網脈膜破裂と診断と治療と予後
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網脈膜破裂の外傷と原因と病態(ブルッフ膜・網膜色素上皮)
網脈膜破裂(臨床的には外傷性の網脈絡膜破裂/脈絡膜破裂として扱われることが多い)は、鈍的外傷で眼球が前後方向に圧縮され、戻る過程の急激な変形で生じると整理すると理解しやすいです。
特に強靭な強膜の内側にあるブルッフ膜と内層脈絡膜が変形に追随できず、網膜色素上皮(RPE)とともに断裂する、という説明は臨床像(線維性瘢痕や造影所見)とも整合します。
形態は視神経乳頭の同心円に沿う三日月状になりやすいとされ、視神経の支持作用(眼球変形への抵抗点)という“力学”で考えると、裂創の走行がイメージしやすくなります。
患者説明で意外に有用なのは、「切れたのは血管だけではなく、RPE/ブルッフ膜という“バリア”を含む層構造が壊れる」点を共有しておくことです。
この理解があると、後述する“遅れて出てくる問題”(瘢痕化や新生血管)を、患者が「受傷直後に何も言われなかったのに、なぜ今?」と感じにくくなります。
また、受傷直後は網膜・脈絡膜の出血が前景に出て、破裂そのものの輪郭が埋もれて診断が難しい局面がある、という時間軸の概念が重要です。
網脈膜破裂の症状と所見(出血・瘢痕・視力低下)
症状は裂創の部位と黄斑への関与で大きく変わり、黄斑近傍を通る病変では視力低下が前面に出やすいです。
眼底では破裂に由来する線維性瘢痕が白色病変として見えることがあり、ただし受傷直後は網膜下出血などで“白く見える段階”に至らず、見落としやすい点に注意が要ります。
したがって救急・初診では「その場で確定する」より、「出血が引いた時点で再評価し、初回画像と比較する」設計が現実的です。
機能面では、中心視力だけでなく暗点や歪みなども問題になり得るため、訴えと所見が一致しないときほど追加評価の優先度が上がります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a436c912e61b324a62bb559c5ade0610cfe54949
臨床の“落とし穴”として、外傷後に痛みが軽快すると患者が自己判断で受診を中断しやすい一方、病変の本体評価や合併症監視はむしろその後に必要になる、という点が挙げられます。
医療者側は「外傷後の眼底は時間で変わる」ことを前提に、再診間隔・検査内容・中止基準を言語化して渡すのが安全です。
網脈膜破裂の検査と診断(FA・IA・OCT・鑑別)
造影では、脈絡膜破裂はFAで初期低蛍光〜後期過蛍光を示し得る一方、IAでは低蛍光が持続するとされ、両者の“見え方の違い”が病態(脈絡膜の欠損や瘢痕)理解に直結します。
特にIAは、網膜下出血で眼底検査やFAでは拾いにくい小さな病変を描出し得る、という指摘があり、初期出血が強い症例ほど検査選択の意味が出ます。
OCTは、黄斑形態(中心窩の保たれ方)と病変の位置関係を非侵襲的に追えるため、視力予後の推定や経過観察に有用とされています。
“意外なポイント”として、脈絡膜破裂の修復過程で線維増殖組織が形成され、まれにそれが硝子体腔内へ突出するような形をとることが報告されており、所見を見たときに腫瘍性病変と短絡しないための知識になります。
同報告では、OCTで突出物の位置(中心窩のわずか耳側)と中心窩形態が保たれていたことが、視力改善の理解に役立ったと述べられています。
このように「中心窩直下が保たれているか」を早期から丁寧に追うことが、患者説明と臨床判断の両面で効きます。
網脈膜破裂の治療とフォロー(経過観察・合併症・タイミング)
治療方針は“裂創そのものを縫う”というより、急性期の合併損傷(出血、低眼圧、黄斑障害など)への対応と、亜急性〜慢性期の合併症監視(特に新生血管)をどう組むかが中心になります。
受傷後の経過で線維増殖や瘢痕化が進む時間軸が示されており、形態変化は数週間単位で進むため、1回で終わらせずに観察計画を立てる必要があります。
また、造影で増殖物周囲の軽度漏出がみられる場合、色素上皮裂孔を示唆する可能性がある一方で、晩期合併症である網膜下新生血管(脈絡膜新生血管)を完全には否定できない、という臨床的緊張感が残ります。
一部報告では、硝子体腔へ突出する増殖組織を伴うような所見のケースで脈絡膜新生血管の発生率が高い可能性が示唆されており、所見の“珍しさ”がそのままフォロー強化の根拠になります。
患者指導としては、視力低下・歪視・中心暗点などの自覚症状の変化を、いつどの程度で連絡すべきか具体化し、画像再検のトリガーにするのが実務的です。semanticscholar+1
医療機関内の運用では、初診時に「数週間後に再度眼底評価(必要なら造影/OCT)」をテンプレート化しておくと、見逃しやフォロー脱落を減らせます。
網脈膜破裂の独自視点:力学(眼球変形)で説明する患者コミュニケーション
網脈膜破裂は、単に「外傷で裂けた」というより、眼球が圧縮されて戻る際の“ひずみ集中”でブルッフ膜・内層脈絡膜・RPEが破綻する、という力学モデルで説明すると、患者にも医療者間にも伝わりやすいです。
この説明は、裂創が視神経乳頭の同心円に沿う三日月状になりやすい、という形態学的特徴ともつながり、画像を見ながらのインフォームドコンセントで説得力が出ます。
さらに「初期は出血で見えにくい」「後から瘢痕がはっきりする」「続発性の脈絡膜新生血管が遅れて問題になる」という時間軸を、同じ力学モデルの“後始末(治癒反応)”として一貫して語れます。
医療従事者向けの実装ポイントとして、説明の中に次の3点を固定句として入れると、誤解とクレームの芽を減らしやすいです。
- 「受傷直後は出血で本体が見えにくいことがある」
- 「形が落ち着くまで、数週間単位で所見が変わる」
- 「遅発の合併症(新生血管)を見張る必要がある」semanticscholar+1
結果として、診断の遅れそのものをゼロにするのは難しくても、“想定内の経過として管理する”方向へ持っていける点が、この独自視点の実利です。
外傷後の脈絡膜破裂(病態・FA/IA所見・診断が出血で困難な点)。
脈絡膜破裂Choroidal rupture &#8211;…
鈍的眼外傷による脈絡膜破裂のOCTフォロー、線維増殖組織、硝子体腔への突出、脈絡膜新生血管リスク示唆(日本眼科学会誌PDF)。