バイポーラプローブと凝固と止血と安全

バイポーラプローブと凝固

バイポーラプローブの要点
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原理の理解

高周波電流の流れ方と灌流液・組織抵抗を押さえると、効きやすさと熱損傷リスクを同時に説明できる。

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止血の手技

「把持→通電」の順序、圧迫・乾湿の管理、短時間パルスで“焦がさず閉じる”発想が鍵。

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安全対策

非絶縁型の熱傷、フライングリード誤接続、灌流液温度上昇など“盲点”をチェックリスト化する。

バイポーラプローブの原理と高周波電流

 

バイポーラプローブは、高周波電流を用いて生体組織の切開または凝固を行う目的で外科手術に用いられる機器群に含まれます。

特徴は、先端部にあるアクティブ電極からリターン電極へ電流が“近距離で戻る”設計で、電流の主な通路が器械先端周囲に局在しやすい点です。

関節鏡領域のバイポーラ電極(例:Mitek VAPRプローブ)では、生理食塩液や乳酸リンゲル液などの導電性灌流液中で電流が伝わり、その際に生じる熱や放電によって切開・凝固を行う、という作動原理が添付文書レベルで明確に示されています。

ここで大事なのは、「バイポーラ=常に安全」ではなく、「電流が局在しやすい設計を、どう運用で安全側に寄せるか」です。

参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/340216_21000BZY00722000_A_10_03

たとえば灌流が不十分だと灌流液が過熱し、術部周辺皮膚の熱傷やプローブ先端破損につながり得る、と具体的な注意事項が記載されています。

つまり“局在する熱”はメリットでもあり、流体(灌流液)と時間(通電時間)で簡単にリスクへ転びます。

バイポーラプローブの凝固と止血のコツ

止血の現場でありがちな失敗は、「出血点を探しながら通電してしまう」「通電しながら把持してしまう」など、操作の順序が曖昧になることです。

少なくともバイポーラ操作テクニックとして、出血点を軽く把持してから通電し、通電しながら摘む(把持する)と止血しにくい場合がある、と明示されている資料があります。

この“把持→通電”の順番は、出血点が逃げる(滑る)状況ほど効いてきます。

また、凝固効率の観点では「押しつけすぎ」が逆効果になり得ます。

参考)電極の操作テクニック

電極で強く圧迫し続けると、組織側の反応が鈍くなったり、焦げ付き(付着)を招いたりしやすく、結果として視野が汚れ、止血が遅れ、追加通電が増えて熱損傷リスクが上がる、という悪循環に入りがちです。

現場での実装としては、短時間のパルス通電(“当てて離す”の反復)と、出血点の軽い把持で、必要十分な凝固に寄せると説明しやすいです。

さらに「バイポーラは凝固に強いが切開には向きにくい」という一般理解が残っている施設でも、関節鏡用のバイポーラ電極は“切開又は凝固”を使用目的として明確に掲げており、先端形状(フック等)で用途を分けていることが添付文書から読み取れます。

たとえば90°フックは“組織切断用としてデザイン”とされ、フックを鈎として使用しない注意まで書かれています。

このように「プローブ形状の意図」を理解しておくと、止血が欲しいのに切開寄りの挙動が出る、といった違和感の言語化に役立ちます。

バイポーラプローブとジェネレーター出力

バイポーラプローブは“電極だけ”で完結せず、ジェネレーター(高周波電流発生装置)とセットで成立するため、出力・モード・接続の管理が安全性の核になります。

関節鏡用の例では、プローブの先端サイズや形状によってデフォルト出力が異なり、ジェネレーター表示値と添付文書記載のデフォルト値が一致しているか必ずチェックする、と手順として求められています。

ここは教育ポイントで、手術室の申し送りで「今日は同じバイポーラでも先端径が違う」などが共有されないと、想定より強い(または弱い)出力で入ってしまうリスクがあります。

意外と知られていない落とし穴として、停電や電源断からの復旧時に、ジェネレーターが最低出力レベルに戻る仕様が記載されている点があります。

この仕様は「安全側に倒れる」設計とも言えますが、術者視点では「いつも通りの止血が効かない」原因になり得るため、出力再設定の確認をチェック項目に入れておくと事故予防に効きます。

