アレジオン点眼をコンタクトしたまま使う際の注意点
アレジオン点眼の種類とコンタクトしたまま点眼の可否
アレルギー性結膜炎の治療に広く用いられるアレジオン点眼液ですが、コンタクトレンズを装用したまま点眼できるかどうかは、製品の種類によって異なります。医療用医薬品として処方されるアレジオン点眼液には、主に「アレジオン点眼液0.05%」と、より高濃度の「アレジオンLX点眼液0.1%」の2種類が存在します 。
これらの最大の違いは、防腐剤の有無です。
- アレジオン点眼液0.05%: 防腐剤として「ベンザルコニウム塩化物」を含んでいる場合があります 。この成分はコンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズに吸着しやすい性質を持っています 。そのため、原則としてコンタクトレンズを外してから点眼し、少なくとも5~10分以上の間隔をあけてから再装用する必要があります 。
参考)アレジオン点眼液の効果・副作用を医師が解説。LX(高濃度タイ…
- アレジオンLX点眼液0.1%: こちらは防腐剤を含まない製剤です 。そのため、ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズを装用したまま点眼することが可能です 。
参考)花粉症の目薬「アレジオンLX点眼液0.1%」アレルギー性結膜…
ただし、同じ「アレジオン」という名前でも、ジェネリック医薬品であるエピナスチン塩酸塩点眼液の場合、製品によって添加物が異なるため、コンタクトレンズ装用中の使用可否は一概には言えません 。必ず医師や薬剤師に確認することが重要です。
参考)https://med.nipro.co.jp/ph_product_qa?id=a1Z2x0000009L7jEAE
また、カラーコンタクトレンズに関しては、アレジオン点眼液・LX点眼液ともに影響が検討されていないため、装用中の点眼は避けるようにとの注意喚起がされています 。
コンタクトレンズの種類と点眼薬の対応についてまとめた表です。
| コンタクトレンズの種類 | アレジオン点眼液0.05% (防腐剤あり) | アレジオンLX点眼液0.1% (防腐剤なし) |
| :— | :— | :— |
| ソフトコンタクトレンズ | 装着したままの使用は非推奨 | 装着したまま使用可能 |
| ハードコンタクトレンズ | 装着したままの使用は非推奨 | 装着したまま使用可能 |
| カラーコンタクトレンズ | 使用は避ける | 使用は避ける |
アレルギー性結膜炎の治療における薬物療法の詳細については、以下の専門サイトが参考になります。
アレルギーポータル – アレルギー性結膜炎
アレジオン点眼に含まれる防腐剤ベンザルコニウムとコンタクトレンズへの影響
多くの点眼薬には、開封後も薬液を無菌に保つ目的で防腐剤が添加されています。その代表的な成分が「ベンザルコニウム塩化物(BAK)」です 。しかし、このベンザルコニウム塩化物は、コンタクトレンズ装用者にとっていくつかのリスクをもたらすことが知られています 。
最大の問題は、ベンザルコニウム塩化物がソフトコンタクトレンズに吸着・蓄積しやすいという点です 。レンズに吸着した防腐剤は、長時間にわたって眼の表面(角膜や結膜)に接触し続けることになります。これにより、以下のような様々な悪影響を引き起こす可能性があります。
参考)https://kmh.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/okusuri_15.pdf
- 角膜・結膜上皮細胞への毒性: ベンザルコニウム塩化物は、角膜や結膜の上皮細胞に対して細胞毒性を持つことが多くの研究で示されています 。長期間の使用は、点状角膜炎や眼表面のバリア機能の低下を招く恐れがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8277985/
- ドライアイ症状の悪化: 防腐剤は涙の層を不安定にし、ドライアイの症状を悪化させることがあります 。コンタクトレンズ装用自体がドライアイのリスク因子であるため、防腐剤入りの点眼薬の使用はさらにそのリスクを高めることになります。
参考)コンタクトレンズ用の目薬にベンザルコニウムが入っていても大丈…
