アスペルガー症候群大人女性の特徴と診断

アスペルガー症候群大人女性の特徴

アスペルガー症候群(ASD)大人女性の主な特徴
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コミュニケーションの困難さ

雑談が苦手で受け身な態度を取りやすく、相手の感情や意図を読み取ることが難しい傾向があります

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カモフラージュ行動

周囲に合わせて特性を隠そうとする行動により、診断が遅れやすく精神的疲労が蓄積しやすい特徴があります

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二次障害のリスク

慢性的なストレスからうつ病や不安障害、心身症などの二次障害を発症しやすい傾向があります

アスペルガー症候群大人女性のコミュニケーション特性

アスペルガー症候群を持つ大人の女性は、コミュニケーションにおいて独特の困難を抱えています。特に雑談のような目的のはっきりしない会話が苦手で、相手の感情や意図を読み取るのが難しく、どう返答すればよいか分からず黙ってしまったり、受け身な態度になりがちです。また、自分の話ばかりをしてしまう、またはまったく話さなくなるといった両極端な傾向も見られます。

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対人関係において困難を抱えていても、軽度の場合は周囲に合わせられることから問題が目立ちにくく見逃されやすいといわれています。しかし、内面では無理をしているため、精神的な負担から疲れやストレスが蓄積されやすい状況にあります。会話の中で相手の関心や意図を察するのが難しいと感じることや、集団での会話についていくのが苦手で聞き役に回ったり黙ってしまったりすることが多いのも特徴です。

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表情や声のトーンから相手の本当の気持ちを読み取るのが難しく、暗黙のルールや場の空気を読むことが苦手で、人間関係で失敗することが多いという困難も抱えています。特に「女子トーク」が盛んになる思春期あたりから生きづらさを感じるようになり、こだわりが強い傾向にあるため他者の話に興味が持てないことも少なくありません。

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アスペルガー症候群女性特有のカモフラージュ行動

アスペルガー症候群の女性に特徴的な行動として「カモフラージュ」があります。これは、ある社会的状況で自閉的特性をできるだけ目立たないようにするために、明らかに学習された、あるいは暗黙裡に身に付けた、意識的または無意識な方略を使用することと定義されています。簡単に言うと、発達障害の特性を同級生や周囲にいる人たちの前で見せないようにすることです。

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性差で言うと女の子や女性に多く、彼女たちは幼児期から周囲に合わせることを自然と学びます。女の子の場合、最初は目立たないように、”よい女の子”らしく見えるように、周りに「同化」していくのが特徴です。このカモフラージュ行動の背景には、文化的・社会的なジェンダー規範の影響があると考えられており、特に女の子は幼い頃から「相手の気持ちを考えて行動すること」や「周囲に気を配ること」が大切だと教えられる傾向があります。

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カモフラージュは表面上の適応を可能にする一方で、次第に自分が何者であるのか分からなくなる「自己喪失感」や、慢性的な疲労感、不安、うつといった二次的なメンタルヘルスの問題につながることが報告されています。常に気を張っていて人との関わりの後でどっと疲れる、周囲に合わせて自分を取り繕うことが多く本当の自分が分からなくなってしまうことがあるのも、カモフラージュによる影響です。​

アスペルガー症候群大人女性の感覚過敏と日常生活への影響

多くのアスペルガー症候群の人に見られる特性として、特定の感覚に対する過敏さや鈍感さがあります。例えば、特定の音(咀嚼音、タイピング音など)や光(蛍光灯のちらつき)、匂い(香水、洗剤)に対して極端に不快感や苦痛を感じる「感覚過敏」があります。一方で、痛みや温度に気づきにくい「感覚鈍麻」がある人もいます。

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衣服のタグが肌に触れるのが耐えられない、特定の素材の服しか着られない、といった触覚の過敏さもよく見られます。触覚に関していえば、鋭敏さが感覚過敏につながる証拠がいくつか見つかっており、ASD者では腕に与えられた触覚刺激について、より細かい振動まで検知できることが報告されています。このことは、服のタグなどから加わる触覚刺激に対してより鋭敏なため、「チクチクしている」と感じやすい可能性を示しています。

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これらの感覚特性は、日常生活におけるストレスや困難の大きな要因となります。音、光、匂い、特定の素材の服などが非常に気になり不快に感じることがある一方で、痛みや暑さ、寒さ、空腹感などに気づきにくいこともあり、感覚の偏りが生活全般に影響を及ぼします。​

アスペルガー症候群大人女性の仕事における困難と対策

アスペルガー症候群の女性は職場でも特有の困難に直面します。マルチタスクが苦手で、複数の指示を同時にこなしたり同時並行で業務を進めたりするのが困難です。物の定位置や片付け方が分からず整理整頓が苦手であることや、計画を立てたり物事の優先順位を決めたりするのが苦手で日常生活や仕事で困ることが多いのも特徴です。

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職場でのコミュニケーション方法を工夫することが重要です。明確で具体的な指示を出すことが必要で、例えば「この書類を整理してください」ではなく「この書類を日付順に並べて、ファイルに分類してください」のような指示の出し方をするとよいでしょう。曖昧な表現や比喩を避け、指示や説明はできるだけシンプルで誰が聞いてもわかりやすい表現を心がけると伝わりやすくなります。

