アトルバastanチンとロスバスタチンの強さの違い
アトルバスタチンとロスバスタチンのLDLコレステロール低下作用の強さ比較
アトルバスタチン(先発品名:リピトールⓇ)とロスバスタチン(先発品名:クレストールⓇ)は、いずれもHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の中でも特にLDLコレステロール(LDL-C)低下作用が強い「ストロングスタチン」に分類されます 。しかし、この2剤の間にも作用の強さには序列が存在します。
複数の臨床試験やメタ解析の結果から、一般的にロスバスタチンの方がアトルバスタチンよりも強力なLDL-C低下作用を示すことが明らかになっています 。
参考)コレステロールとは② 内服治療~スタチンについて – 医療法…
具体的なLDL-C低下率の目安は以下の通りです。
- ロスバスタチン 20mg/日: 約55%
- アトルバスタチン 40mg/日: 約50%
- ピタバスタチン 4mg/日: 約45%
このように、最大用量に近い投与量で比較した場合、ロスバスタチンが最も高いLDL-C低下率を誇ります。この強力な作用から、ロスバスタチンは「最強のスタチン」と称されることもあります 。
もちろん、これはあくまで平均的なデータであり、個々の患者さんの背景(年齢、性別、遺伝的素因、食事療法への反応など)によって効果には個人差が生じます。治療目標となるLDL-C値や、患者さんの忍容性を考慮しながら、適切な薬剤と用量を選択することが肝要です。例えば、スタンダードスタチンでは効果が不十分な場合や、より大幅なLDL-C低下が求められる家族性高コレステロール血症(FH)などの症例において、これらのストロングスタチンが第一選択薬として考慮されます 。
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以下の表は、ストロングスタチンとスタンダードスタチンのLDL-C低下率の目安を比較したものです。
| 分類 | 薬剤名 | LDL-C低下率の目安 |
|---|---|---|
| ストロングスタチン | ロスバスタチン | 約40-55% |
| アトルバスタチン | 約35-50% | |
| スタンダードスタチン | プラバスタチン | 約20-30% |
| シンバスタチン | 約25-35% |
この表からも、ストロングスタチンがいかに強力であるかがわかります。実際、その効果の高さから、臨床現場ではストロングスタチンが選択されるケースが多くなっています 。
アトルバスタチンの効果と副作用:脂溶性スタチンの特徴と注意点
アトルバスタチンは、その化学的性質から**脂溶性(親油性)スタチン**に分類されます 。一方、ロスバスタチンは水溶性(親水性)スタチンです 。この「溶解性」の違いは、体内動態や副作用のプロファイルに大きく影響を与えるため、臨床で使い分ける上で非常に重要なポイントとなります。
脂溶性スタチンの特徴は以下の通りです。
- 🧠 **組織移行性**: 脂溶性であるため、細胞膜を通過しやすく、主な作用臓器である肝臓以外の末梢組織(筋肉、脳、血管壁など)へも広く分布しやすい性質を持ちます 。
- 💊 **代謝経路**: 主に肝臓の薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)のCYP3A4によって代謝されます。これは多くの薬剤が利用する代謝経路であるため、薬物相互作用のリスクが高くなる可能性があります 。
この脂溶性という性質は、メリットとデメリットの両面を持ち合わせています。
**✅ メリット(多面的効果)**
肝臓以外への組織移行性の高さから、LDL-C低下作用に加えて、血管内皮機能の改善、抗炎症作用、プラーク安定化作用といった「多面的効果(pleiotropic effects)」がより強く発揮される可能性が示唆されています。これにより、心血管イベントの抑制に寄与すると考えられています。
❌ デメリット(副作用)
一方で、筋肉組織へ移行しやすいため、水溶性スタチンと比較して横紋筋融解症に代表される筋肉関連の副作用(筋肉痛、脱力感、CK上昇など)のリスクが理論上は高まる可能性があります。また、中枢神経系への移行も示唆されており、一部では認知機能への影響や睡眠障害などが議論されることもありますが、明確な結論は出ていません。
さらに、CYP3A4で代謝されるため、併用薬には十分な注意が必要です。例えば、以下の薬剤はCYP3A4を強く阻害するため、アトルバスタチンの血中濃度を上昇させ、副作用のリスクを高めるため併用禁忌または注意とされています。
このように、アトルバスタチンを処方する際には、患者さんの併用薬を必ず確認し、相互作用のリスクを評価することが不可欠です。副作用の初期症状(原因不明の筋肉痛など)について患者さんへ事前に情報提供しておくことも重要となります。
アトルバstatチンとロスバスタチンの使い分け:糖尿病リスクと腎機能への影響
