ベナパスタ軟膏の効果と副作用
ベナパスタ軟膏の基本的な効果と作用機序
ベナパスタ軟膏は、ジフェンヒドラミンラウリル硫酸塩を主成分とする外用抗ヒスタミン薬です。この薬剤の作用機序は、ヒスタミン作用を抑制することにあり、皮膚におけるアレルギー反応を効果的に抑制します。
具体的な効果として以下が挙げられます。
- ヒスタミン皮膚反応の抑制
- マントー反応の抑制
- 回虫体腔液反応の実験的皮膚反応における紅斑、膨疹、そう痒の抑制
田辺三菱製薬が製造販売するこの軟膏は、1g中にジフェンヒドラミンラウリル硫酸塩40mgを含有しており、白色の軟膏で特異臭を有します。薬価は24.9円(10g)と比較的安価で、医療経済的にも優れた選択肢となっています。
興味深いことに、ベナパスタ軟膏は2023年7月に販売中止が発表されており、現在は経過措置期間中です。このため、代替薬剤への切り替えを検討する必要があります。
ベナパスタ軟膏の適応症と臨床での使用方法
ベナパスタ軟膏の適応症は以下の5つに分類されます。
- じんましん 🔴
- 湿疹 🔴
- 小児ストロフルス 🔴
- 皮膚そう痒症 🔴
- 虫さされ 🔴
用法・用量については、通常症状により適量を1日数回患部に塗布又は塗擦します。ただし、重要な注意点として、炎症症状が強い浸出性の皮膚炎の場合には、適切な外用剤の使用によりその炎症が軽減後もかゆみが残る場合に使用することが推奨されています。
臨床現場では、以下のような症例で特に効果を発揮します。
- 急性じんましんの症状緩和
- アトピー性皮膚炎の掻痒感軽減(炎症軽減後)
- 虫刺症による局所的なかゆみ
- 接触性皮膚炎の症状改善
小児ストロフルスは、乳幼児に多く見られる虫刺過敏症の一種で、ベナパスタ軟膏は特にこの疾患に対して長年使用されてきた実績があります。
ベナパスタ軟膏の副作用と安全性プロファイル
ベナパスタ軟膏の副作用発現頻度は比較的低く、総症例661例中副作用が報告されたのは14例(2.12%)でした。主な副作用は以下の通りです。
頻度別副作用一覧
頻度 | 副作用の種類 | 具体的症状 |
---|---|---|
0.1~5%未満 | 過敏症 | 皮膚発赤、腫脹、そう痒感、湿潤 |
0.91% | 灼熱感 | 塗布部位の熱感 |
0.76% | 過敏症 | アレルギー反応 |
外用薬であるため、全身への影響は極めて少なく、重篤な副作用の報告はほとんどありません。しかし、塗布後にかえって赤みやかゆみがひどくなる場合は、使用を中止し、早めに受診することが重要です。
特に注意すべき点として、開蓋後にカビが発生する場合があるため、汚染防止のため清潔に取り扱う必要があります。保管は室温で行い、直射日光や高温多湿を避けることが推奨されています。
副作用が認められた場合には、使用を中止し適切な処置を行うことが添付文書に明記されており、医療従事者は患者への適切な指導が求められます。
ベナパスタ軟膏の薬物動態と相互作用
ベナパスタ軟膏の有効成分であるジフェンヒドラミンラウリル硫酸塩は、化学名を2-(Diphenylmethoxy)-N,N-dimethylethylamine laurylsulfateといい、白色~黄褐色の固体又は粘稠な液体として存在します。
理化学的性質
- アセトニトリル、メタノール、エタノール(99.5)又はジエチルエーテルに極めて溶けやすい
- 水に極めて溶けにくい
この性質により、皮膚への浸透性が良好で、局所での効果発現が期待できます。外用薬であるため、経皮吸収による全身への影響は最小限に抑えられており、他の薬剤との相互作用についても特に注意すべき報告はありません。
ただし、第1世代抗ヒスタミン薬の特性として、経皮吸収された場合でも軽度の鎮静作用を示す可能性があります。特に広範囲への塗布や長期使用の際は、この点を考慮する必要があります。
添加物として、グリセリン脂肪酸エステル、サラシミツロウ、ショ糖脂肪酸エステルなど多数の成分が含まれており、これらの成分に対するアレルギー歴がある患者では注意が必要です。
ベナパスタ軟膏の販売中止と代替治療選択肢
2023年7月、田辺三菱製薬はベナパスタ軟膏4%の販売中止を発表しました。経過措置期限は2024年3月31日とされており、2025年10月版の医薬品マスタから削除予定となっています。
この販売中止により、医療現場では代替薬剤への切り替えが必要となっています。類似の効果を持つ外用抗ヒスタミン薬として、以下のような選択肢が考えられます。
代替薬剤の検討ポイント
- 同じ第1世代抗ヒスタミン薬系の外用剤
- ステロイド外用薬との併用療法
- 内服抗ヒスタミン薬への変更
特に小児ストロフルスや慢性的な皮膚そう痒症の患者では、長期間ベナパスタ軟膏を使用していたケースも多く、代替薬剤選択時には患者の症状や年齢、使用部位などを総合的に考慮する必要があります。
医療従事者は、ベナパスタ軟膏を処方していた患者に対して、適切な代替治療法を提案し、治療の継続性を確保することが重要です。また、在庫管理においても、販売中止を踏まえた適切な対応が求められています。
この販売中止は、長年にわたって皮膚科領域で使用されてきた薬剤の一つが市場から消えることを意味しており、医療現場での影響は少なくありません。今後は、より新しい治療選択肢や、エビデンスに基づいた治療法への移行が期待されています。