- レンズの変性: レンズに吸着した成分が、レンズの品質を変化させ、装用感の悪化や寿命の短縮につながる可能性があります 。
参考)装着液に入っている防腐剤!コンタクトレンズに影響あるの? -…
- アレルギー症状の増悪: 防腐剤による刺激が、元々あるアレルギー性結膜炎の症状をさらに悪化させることも考えられます。
これらのリスクから、防腐剤を含む点眼薬を使用する場合は、コンタクトレンズを外して点眼し、成分が十分に洗い流されるのを待ってから再装用することが強く推奨されています 。
参考)エピナスチン塩酸塩(アレジオンⓇ️)点眼薬はコンタクトの上か…
ベンザルコニウム塩化物の眼への影響に関する学術的な情報源として、以下の論文が有用です。この論文では、ベンザルコニウム塩化物が眼表面に及ぼす様々な問題点と、その解決策について詳細に論じられています。
Ocular benzalkonium chloride exposure: problems and solutions (論文)
アレジオン点眼をコンタクトしたまま使う際の正しい使い方と注意点
アレジオン点眼液を安全かつ効果的に使用するためには、正しい使い方を守ることが非常に重要です。特にコンタクトレンズを装用している方は、以下の点に注意してください。
基本的な点眼方法 💧
- 手を洗う: 点眼の前には、石鹸で手をきれいに洗いましょう。
- 下まぶたを引く: 片手で下まぶたを軽く引き、ポケット状にします 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10236409/
- 点眼する: 容器の先がまぶたやまつげ、眼に直接触れないように注意しながら、1滴を確実に点眼します 。容器の汚染は、感染症の原因となる可能性があります 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7942131/
- 目頭を押さえる: 点眼後は、まばたきをせず、1分ほど軽く目頭(鼻に近い部分)を押さえます。これにより、薬液が鼻や喉に流れ込むのを防ぎ、全身性の副作用のリスクを低減できます。
- あふれた液を拭き取る: 目からあふれた薬液は、清潔なティッシュなどで拭き取ってください。
コンタクトレンズ装用者の追加の注意点 👓
- レンズを外して点眼: アレジオンLX点眼液のような防腐剤フリーのものを除き、点眼薬を使用する際は、まずコンタクトレンズを外します 。
- 十分な間隔をあける: 点眼後、最低でも5~10分以上の間隔をあけてからコンタクトレンズを再装用してください 。これにより、薬液の成分がレンズに吸着するのを最小限に抑えます。
- 症状が強い時は装用を中止: 目のかゆみや充血などのアレルギー症状が強い時期は、コンタクトレンズの装用自体を中止することが推奨されます 。レンズに付着した花粉やハウスダストなどのアレルゲンが、症状をさらに悪化させる原因となるためです 。
参考)コンタクトレンズ性結膜炎(よくある目の病気 29) | 京橋…
他の点眼薬との併用
複数の点眼薬を使用する場合は、それぞれが効果を十分に発揮できるよう、少なくとも5分以上の間隔をあけてから次の薬を点眼してください 。どの順番で点眼するかは、医師または薬剤師の指示に従いましょう。
正しい点眼方法の詳細は、以下の医療機関のサイトでも確認できます。
参天製薬 医療関係者向け情報 – 服薬指導(点眼剤)
アレジオン点眼の副作用とアレルギー性結膜炎悪化のリスク
アレジオン点眼液はアレルギー性結膜炎に対して高い効果を持つ一方で、副作用の可能性もあります。また、不適切な使用は症状を悪化させるリスクも伴います。
主な副作用
添付文書によると、アレジオン点眼液の主な副作用として報告されているのは、以下のような眼の症状です 。
参考)医療用医薬品 : アレジオン (アレジオン点眼液0.05%)
- 眼刺激 (1~5%未満)
- 眼の異物感 (0.1~1%未満)
- 羞明(しゅうめい:まぶしく感じること)(0.1~1%未満)
- その他(頻度不明):眼瞼炎、眼痛、流涙、点状角膜炎、眼のかゆみ、結膜充血、眼脂など
これらの症状は一過性であることが多いですが、症状が続いたり、悪化したりするようであれば、使用を中止し、速やかに医師や薬剤師に相談してください。
