパーゼ2S)、繊維素(メイラーゼ)など、主要な栄養素に対応する酵素を網羅的に含んでいます 。
膵臓性消化酵素の配合 膵臓性消化酵素TAも含まれており、膵機能低下を直接的に補う役割を果たします 。
幅広い消化不良への適応 特定の原因によらない一般的な消化不良、食べ過ぎ、胃もたれから、膵外分泌機能不全のような病的な状態まで、幅広く使用されます 。

近年の研究では、膵外分泌機能不全に対する膵酵素補充療法が、患者の栄養状態やQOL(生活の質)を改善することが示されています。適切な量の消化酵素を食事と共に服用することで、消化吸収が正常化し、脂肪便や下痢といった不快な症状が劇的に改善することが期待できます。

エクセラーゼは、そのバランスの取れた成分構成により、膵機能が低下した患者さんの消化吸収をサポートし、栄養状態の維持・向上に貢献する重要な薬剤と言えるでしょう 。

参考論文:膵外分泌機能不全患者におけるQOL改善に関する研究。
膵外分泌機能不全を有する患者における 前治療の有無、成因および性別が パンクレリパーゼ製剤による治療効果に及ぼす影響

ベリチームとエクセラーゼの薬価・剤形・規格の比較

ベリチームとエクセラーゼを選択する上で、有効性や安全性はもちろんのこと、薬価や剤形、規格といった要素も実臨床では重要になります。患者さんのアドヒアランス(服薬継続)や経済的負担、嚥下能力などを考慮した選択が求められます。

2024年現在、エクセラーゼ配合錠および配合カプセルは供給上の問題から販売中止となっているケースがあり、代替薬としてベリチームや他の消化酵素薬が選択されることが増えています。ここでは、一般的な違いについて比較します。

剤形と規格

  • ベリチーム: 「配合顆粒」のみの剤形です 。顆粒剤は、患者さんの年齢や症状に応じて用量を細かく調節しやすいというメリットがあります 。例えば、小児や嚥下機能が低下した高齢者に対して、少量から開始したり、オブラートに包んだりといった工夫が可能です。
  • エクセラーゼ: 「配合錠」と「配合カプセル」の2種類の剤形がありました 。錠剤やカプセルは1回量が明確で服用しやすい一方、用量の微調整は顆粒剤に比べて難しい面があります。カプセルは、内容物を取り出して投与することも可能ですが、その際は薬剤の安定性に注意が必要です。

薬価

薬価は改定ごとに変動するため、常に最新の情報を確認する必要がありますが、一般的な傾向として、同等の消化力価で比較した場合、両者に大きな差はないことが多いです。しかし、1回あたりの服用量や1日あたりの服用回数が異なるため、1日薬価、ひいては1ヶ月あたりの薬剤費は個々の処方内容によって変動します。

以下に比較表をまとめます。

項目 ベリチーム配合顆粒 エクセラーゼ配合錠・カプセル
剤形 顆粒 錠剤、カプセル
用量調節 容易 (0.1g単位での調整が可能) やや難しい (錠・カプセル単位)
服用対象 小児から高齢者まで幅広く対応可能 錠剤やカプセルが飲める患者が主体
供給状況 安定供給 販売中止・限定出荷の場合あり

患者さんのライフスタイルや嚥下能力、そして経済的な側面も考慮に入れ、最適な薬剤を選択することが重要です。特に、長期にわたる服用が必要な慢性膵炎などの患者さんにとっては、継続しやすさが治療効果を左右する大きな要因となります。

【独自視点】ベリチームと脂質異常症:リパーゼ活性が脂質吸収に与える影響と食事指導への応用

ベリチームやエクセラーゼのような消化酵素薬は、通常、消化不良の改善を目的として処方されます。しかし、その作用機序、特に脂肪を分解する「リパーゼ」の働きに着目すると、脂質異常症の患者さんへの食事指導や治療において、新たな視点を提供できる可能性があります 。

食事から摂取された脂肪(トリグリセリド)は、リパーゼによって脂肪酸とグリセリンに分解されて初めて小腸から吸収されます。ベリチームは、強力なリパーゼ活性を持つ濃厚膵臓性消化酵素と細菌性脂肪分解酵素を含んでおり、食事由来の脂肪の分解・吸収を強力に促進します 。

これは一見、血中の脂質を上昇させてしまうため、脂質異常症の管理には不利に働くように思えるかもしれません。しかし、この「脂肪の吸収を助ける」という作用を逆手に取り、食事指導と組み合わせることで、より効果的な栄養管理が可能になると考えられます。

食事指導への応用

  • 良質な脂質の選択と吸収促進: 脂質異常症の食事療法では、脂質を完全に避けるのではなく、魚油に多く含まれるEPAやDHAといった多価不飽和脂肪酸などの「良質な脂質」を適量摂取することが推奨されます 。消化機能が低下している患者さんにおいて、ベリチームを併用することで、これらの有益な脂質の吸収を助け、その効果を最大限に引き出す手助けができる可能性があります。
  • 脂溶性ビタミンの吸収改善: 脂肪の吸収が悪いと、ビタミンA、D、E、Kといった脂溶性ビタミンの吸収も低下しがちです。ベリチームによって脂肪の消化吸収を正常化することは、これらの必須ビタミンの欠乏を防ぎ、全身の健康状態を維持することにも繋がります。

実際に、嚢胞性線維症などの重篤な脂肪吸収不全を伴う疾患では、膵酵素補充療法(PERT)が血清トリグリセリド値に影響を与えることが報告されています 。この研究は、消化酵素が脂質代謝に直接的に関与していることを示しており、非常に興味深い知見です。

もちろん、消化酵素薬の使用はあくまで医師の判断のもとで行われるべきですが、脂質異常症の患者さんで、特に「胃がもたれやすい」「脂っこいものを食べると下痢をする」といった消化器症状を併発している場合、単にスタチン系薬剤 やフィブラート系薬剤 を投与するだけでなく、消化吸収の状態にも目を向けることが重要です。ベリチームのような薬剤を用いて消化機能をサポートしつつ、食事の質をコントロールしていくというアプローチは、患者さんのQOL向上と治療効果の増強に貢献する、新しい治療戦略の一つとなり得るのではないでしょうか。

参考論文:膵酵素補充療法が脂質吸収に与える影響についての研究。
Intestinal Absorption of Lipids Using a Pancreatic Enzyme-Modified Oral Nutritional Supplement in Patients with Cystic Fibrosis with Exocrine Pancreatic Insufficiency


【指定医薬部外品】ロート製薬 パンシロン健胃錠 15錠 [指定医薬部外品]