参考)https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=3918


視覚的な情報を利用することで理解が深まることがあるため、重要な指示や手順はメモなどの視覚的にわかるものにまとめると業務をスムーズに進めやすくなります。チェックリストには作業手順やタスクを一覧にまとめて記載することで、必要な作業を見逃すことなく順序立てて進めることができます。アスペルガー症候群の特性を生かすことができる仕事として、作業工程の全てまたはほとんどを一人で行う仕事、論理的分析と事実に関する強い記憶力を生かすことができる仕事、強い集中力を生かすことができる単純作業の繰り返しを行う仕事などが挙げられます。

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アスペルガー症候群大人女性の二次障害と生きづらさ

アスペルガー症候群の女性は、発見が遅れることで慢性的なストレスの状態がずっと続き、その結果自己肯定感が低下してしまいやすい面があり、二次障害につながります。女性では、うつ等「二次障害」から受診して診断につながる場合が男性より多く、男性だと「特性からのトラブルなどでの受診」が多い一方、女性では「うつなどの症状」から受診に至ります。

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二次障害として男性・女性問わずに多いのは、まず睡眠障害です。元々時間の感覚を持ちにくい上に、ストレスによる不眠もあり、生活リズムが崩れてしまいやすい傾向があります。他にも、うつ病統合失調症強迫性障害等の心の病気も男性・女性ともに起こりやすいと言われており、これにはストレスの影響が強く出ていると考えられています。

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女性のアスペルガー症候群の方に多い病気として第一に挙げられるのが「心身症」です。胃腸の不調や貧血、疲労感等が頻発し、何度も内科を受診される方も少なくありません。また、女性特有としては、いわゆる「摂食障害」過食や拒食の食事の問題で出る事があり、長期続いた場合に考えの偏り等「パーソナリティ障害」の状態になる事があります。不安やストレスを抱えやすく、うつ病や不安障害などの二次障害を経験したことがある人も多く、人との交流で非常に疲れやすく一人の時間がないと回復できないという特徴もあります。​
結婚や妊娠・出産、子育てといったライフイベントにおいても困難が生じやすく、変化に対応するのが難しかったり想定外の事態が起きるとパニックになりやすかったりします。家事や育児のタスクを同時にこなすことを求められると、優先順位づけが苦手な人にとって強いプレッシャーとなり、精神的に追い詰められるケースもあります。育児中の細切れの睡眠や予測不能な子どもの行動は、感覚過敏のある人や変化に弱い人にとってさらに大きな負担であり、こうした状況で適切なヘルプを得られないと産後うつなど二次障害を発症するリスクも高まります。

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アスペルガー症候群大人女性の診断プロセスと支援

アスペルガー症候群の正式な診断は、精神科医や心療内科医、あるいは発達障害を専門とする医師が行います。診断プロセスは医療機関によって異なりますが、一般的には事前の情報収集として、これまでの生育歴(乳幼児期からの発達について、保護者や保育士・教師からの情報も含む)、学歴、職歴、対人関係、趣味嗜好、日常生活での困りごとなどについて詳しく問診票に記入します。​
可能であれば、幼少期の通知表、母子手帳の記録、日記など、具体的な情報が分かるものを持参すると診断の参考になります。医師による問診では、特性がいつ頃から現れているか、日常生活や社会生活でどのような困難を感じているかなど、具体的なエピソードを話せるように準備しておくとスムーズです。カモフラージュの傾向が強い女性の場合、表面上の適応力に惑わされず、内面の困難さを見抜ける経験豊富な医師を選ぶことが重要です。​
心理検査として、アスペルガー症候群の診断に特化した検査(例:ADOS-2、ADI-Rなど)や、知能検査(例:WAIS-IVなど)、パーソナリティ検査など、様々な心理検査が行われることがあります。これらの検査は特性の客観的な評価や、併存する他の疾患の有無を確認するために行われます。問診、情報収集、各種検査の結果などを総合的に判断し、医師がアスペルガー症候群の診断基準(DSM-5など)に基づいて診断を行います。

参考)アスペルガー症候群の診断基準は?病院の探し方、受診後の支援


診断を受ける医療機関の探し方として、インターネットで「都道府県名 ASD 成人女性 診断」「市区町村名 発達障害 精神科」などのキーワードで検索したり、お住まいの自治体の発達障害者支援センターや精神保健福祉センターに相談し診断できる医療機関を紹介してもらったりする方法があります。発達障害の診断ができる医療機関は限られており、予約が取りづらい場合も少なくないため、早めに情報収集を始めることをお勧めします。​
診断を受けたことで終わりではなく、診断結果を踏まえて今後の生活でどのように特性と向き合っていくか、どのようなサポートが利用できるかなどについて、医師や専門家と相談することが重要です。恋愛や結婚で「うまくいかない……困った……」と感じたら、まずはその困りごとの裏側にある自分の特性を自分自身で理解することが大切です。自分に特性があるように、相手にも自分とは違う特性があり、自分と相手はいくら仲が良くても違う人間である、自分では考えられないような特性をもっている場合もある、ということへの理解も重要です。

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