アトルバスタチンとロスバスタチンは、LDL-C低下作用や溶解性に違いがあるだけでなく、特定の病態を持つ患者さんへの影響、特に**新規糖尿病発症(NODM)リスク**において重要な差異が報告されており、これが臨床における使い分けの大きな判断材料となっています。
複数の大規模臨床試験や観察研究において、ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較して、新規糖尿病発症リスクが有意に高いことが示されています 。
参考)実臨床のスタチン、ロスバスタチンvs.アトルバスタチン|医師…
韓国で行われた大規模な比較試験(LODESTAR試験)では、冠動脈疾患患者を対象に両剤を3年間比較したところ、ロスバスタチン群はアトルバスタチン群に比べて、糖尿病治療薬の導入を要する新規糖尿病の発症率が有意に高い結果となりました(7.2% vs. 5.3%, HR 1.39)。同様の結果は、英国のUKバイオバンクのデータ解析でも確認されています 。
参考)CAD患者へのスタチン、種類による長期アウトカムの差は?/B…
この差が生じる明確な機序は完全には解明されていませんが、スタチンの種類によってインスリン感受性や膵臓β細胞機能への影響が異なる可能性が考えられています。
このエビデンスを踏まえると、以下のような使い分けが推奨されます。
- **糖尿病のリスクが高い患者さん**(耐糖能異常、メタボリックシンドローム、糖尿病の家族歴などがある場合)には、ロスバスタチンよりも**アトルバスタチンを優先的に選択**することが望ましいと考えられます。
- 既に糖尿病を発症している患者さんにおいても、血糖コントロールへの影響を考慮し、アトルバスタチンが選択されることがあります。
**腎機能への影響**
腎機能障害を持つ患者さんへのスタチン投与も注意を要する点です。アトルバスタチン、ロスバスタチンともに、重度の腎機能障害患者では用量調節が必要です。一般的に、スタチンは腎機能に対して保護的に働く可能性も示唆されていますが、薬剤の排泄経路が異なるため注意が必要です。中国および英国のデータベースを用いた研究では、ロスバスタチンとアトルバスタチンの慢性腎臓病(CKD)発症リスクに有意な差は見られなかったと報告されています 。しかし、個々の薬剤の添付文書に従い、eGFRの値に応じて初期投与量を減量するなどの配慮が求められます。
その他の有効性の比較
一方で、有効性に関してはどうでしょうか。前述のLODESTAR試験では、全死亡、心筋梗塞、脳卒中などの主要心血管イベント(MACE)の発生率において、両群間に有意な差は認められませんでした また、中国のデータベース研究では、ロスバスタチンの方がアトルバスタチンよりも全死亡およびMACEのリスクをわずかに低下させる可能性が示唆されましたが、その差は小さいとされています 。
これらの結果から、心血管イベント抑制効果に関しては、両剤に大きな差はないというのが現在の一般的な見解です。したがって、薬剤選択においては、LDL-C低下作用の強さだけでなく、患者さん個々の背景、特に糖尿病リスクを重点的に評価し、より安全に使用できる薬剤を選択する「テーラーメイド治療」の視点が極めて重要になります。
アトルバスタチンとロスバスタチンの薬価と費用対効果の比較
脂質異常症の治療は長期にわたることが多いため、薬剤の費用、すなわち**薬価**と**費用対効果**は、患者さんの治療継続性(アドヒアランス)や医療経済の観点から無視できない重要な要素です。アトルバスタチン(リピトールⓇ)とロスバスタチン(クレストールⓇ)は、いずれも後発医薬品(ジェネリック医薬品)が広く普及しており、先発医薬品と比べて薬剤費を大幅に抑えることが可能です 。
薬価の比較
薬価は改定ごとに変動しますが、2024年現在においても、一般的に同一用量で比較した場合、後発医薬品の薬価は先発医薬品の20%~50%程度に設定されています。
以下は、薬価の一例を模式的に示したものです(実際の薬価とは異なります)。
| 薬剤 | 規格 | 先発品薬価(例) | 後発品薬価(例) | 薬価差(例) |
|---|---|---|---|---|
| アトルバスタチン | 10mg | 80円 | 25円 | 55円 |
| 20mg | 140円 | 45円 | 95円 | |
| ロスバスタチン | 2.5mg | 50円 | 20円 | 30円 |
| 5mg | 95円 | 30円 | 65円 |
※上記はあくまでイメージです。実際の薬価は薬剤名やメーカーによって異なります。
このように、後発医薬品を選択することで、患者さんの自己負担額を大きく軽減できます。医療機関や薬局においては、フォーミュラリー(医薬品使用指針)を策定し、同種同効薬の中から費用対効果に優れた後発医薬品を推奨する動きが活発になっています 。
参考)https://www.ypa21.or.jp/pdf/formularyinfo05.pdf
費用対効果の観点
費用対効果を考える上では、 단순히薬価の安さだけでなく、**LDL-C 1%を低下させるためにかかる費用(cost per LDL reduction)**という指標が用いられることがあります。
