アニュイティの強さと種類、効果的な使い方と副作用の比較

アニュイティの強さ

アニュイティの強さ早わかりガイド
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2つの規格

アニュイティには100μgと200μgの2種類があり、症状の重さで使い分けます。

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1日1回の利便性

有効成分が長く効くため、1日1回の吸入で効果が持続するのが大きな強みです。

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副作用への注意

声枯れや口腔カンジダ症が代表的。吸入後のうがいが予防の鍵です。

アニュイティの強さの種類と具体的な効果

 

喘息治療において重要な役割を担う吸入ステロイド薬(ICS)の中でも、アニュイティ®は1日1回の吸入で効果が持続する利便性の高い薬剤です 。その有効成分は「フルチカゾンフランカルボン酸エステル」で、気道の炎症を強力に抑制し、喘息発作を予防する「コントローラー」として機能します 。すぐに症状が消えるわけではなく、継続的に使用することで気道の状態を安定させ、発作の起きにくい状態を維持することが目的です 。

アニュイティには、含有されるステロイド量が異なる2つの規格が存在します 👩‍⚕️。

  • アニュイティ100μgエリプタ
  • アニュイティ200μgエリプタ

これらの「100」と「200」という数字は、1吸入あたりに含まれるフルチカゾンフランカルボン酸エステルの量を示しており、この量の違いが「強さ」の違いとなります 。治療は通常、低用量から開始され、患者さんの症状や喘息のコントロール状態に応じて、医師が適切な強さを選択します。例えば、アニュイティ200μgは、以下のような2型炎症が強い喘息患者に検討されることがあります 。

  • ✅ 治療後の呼気NO検査が高値(50ppb超)
  • 末梢血好酸球数が高値(300/μL超)
  • ✅ 頻繁な増悪を繰り返す

これらの指標を参考に、より強力な炎症抑制が必要と判断された場合に、高用量である200μg製剤が選択肢となります。重要なのは、アニュイティが発作を抑えるための薬(リリーバー)ではなく、日常的な気道の炎症を管理するための薬であるという点です。したがって、患者への指導時には、毎日欠かさず吸入を続けることの重要性を伝える必要があります。

下記の参考リンクでは、アニュイティの基本的な作用と効果について、患者向けに分かりやすく解説されています。
アニュイティ100μgエリプタ30吸入用 | くすりのしおり

アニュイティの強さを他の吸入ステロイド薬と比較

アニュイティの強さを評価する際、他の吸入ステロイド薬(ICS)との比較は不可欠です。アニュイティの最大の特徴は、その利便性とデバイス(エリプタ)の使いやすさにあります 。

まず、同じエリプタ製剤のラインナップ内で比較すると、アニュイティはICS単剤であるのに対し、「レルベア®」はICSに長時間作用性β2刺激薬(LABA)を加えた配合剤です 。臨床現場では、レルベアを使用していて症状が安定した患者に対し、LABAを中止(ステップダウン)する目的でアニュイティへ変更するケースが多く見られます 。また、さらに重症度が高い場合には、ICS/LABA/LAMAの3剤配合剤である「テリルジー®」も同じエリプタ製剤で存在し、症状のレベルに応じて同じデバイスのままスムーズな治療の強化・緩和が可能です 。

次に、他のICS単剤との比較です。以下の表は、代表的なICS単剤の特徴をまとめたものです。

薬剤名 有効成分 デバイス 吸入回数 特徴
アニュイティ® フルチカゾンフランカルボン酸エステル エリプタ (DPI) 1日1回 1日1回で効果が持続。デバイスの操作が簡便 。
パルミコート® ブデソニド タービュヘイラー (DPI) 1日2回 妊婦や授乳婦への安全性が比較的高いとされる 。
フルタイド® フルチカゾンプロピオン酸エステル ディスカス/ロタディスク (DPI) 1日2回 長年の使用実績がある標準的なICS 。
オルベスコ® シクレソニド pMDI 1日1回 肺で活性化するプロドラッグで、口腔内の副作用が少ないとされる 。

アニュイティは、1日1回の吸入で済むため、アドヒアランス(服薬継続率)の向上が期待できる点が大きなメリットです 。一方で、エリプタはドライパウダー吸入器(DPI)であるため、患者さん自身にある程度の吸入する力(吸気流速)が必要とされ、吸う力が極端に弱い患者さんには不向きな場合があります 。この点は、エアゾール製剤(pMDI)であるオルベスコなどとの選択における重要な判断材料となります。

アニュイティの強さを活かす効果的な使い方と注意点

アニュイティの持つ炎症抑制効果という「強さ」を最大限に引き出すためには、正しい使い方と注意点の理解が不可欠です。特に、エリプタというデバイスの特性を患者に正確に伝えることが重要になります。

💡 効果的な吸入方法

エリプタの正しい吸入方法は「強く、深く、速く」吸い込むのが基本です。具体的な指導ポイントは以下の通りです 。

  • ① カバーを開ける:「カチッ」と音がするまで完全に開けます。この操作で1回分の薬剤が充填されます。
  • ② 息を吐き出す:吸入口に口を当てる前に、無理のない範囲でしっかりと息を吐き切ります。
  • ③ 吸入する:吸入口を唇でしっかり覆い、「強く、速く」一気に息を吸い込みます。吸入時間の目安は、胸がしっかり膨らむまで、男性なら3~4秒、女性なら2~3秒です 。
  • ④ 息を止める:吸入後、薬剤が気管支に沈着するよう、少なくとも5秒間は息を止めます。
  • うがいをする:吸入後は必ずうがいをします。これにより、後述する副作用のリスクを大幅に軽減できます 。

