AVF用穿刺針と透析針
AVF用穿刺針のゲージと流量
AVF用穿刺針の「ゲージ」は、外径(太さ)と流量に直結し、一般に15G>16G>17G>18Gの順で太く、流量も増えます。
たとえば、単回使用透析用針の添付文書例では、外径が15G=1.8mm、16G=1.7mm、17G=1.5mm、18G=1.3mmと示され、同条件の実測流量が15G 303mL/min、16G 255mL/min、17G 201mL/min、18G 140mL/minと記載されています。
つまり「太い針=確保できる流量が増えやすい」という大枠は正しい一方で、同時に穿刺時の侵襲(痛み・出血・血腫の作りやすさ)や、血管壁への負担も増えやすい点が臨床的なトレードオフになります。
現場での使い分けを言語化すると、次のような整理が役立ちます。
- 目標血流量(QB)を達成したい:太め(例:15G/16G)を検討しやすい。
参考)https://med.nipro.co.jp/med_eq_category_detail?id=a1U1000000b52zMEAQ
- 血管が細い・皮下脂肪が厚い・穿刺痛が課題:細め(例:17G/18G)でリスクと快適性を優先しやすい。
- ただし「ゲージ変更」は単独で考えず、穿刺部位・角度・固定・止血まで含めた再現性で評価する。
小ネタとして、添付文書では流量が「JIS T3249(血液透析用留置針の流量試験)」に従う条件(高さ1000mmからの落下水量測定)での実測値とされ、臨床のQBそのものではない点は、スタッフ教育で誤解が起きやすいポイントです。
AVF用穿刺針の禁忌と単回使用
AVF用穿刺針(透析用針)は、添付文書上「再使用禁止」「再滅菌禁止」が明確に記載されており、単回使用が前提です。
再使用・再滅菌を行うと、滅菌保証だけでなく、針先の微細な損傷や潤滑状態の変化により穿刺抵抗が上がり、結果として血管損傷や血腫形成のリスクを上げる可能性があります(少なくとも“安全設計の前提”から外れます)。
また、同じ添付文書では重大な有害事象として、血管穿孔、動脈誤穿刺、神経損傷、血腫形成、血管閉塞、空気塞栓症、菌血症、敗血症などが挙げられており、「針の取り扱い」が単なる物品管理ではなく、医療安全そのものだと再確認できます。
実務的には、次のような“ありがちな事故の芽”を、手順に組み込んで潰します。
- 包装をまとめて開けて針が曲がる(添付文書では開封方法の注意として示唆)。
- 針先確認を省略する(異物付着や異常があれば交換と明記)。
- 血管内で針を前後に動かす(しないこと、と明記)。
- 接続部の過度な締付け(破損→漏血やエア混入の原因になり得ると注意喚起)。
AVF用穿刺針と穿刺方法
「どの針を選ぶか」と同じくらい、「どの穿刺方法で血管を育てるか」がAVFの長期予後を左右します。
穿刺方法として、縄ばしご法は穿刺部位を少しずつずらし、穿刺痕を整列させることで、長期的に変形が少なく狭窄も起こしにくい“世界的に推奨”される方法、と説明されています。
一方で、狭い場所を繰り返し刺すArea法(フタコブ法)はコブとくびれを作りやすく、推奨されないとされ、見た目の変形が生活の質(長袖で隠したくなる等)に影響する現実も示されています。
ボタンホール穿刺は、同じ針穴を繰り返してトンネル状の穿刺路を作る方法として紹介され、痛みやストレスが少ない可能性が語られる一方、感染が多いことが問題視されてきた、と整理されています。
参考)https://med.nipro.co.jp/med_eq_category_detail?id=a1U1000000b52zNEAQ
さらに興味深いのは「感染が多い理由」として、透析後に乾燥放置された痂皮(かさぶた)を穿刺時に押し込むことが感染に関与している可能性が述べられ、湿潤を保つ工夫や洗浄手技の工夫で感染が減った経験が紹介されている点です。
この話は、AVF用穿刺針の選択を「ゲージ」だけに矮小化せず、皮膚管理・痂皮管理・手技標準化をセットにする重要性を示します。
参考:穿刺方法(縄ばしご法・Area法・ボタンホール法)と、ボタンホールの感染課題・痂皮管理(湿潤治療など)の考え方
AVF用穿刺針と合併症
AVF用穿刺針の使用に関連して、添付文書では重大な有害事象として血腫形成、血管穿孔、動脈誤穿刺、静脈圧上昇、菌血症、敗血症などが列挙され、穿刺が“局所の手技”に留まらないことが明記されています。
特に血腫は、穿刺直後の腫脹・疼痛だけでなく、血管周囲の圧迫による血流不良→穿刺困難の連鎖を招き、次回以降の針選択(太さを下げる/上げる)にも影響するため、初動対応の標準化が重要です。
また、空気塞栓症や回路離脱など「針そのもの」より接続・固定・クランプ運用に関係するリスクも、同じ枠で重大事項として注意喚起されています。
ここは教育用に、現場で使える“観察ポイント”に落とすと定着します。
- 逆血の確認と、その後に針を前後に動かさない(穿孔・血腫の予防に直結)。
- 翼の固定と、チューブの折れ曲がり防止(脱血不良や圧上昇の予防に関与)。
- ルアー部の過度な締付けを避ける(破損→漏血・エア混入の芽を潰す)。
- 「薬液(アルコール等)」がルアー部に付着しない運用(亀裂→漏血・エア混入のリスクとして明記)。
参考:透析用針の流量(JIS条件の実測値)、禁忌(再使用禁止)、有害事象(血腫・穿孔・菌血症など)の一覧
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/780043/780043_15600BZZ00791000_A_01_05.pdf
AVF用穿刺針と固定テープ
検索上位で真正面から語られにくいのが、「固定テープ」と“材料劣化”の相性です。
添付文書では、ルアーコネクター部にアルコールや消毒液、局所麻酔剤などの薬剤が付着すると亀裂が生じ、漏血やエア混入を起こすおそれがある、と具体的に注意されています。
この注意は、穿刺部の皮膚消毒そのものを否定する話ではなく、「消毒液が乾く前に固定して流れ込む」「テープ交換のたびに濡れた綿球が接続部に触れる」といった“作業動線”が、接続部トラブルの引き金になり得る、という現場設計の問題に読み替えると有用です。
固定に関しては、次のような観点で標準化すると、針選択(ゲージ)以上にトラブルが減ることがあります。
- テーピングの目的を分解する:①翼の固定、②チューブの屈曲防止、③接続部の保護(それぞれ貼り方が違う)。
- “濡れ”と“接続部”を近づけない:消毒後は乾燥を待ち、接続部は清潔に保護してから固定する。
- クランプ位置のルール化:翼付近・ルアー付近を避ける注意があるため、誰がやっても同じ位置にする。
- 針と回路を「一体として」扱う:針だけ正しくても、回路側の緩みや牽引があれば離脱・漏れが起きる。
ここまで整えると、AVF用穿刺針のゲージを上げ下げする前に、同じ針で安定運用できるケースが増えます(=患者の痛み、スタッフの心理的負担、材料コストの面でも効いてきます)。