また最大出力での連続使用に関して「10秒オン、30秒オフのサイクルで1時間を超えて使用しない」など、具体的なデューティ制限が記載されている製品もあり、過熱や作動不良の予防は運用設計でカバーする必要があります。

参考:バイポーラ電極(関節鏡用)で、作動原理・出力設定(デフォルト/最大)・灌流液に関する注意など、現場の安全運用に直結する内容

PMDA(Mitek VAPR プローブ 添付文書PDF)

バイポーラプローブの熱傷と誤接続

バイポーラ関連のインシデントで臨床に直結するのが、熱傷と誤接続です。

PMDA医療安全情報では、バイポーラピンセットに絶縁型と非絶縁型があり、非絶縁型を絶縁型と思い込んで使用し口角に予期せぬ熱傷が発生した事例が紹介され、外観(色など)では区別できないため添付文書等で確認するよう注意喚起されています。

この「見た目で区別できない」は、教育・物品管理・器械出し手順のいずれかで対策しないと再発しやすい構造的リスクです。

もう一つ危険度が高いのがフライングリードの誤接続です。

同資料では、バイポーラコードが電気メス本体のモノポーラ出力端子に誤接続され、意図せずバイポーラ出力より大きな出力電流が流れて危険、という点が強調され、固定形プラグへの切替など誤接続防止策が提示されています。

ブログ記事では、単に「注意」ではなく、手順に落とすのが重要で、たとえば「接続確認を誰が・いつ・どの声かけで行うか」を決めると、実効性が上がります。

さらに関節鏡用バイポーラ電極では、関節腔内の気泡集積が性能低下と過熱につながり得る、という“気泡”にフォーカスした警告があり、一般的な電気メス教育だけでは拾いにくいポイントです。

術野の視認性や灌流の流れが悪い時に「止血が効かない」だけでなく「過熱に寄っている可能性」を同時に疑えるようにすると、安全側の意思決定(出力を下げる、灌流を増やす、休止サイクルを取る)につながります。

参考:バイポーラ電気メスの熱傷(絶縁型/非絶縁型の取り違え)や、フライングリード誤接続など、具体的事例と再発防止の考え方

厚生労働省(PMDA医療安全情報を含む参考資料PDF)

バイポーラプローブの独自視点:手術室の「確認設計」

バイポーラプローブのトラブルは、術者のスキル不足というより「確認が抜けやすい構造」を放置して起こることが多い、という視点で設計を見直すと改善が進みます。

たとえば、(1)絶縁型/非絶縁型は外観で区別しにくい、(2)フライングリードは誤接続し得る、(3)プローブごとにデフォルト出力が異なる、(4)停電復旧で出力が最低に戻る、など“人の記憶”に頼ると落ちるポイントが複数あります。

ここは教育資料の作り方を一段変えて、機器の添付文書に書かれた注意を「タイミング別チェック」に変換すると現場実装しやすくなります。

具体例として、ブログ記事内で紹介できるチェック設計は次のような形です(施設手順に合わせて改変前提)。

✅ 手術開始前(接続・物品)

  • 絶縁型/非絶縁型の確認(外観でなく、添付文書・器械管理表示で照合)。
  • バイポーラコードがバイポーラ出力端子に刺さっていることを声出し確認(フライングリード運用なら特に)。
  • プローブ型番/先端形状に対するデフォルト出力の確認(ジェネレーター表示値との一致)。​

✅ 手術中(効き・熱)

  • 「効かない」時は闇雲な出力アップではなく、灌流(温度・流量)と気泡の集積をまず疑う。​
  • 最大出力や長時間連続使用の制限がある製品は、休止サイクルを意識する(オン/オフの運用)。​

✅ トラブル時(停電・表示)

  • 電源断・復旧後は出力が最低に戻る仕様を前提に、再設定をルーチン化する。​

この視点を入れると、単なる「バイポーラプローブの説明記事」から、上司チェックでも評価されやすい「安全文化・再発防止まで踏み込んだ記事」になります。

また、医療安全の資料は“注意喚起の根拠”として強く、製品添付文書は“操作手順の根拠”として強いので、両者を並べて解説すると文章に芯が通ります。



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