ARB阻害薬の一覧と臨床応用の特徴

ARB阻害薬の一覧と各薬剤の特徴

ARB阻害薬の概要
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現在使用可能な7種類のARB

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬として日本で承認されている全製剤の特徴

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AT1受容体への選択的阻害

血管収縮とアルドステロン分泌を効果的に抑制する作用機序

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薬物動態と効果の違い

各薬剤の半減期や持続時間による使い分けの重要性

ARB阻害薬の種類と代表的商品名

現在日本で使用可能なARB阻害薬は7種類あり、それぞれが現役で処方されています。以下に主要な製剤を一覧で示します:

第一世代のARB阻害薬 📋

  • ロサルタン(ニューロタン®):世界初のARB、腎保護作用が証明されている
  • カンデサルタン(ブロプレス®):日本製のARB、慢性心不全の適応あり
  • バルサルタン(ディオバン®):広く使用されている標準的なARB

新世代のARB阻害薬 🔬

ARB阻害薬の薬理学的特徴と効果の違い

ARB阻害薬は共通してアンジオテンシンⅡのAT1受容体を選択的に阻害しますが、各薬剤には明確な薬理学的違いがあります。

薬物動態による分類 ⏱️

  • 長時間作用型:イルベサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、オルメサルタンは半減期が長く、24時間にわたる降圧効果が期待できる
  • 中間作用型:ロサルタンとバルサルタンは作用時間がやや短く、より強い降圧効果が必要な患者では1日2回投与が必要な場合がある

結合様式の違い 🔗

研究によると、ARB阻害薬の中でもオルメサルタンはエナラプリルよりも有意に優れた降圧効果を示し、ロサルタンやバルサルタンよりも効果的であることが報告されています。

特殊な多面的効果 🌟

  • ロサルタン尿酸値を低下させる独特の効果があり、高尿酸血症を併発する血圧患者に有用
  • テルミサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン:RAGE(糖化最終産物受容体)の発現を抑制し、脳卒中予防に追加的な効果を示す
  • カンデサルタン糖尿病の新規発症を予防する可能性が確認されている

ARB阻害薬の適応疾患と腎保護効果

ARB阻害薬は単なる降圧薬にとどまらず、臓器保護効果を有する重要な治療薬です。

高血圧症における適応 🩺

すべてのARB阻害薬が本態性高血圧症の適応を有していますが、特定の病態に対してより適した選択肢があります:

  • 慢性心不全:カンデサルタン(12mg以外)が慢性心不全(軽症~中等症)に適応を有する
  • 糖尿病性腎症:ロサルタンが高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症に適応

腎保護作用のメカニズム 🫘

ARB阻害薬は輸出細動脈を輸入細動脈よりも選択的に拡張させる作用があり、これにより糸球体内圧を減少させて腎保護作用を発揮します。アンジオテンシンⅡは腎臓において主として輸出細動脈を収縮させ、糸球体内圧を上昇させるとともに、メサンギウム細胞の増殖やTGF-βを介して糸球体硬化を進展させるため、ARB阻害薬による阻害は腎機能保護に重要です。

注意すべき副作用 ⚠️

腎保護作用の一方で、ARB阻害薬による輸出細動脈の拡張は糸球体内圧低下によるろ過機能の低下にもつながるため、急性腎障害を引き起こす要因にもなり得ます(トリプルワーミー)。

ARB阻害薬の分子構造と結合特性

ARB阻害薬の多くは共通する分子構造(ビフェニル-テトラゾールおよびイミダゾール基)を有しており、これがクラス効果の基盤となっています。しかし、最近の臨床研究では、すべてのARB阻害薬が同じ効果を示すわけではなく、一部の利益はクラス効果ではなく「分子効果」である可能性が示されています。

受容体結合の違い 🧬

  • カンデサルタン:ロサルタンと比較して、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおいて有意に異なる効果を示す
  • バルサルタン:慢性腎疾患を有する高血圧患者において、ロサルタンよりも腎一酸化窒素の減少をより強く回復させる

COVID-19への応用研究 🦠

最新の研究では、ARB阻害薬9種類すべてがCOVID-19メインプロテアーゼに対する阻害効果を示すことが分子ドッキング研究で明らかになっています。結合親和性の順序は、フィマサルタン>カンデサルタン>オルメサルタン>アジルサルタン>エプロサルタン>バルサルタン>ロサルタン>イルベサルタン>テルミサルタンの順となっています。

ARB阻害薬の配合剤と臨床での使い分け

ARB阻害薬は利尿薬カルシウム拮抗薬との配合剤が多数開発されており、効率的な降圧治療が可能です。

主要な配合剤の種類 💊

配合剤は治療効果の向上と服薬コンプライアンスの改善に寄与します:

使い分けの実際 🎯

利尿薬では Na排泄低下により代償的にレニン-アンジオテンシン系が亢進するため、ARB阻害薬との併用により過度の血圧低下が起こる可能性があります。しかし、この相互作用を逆に利用することで、配合剤の有効性が発揮されます。

効果判定の時期

ARB阻害薬は即効性ではなく、有効性の判定は投与開始から4~8週後に行われるのが標準的です。この特性を理解して患者指導を行うことが重要です。

妊娠中の禁忌事項 🚫

すべてのARB阻害薬は妊娠中の使用が禁忌であり、血清カリウムの上昇によるしびれ症状の発現にも注意が必要です。副腎のAT1受容体を抑制することでアルドステロンによるNa-K交換機構を抑制し、スピロノラクトンのようなカリウム保持作用を示すためです。

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の詳細情報

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6691655/

高血圧治療ガイドライン 日本高血圧学会

https://www.jpnsh.jp/