アレルギー性結膜炎悪化のリスク
アレルギー性結膜炎の症状が出ているにもかかわらず、コンタクトレンズの装用を続けることは、症状を悪化させる大きな要因となります 。
参考)アレルギー性結膜炎
- アレルゲンの温床: コンタクトレンズ、特にソフトレンズの表面には、花粉やハウスダストなどのアレルゲンが付着しやすくなっています。これがまぶたの裏側の結膜を常に刺激し、アレルギー反応を増強させてしまいます。
- 機械的刺激: レンズ自体の物理的な摩擦も、結膜への刺激となり、炎症を引き起こす一因です 。
- 巨大乳頭結膜炎: コンタクトレンズの汚れが原因で、上まぶたの裏側に「乳頭」と呼ばれるブツブツが多数できる「巨大乳頭結膜炎」に進行することがあります 。ここまで重症化すると、コンタクトレンズの装用を長期間中止し、強力な点眼薬や軟膏での治療が必要になる場合もあります 。
症状が強いときは無理にコンタクトレンズを装用せず、メガネに切り替えることが、結果的に治療期間を短縮し、眼の健康を守ることにつながります。
アレルギー性結膜炎の治療全般については、以下の専門医の解説が非常に参考になります。
慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト – アレルギー性結膜炎
アレジオン点眼とドライアイの関連性:コンタクトユーザーが知るべきこと
アレルギー性結膜炎とドライアイは、しばしば合併する疾患です。コンタクトレンズユーザーにとって、アレジオン点眼の使用がドライアイに与える影響は、見過ごせない重要なポイントとなります。
なぜアレルギー性結膜炎とドライアイは合併しやすいのか?
アレルギー反応によって引き起こされる結膜の炎症は、涙の質と量に影響を与えます。
- 涙液層の不安定化: 涙は油層、水層、ムチン層の3層で構成されています。アレルギー性結膜炎では、涙の成分を分泌する細胞がダメージを受け、特にムチン層が不安定になります。これにより涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを引き起こします。
- 掻くことによる刺激: 目のかゆみで目をこすることで、角膜や結膜の表面が傷つき、涙の状態がさらに悪化するという悪循環に陥ります。
アレジオン点眼とドライアイ
アレジオン点眼液の有効成分であるエピナスチン塩酸塩自体が直接的にドライアイを引き起こすという報告は多くありません。しかし、防腐剤として含まれるベンザルコニウム塩化物は、ドライアイ症状を悪化させる可能性があることが指摘されています 。
前述の通り、ベンザルコニウム塩化物は涙液層を破壊し、角膜上皮に障害を与える可能性があります 。コンタクトレンズ装用者はもともと非装用者に比べて涙が乾きやすいため、防腐剤入りの点眼薬を長期間使用することで、ドライアイのリスクがさらに高まるのです 。
コンタクトユーザーが取るべき対策
アレルギー性結膜炎とドライアイを合併しているコンタクトレンズユーザーは、以下の点を考慮して治療法を選択することが望ましいでしょう。
- 防腐剤フリー点眼薬の選択: 可能な限り、アレジオンLX点眼液のような防腐剤を含まない点眼薬を選択することが推奨されます 。
- 人工涙液の併用: 防腐剤の入っていない人工涙液を併用し、目の乾燥を防ぎ、アレルゲンを洗い流すことも有効です 。
- コンタクトレンズの見直し: ドライアイに配慮した素材(シリコーンハイドロゲル素材など)のコンタクトレンズや、1日使い捨てタイプのレンズに変更することも一つの選択肢です。
- 定期的な眼科受診: 症状の変化を自己判断せず、定期的に眼科医の診察を受け、目の状態に合った治療法やコンタクトレンズの選択について指導を受けることが最も重要です。
薬物送達システム(DDS)としてのコンタクトレンズ開発も進んでおり、将来的にはコンタクトレンズ自体が治療薬を放出するような、より安全で効果的な治療法が登場する可能性も研究されています 。
参考)https://www.mdpi.com/2673-9879/4/2/19/pdf?version=1714373437
Ocular Drug Delivery into the Eyes Using Drug-Releasing Soft Contact Lens (論文)