ロスバスタチンはアトルバスタチンよりも強力なLDL-C低下作用を持つため、同じくらいのLDL-C低下を目指す場合、より低用量で済む可能性があります。例えば、「LDL-Cを40%低下させたい」という目標がある場合、
- アトルバスタチン10mgで達成できるかもしれない
- ロスバスタチンであれば2.5mgで達成できるかもしれない
といったケースが考えられます。この場合、ロスバстаチン2.5mgの後発品薬価がアトルバスタチン10mgの後発品薬価よりも安ければ、ロスバстаチンの方が費用対効果に優れる、と判断できます。
しかし、前述の通り、ロスバстаチンには糖尿病リスクの上昇という懸念があります。将来的に糖尿病を発症し、その治療が必要になった場合の医療費まで含めた長期的な視点で見ると、単純な薬価比較だけでは費用対効果を判断できない複雑さがあります。
したがって、実臨床における薬剤選択では、
- まず後発医薬品を基本選択肢として薬剤費を考慮する。
- 患者のLDL-C目標値と忍容性に基づき、必要な効果が得られる薬剤・用量を検討する。
- 糖尿病リスクなどの安全性プロファイルを勘案し、総合的な利益(ベネフィット)が不利益(リスク)を上回る薬剤を選択する。
という段階的なアプローチが求められます。患者さんに対しても、費用の問題だけでなく、なぜその薬剤が選択されたのか、安全性に関する情報も含めて丁寧に説明し、納得して治療を継続してもらうことが重要です。
アトルバстаチンと他剤併用時の意外な相互作用:降圧薬シロスタゾールとの関係性
アトルバスタチンとロスバスタチンの使い分けを考える際、LDL-C低下作用や副作用プロファイルが主な論点となりますが、医療従事者として知っておくべき、より専門的で意外な相互作用が存在します。その一つが、**特定の降圧薬との相互作用の違い**です。
2023年に発表された動物実験レベルの研究では、間歇性跛行や脳梗塞再発予防に用いられる薬剤であり、血管拡張作用による降圧効果も持つ**シロスタゾール(cilostazol)**とスタチンを併用した際の影響が検討されました 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10933198/
この研究 결과は非常に興味深いものでした。
- ✅ **ロスバстаチン**は、シロスタゾールの降圧効果を**増強**した。
- ❌ **アトルバстаチン**は、シロスタゾールの降圧効果に**影響を与えなかった**。
つまり、高血圧を合併している患者さんにおいて、ロスバstaチンとシロスタゾールを併用すると、予期せぬ過度の血圧低下をきたす可能性がある一方で、アトルバスタチンではその心配が少ないことを示唆しています 。
この差はなぜ生まれるのか?
研究では、この作用機序の違いについて、いくつかの可能性が考察されています 。
- **末梢血管抵抗への影響**: ロスバスタチンは、シロスタゾールによる末梢血管抵抗の低下作用を助長したが、アトルバстаチンにはその作用が見られなかった。
- **自律神経系への作用**: 心拍変動や圧反射感受性(BRS)の解析から、ロスバстаチンは自律神経のバランスを副交感神経優位に傾けることで降圧効果を補助する可能性が示された。
- **内皮機能への関与**: 血管内皮機能の指標となる因子への影響が、両スタチンで異なっていた可能性がある。
この研究はまだ動物実験の段階であり、直接人間の臨床に当てはめるにはさらなる検証が必要です。しかし、スタチンの選択が、併用する循環器系薬剤の効果に影響を与えうるという事実は、処方を検討する上で新たな視点を提供します。
特に、以下のようなケースでは、この情報を念頭に置くと、より安全で個別化された薬物治療につながるかもしれません。
- 既にシロスタゾールを服用中の患者さんに、スタチンを新規で開始する場合。
- 血圧が不安定な患者さんや、起立性低血圧のリスクがある高齢者にスタチンを選択する場合。
このように、アトルバстаチンとロスバстаチンは、単にコレステロールを下げる強さが違うだけでなく、他の薬剤との相互作用においても異なる顔を見せることがあります。広く知られているCYPを介した相互作用だけでなく、このような薬力学的な相互作用の可能性も考慮に入れることで、処方の精度を一層高めることができるでしょう。
**参考情報:シロスタゾールとスタチンの相互作用に関する論文**
このセクションで解説した研究の詳細については、以下の原著論文をご参照ください。ロスバスタチンがシロスタゾールの降圧効果を増強するメカニズムについて詳細に述べられています。
Rosuvastatin, but not atorvastatin, enhances the antihypertensive effect of cilostazol in an acute model of hypertension (PMC)

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