⚠️ 使用上の注意点

アニュイティの強さを安全に活かすための注意点は以下の通りです。

  • 毎日継続する:アニュイティは症状がある時だけ使う薬ではありません。症状がなくても毎日決まった時間に使用することで、気道の炎症を常にコントロールし、発作を予防します 。
  • 発作時には使わない:急な喘息発作が起きた際には、アニュイティではなく、速効性のある気管支拡張薬(リリーバー)を使用する必要があります 。
  • 自己判断で中断しない:症状が良くなったと感じても、自己判断で吸入を中止してはいけません。中止すると気道の炎症が再燃し、症状が悪化する可能性があります 。
  • 吸う力が弱い患者への配慮:前述の通り、エリプタはDPIのため、吸気流速が不足している患者では薬剤が十分に気道に届かない可能性があります。処方前には患者の吸入能力を評価することが望ましいです 。

これらの点を医療従事者が丁寧に説明し、患者が正しく実践することで、アニュイティの持つ効果を最大限に発揮させることができます。

アニュイティの強さがもたらす副作用とデメリット

アニュイティは強力な効果を持つ一方で、その「強さ」に由来する副作用やデメリットも存在します。これらを理解し、適切に対処することが、安全な治療継続の鍵となります。

最も代表的な副作用は、局所的なものです 。

  • 口腔カンジダ症:吸入されたステロイドの一部が口腔内や咽頭部に付着し、カンジダという真菌が増殖することで起こります。口の中に白い苔のようなものができ、痛みを伴うこともあります 。
  • 嗄声(させい):声がかすれる、声が出しにくくなるといった症状です。ステロイドが声帯に影響を与えることで生じると考えられています 。

これらの局所性副作用は、アニュイティの薬剤粒子が比較的大きく、口腔や咽頭に沈着しやすいために起こるとされています 。しかし、これらの副作用は吸入後の「うがい」を徹底することで、その多くを予防することが可能です。うがいが困難な患者には、食前に吸入し、その後の食事で洗い流すといった指導も有効です。

一方で、頻度は低いものの、全身性の副作用にも注意が必要です。高用量のステロイドを長期間使用した場合、ステロイドが全身に吸収され、以下のような影響を及ぼす可能性が指摘されています 。

また、アニュイティ(エリプタ製剤)のデメリットとして、吸入時に薬剤の味や吸った感覚がほとんどない点が挙げられます。これにより、患者が「本当に吸入できているのか」と不安に感じることがあります。適切に吸入できているかを確認するため、カウンターの数字が1つ減っていることを毎回確認するよう指導することが重要です。

これらの副作用やデメリットは、薬剤の強さと表裏一体の関係にあります。そのため、定期的なモニタリングを行い、症状が安定している場合はより低用量へのステップダウンを検討するなど、必要最小限の強さで治療を継続する視点が求められます 。

アニュイティの強さが肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)に与える影響

アニュイティを含む吸入ステロイド薬(ICS)を処方する上で、近年特に注目されているのが、肺非結核性抗酸菌症(NTM症)、特に肺MAC症を合併している喘息患者への影響です。これは、検索上位にはあまり出てこない、臨床現場で重要度を増している独自視点のトピックと言えます。

非結核性抗酸菌は、土や水回りなど環境中に広く存在する菌で、通常は病原性が低いですが、肺に基礎疾患を持つ人などに感染し、慢性的な呼吸器感染症を引き起こすことがあります 。

ICSの強力な抗炎症作用は、気管支喘息のコントロールに不可欠ですが、その一方で局所的な免疫抑制作用も持ち合わせています。この免疫抑制作用が、肺MAC症のような潜在的・活動的な感染症を増悪させるリスクがあることが指摘されています 。つまり、喘息を抑えるための「強さ」が、別の感染症に対しては裏目に出てしまう可能性があるのです。

特に、中高年の女性で、気管支拡張症などを背景に肺MAC症を合併している喘息患者は少なくありません。このような患者にICSを安易に導入・増量すると、肺MAC症の病状が進行してしまう危険性があります。そのため、呼吸器専門医は、ICSを処方する前に胸部画像(X線やCT)を確認し、NTM症の陰影がないかを慎重に評価します 。

もし喘息と肺MAC症を合併している場合、治療方針の決定は非常に複雑になります。

  1. 喘息のコントロール:ICSなしでの喘息管理は困難な場合が多い。
  2. 肺MAC症の管理:ICSが病状を悪化させるリスクがある。

このジレンマに対し、医師は患者一人ひとりの喘息の重症度、肺MAC症の活動性、全身状態などを総合的に評価し、治療のメリットとデメリットを天秤にかける必要があります。例えば、ICSの中でも肺への沈着率や粒子径が異なる薬剤を選択したり、可能な限り低用量で管理したり、抗菌薬治療と並行したりするなど、専門的な判断が求められます 。

この問題は、ICSの「強さ」が持つ二面性を象徴しています。医療従事者は、アニュイティのような強力な薬剤の恩恵を最大限に引き出しつつ、このような潜在的なリスクにも常に注意を払う必要があります。

下記の参考リンクは、喘息と肺非結核性抗酸菌症の合併について、専門医が治療方針を解説している貴重な情報源です。
アニュイティ【喘息治療薬】 – 葛西内科呼吸器内科クリニック

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